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冒険者カリオ
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前日の戦闘がきつかったので、俺は寝床に辿り着くなり爆睡した。たっぷり熟睡してから、翌朝、目を覚ました。
違和感に気づいたのは、体を起こして右手で瞼をこすった時だった。フニュッという妙な感触がした。なんだと思って慌てて視線を向けた瞬間、俺はベットの上で膠着した。
「なんじゃ、こりゃ?」
自分の両手を見ているつもりだったが、そこにあったのは、悪趣味な紫色のうねうねと揺れ動く触手だった。俺の手じゃなかった。明らかに人間のそれとは違う。信じられないが、両の肘から先が完全に触手に変わっていて、その先端が、さらに指のように五つに分かれていた。
俺の意志に反応して動く。右と思えば右に動くし、左右にゆらゆらと俺の意志で動かせた。
夢かと思って、落ち着いて観察してみる。肘から先が完全に左右とも紫色の触手だった。先端が五つに分かれて、指を動かすように、開いたり、閉じたりできた。自分の身体から生えているとはいえ、その動きはウネウネと気持ち悪かった。
こ、これは、悪夢だ、きっともう一回寝れば目が覚めるはずと思い、俺が再びに横になろうとしたときだった。
ドンドンと部屋の扉が叩かれた。
「おい、起きろ、受付が始まってるぞ」
相棒の女剣士の声が、俺の二度寝を邪魔する。
「受付?」
「おい、おい、忘れたのか、昨日、苦労して仕留めた魔族の報償をもらう約束だろ?」
「あ、ああ、そうだったな・・・」
仕方なくベットから出るが、腕は触手のままだ。こんな腕でギルドの受付に行くわけにはいかないだろうと俺は戸惑った。
俺たちの所属する冒険者ギルドは、モンスター退治が大きな収入源になっていた。所属する冒険者たちもモンスター退治が得意な者が多いし、モンスターに家族や故郷をやられて、モンスターを嫌悪をしている者が必然的に多い。そんな奴らがたむろしているギルドの受付に今近づくのは絶対まずい。こんな腕を見られたら、モンスター扱いで、即、受付近くにたむろっている冒険者に殺されかねない。
俺は扉越しに返事した。
「わ、悪いけど、昨日の戦闘で、疲れたから、今日は一人で報奨を受け取りに下に行ってくれないか」
ここは冒険者たちの住処も兼ねたギルドの建物の中であり、下の一階が、モンスターの報償金が出る受付になっていた。
「ひとりで? 本気か、お前、受け取った報奨金をすぐ分けるのが好きだろ?」
「いや、昨日の戦い死ぬほどきつかったから、まだ本当に体がだるくてさ、もう少し俺はここで休んでいたいんだ」
「休む? どこか怪我したか、聖女様を呼ぶか?」
聖女、そうか聖女様を呼んでもらえば、この腕を何とかしてもらえるかも。
「あ、ああ、受付に行く前に、聖女様を呼んでくれると助かる」
冒険者のパーティーには怪我が付き物なので慈愛に満ちた治癒魔法が得意な回復役の聖職者の聖女様がよく同行する。危険な冒険に同行するのが聖女たちには修業になり、それで得を高め聖女から聖母になり、神殿での要職に付く。
冒険者の俺たちにもなじみの聖女がいた。
治癒の得意の聖職者なら、この腕を治してくれるかもしれないと期待し、外の相棒に頼んだ。
「悪いが、今すぐ呼んで来てくれ」
「そんなに悪いのか?」
「あ、ああ・・・・」
「しょうがないね、少し待ってな」
聖女は、街の神殿に寝泊まりしていて、俺たち冒険者が、依頼の内容に応じて神の奇跡である治癒魔法の使い手が必要か判断したら神殿へ出向き、同行をお願いする。そして、神殿へお布施をして付いてきてもらう。
俺たちは、それほど有名なパーティーではないので、知り合いの聖女様も、まだ新人の、多少治癒ができる程度の新米聖女だったが、いまの俺が頼れるのは彼女だけだと思った。
相棒に頼むと、ベットに戻り、毛布にくるまり、彼女が来るのを大人しく待つことにした。
「この腕、やっぱりあいつの触手だよな」
この触手に心当たりはあった。昨日、近くの村で、女性に悪さばかりする触手の魔族が現れて、そいつと戦った。元々は村の作物を荒らすオオモグラの退治に行ったのだが、そこにたまたまあの触手野郎が現れた。本来なら、俺たち程度の実力で倒せるようなモンスターではなかったが、何とか倒した。そいつの触手と色形が似ている。
そう言えば、あいつを倒した証拠として、その触手を何本か持ってきたはず。
ギルドでモンスターを倒した報奨金を受け取る際、その倒した証拠として、その体の一部を受付に持っていくことが常になっていた。しかも、本来の依頼のオオモグラとは別の獲物だ。証拠が必要だろうと、奴の触手を何本か切って革袋に詰めたはず、気になって、部屋の隅に置いていた革袋の中を確認してみる。
袋は空だった。盗られたか。
冒険者の中には、他人が倒した獲物の報奨金をかすめ取るクズもいる。だが、ここはギルドの管理する建物内で、扉の鍵もこじ開けられた様子はない。もし、この冒険者のたむろするこの建物内でそんなことをしたら、即バレるだろう。ギルドの追放又は投獄、他のギルドに連絡されて一生冒険者として食えなくなるだろう。あの触手の魔族は高額の賞金首だったから、冒険者から犯罪者になる危険を犯してまでは盗まないという保証はない。
状況から目をそらすな、冷静になれ。
俺に冒険者の心得を教えてくれた先輩の教えを思い出して、一つの推論を出す。あの触手がまだ生きていて、俺の腕を奪い、俺に寄生したと考える方が、自然じゃないのか。
だが、倒した魔族の肉体の一部が冒険者に寄生するなんて話は、聞いたことがない。もし、そんなことが起きるのなら、報奨金の受け取りのための証拠品としてモンスターの一部をとってくることは非常に危険なことだということになり、それをギルドが認めるわけがない。
これは寄生ではなく、呪詛かも。魔族などが倒された際にカウンターで発動させる呪いで、自分を倒した相手を死なばもろともと道連れにする呪詛があると聞いたことがある。
自分を倒した相手を呪って、相手の身体を触手に変える。
その呪詛の代価として、持ってきた触手が消えた。何とか納得できそうな仮説に考え付く。
とにかく、俺は部屋の中で独り、どうにか解決できる方法はないかと考え続けて日がだいぶ高くなった頃、女剣士が戻って来た。
違和感に気づいたのは、体を起こして右手で瞼をこすった時だった。フニュッという妙な感触がした。なんだと思って慌てて視線を向けた瞬間、俺はベットの上で膠着した。
「なんじゃ、こりゃ?」
自分の両手を見ているつもりだったが、そこにあったのは、悪趣味な紫色のうねうねと揺れ動く触手だった。俺の手じゃなかった。明らかに人間のそれとは違う。信じられないが、両の肘から先が完全に触手に変わっていて、その先端が、さらに指のように五つに分かれていた。
俺の意志に反応して動く。右と思えば右に動くし、左右にゆらゆらと俺の意志で動かせた。
夢かと思って、落ち着いて観察してみる。肘から先が完全に左右とも紫色の触手だった。先端が五つに分かれて、指を動かすように、開いたり、閉じたりできた。自分の身体から生えているとはいえ、その動きはウネウネと気持ち悪かった。
こ、これは、悪夢だ、きっともう一回寝れば目が覚めるはずと思い、俺が再びに横になろうとしたときだった。
ドンドンと部屋の扉が叩かれた。
「おい、起きろ、受付が始まってるぞ」
相棒の女剣士の声が、俺の二度寝を邪魔する。
「受付?」
「おい、おい、忘れたのか、昨日、苦労して仕留めた魔族の報償をもらう約束だろ?」
「あ、ああ、そうだったな・・・」
仕方なくベットから出るが、腕は触手のままだ。こんな腕でギルドの受付に行くわけにはいかないだろうと俺は戸惑った。
俺たちの所属する冒険者ギルドは、モンスター退治が大きな収入源になっていた。所属する冒険者たちもモンスター退治が得意な者が多いし、モンスターに家族や故郷をやられて、モンスターを嫌悪をしている者が必然的に多い。そんな奴らがたむろしているギルドの受付に今近づくのは絶対まずい。こんな腕を見られたら、モンスター扱いで、即、受付近くにたむろっている冒険者に殺されかねない。
俺は扉越しに返事した。
「わ、悪いけど、昨日の戦闘で、疲れたから、今日は一人で報奨を受け取りに下に行ってくれないか」
ここは冒険者たちの住処も兼ねたギルドの建物の中であり、下の一階が、モンスターの報償金が出る受付になっていた。
「ひとりで? 本気か、お前、受け取った報奨金をすぐ分けるのが好きだろ?」
「いや、昨日の戦い死ぬほどきつかったから、まだ本当に体がだるくてさ、もう少し俺はここで休んでいたいんだ」
「休む? どこか怪我したか、聖女様を呼ぶか?」
聖女、そうか聖女様を呼んでもらえば、この腕を何とかしてもらえるかも。
「あ、ああ、受付に行く前に、聖女様を呼んでくれると助かる」
冒険者のパーティーには怪我が付き物なので慈愛に満ちた治癒魔法が得意な回復役の聖職者の聖女様がよく同行する。危険な冒険に同行するのが聖女たちには修業になり、それで得を高め聖女から聖母になり、神殿での要職に付く。
冒険者の俺たちにもなじみの聖女がいた。
治癒の得意の聖職者なら、この腕を治してくれるかもしれないと期待し、外の相棒に頼んだ。
「悪いが、今すぐ呼んで来てくれ」
「そんなに悪いのか?」
「あ、ああ・・・・」
「しょうがないね、少し待ってな」
聖女は、街の神殿に寝泊まりしていて、俺たち冒険者が、依頼の内容に応じて神の奇跡である治癒魔法の使い手が必要か判断したら神殿へ出向き、同行をお願いする。そして、神殿へお布施をして付いてきてもらう。
俺たちは、それほど有名なパーティーではないので、知り合いの聖女様も、まだ新人の、多少治癒ができる程度の新米聖女だったが、いまの俺が頼れるのは彼女だけだと思った。
相棒に頼むと、ベットに戻り、毛布にくるまり、彼女が来るのを大人しく待つことにした。
「この腕、やっぱりあいつの触手だよな」
この触手に心当たりはあった。昨日、近くの村で、女性に悪さばかりする触手の魔族が現れて、そいつと戦った。元々は村の作物を荒らすオオモグラの退治に行ったのだが、そこにたまたまあの触手野郎が現れた。本来なら、俺たち程度の実力で倒せるようなモンスターではなかったが、何とか倒した。そいつの触手と色形が似ている。
そう言えば、あいつを倒した証拠として、その触手を何本か持ってきたはず。
ギルドでモンスターを倒した報奨金を受け取る際、その倒した証拠として、その体の一部を受付に持っていくことが常になっていた。しかも、本来の依頼のオオモグラとは別の獲物だ。証拠が必要だろうと、奴の触手を何本か切って革袋に詰めたはず、気になって、部屋の隅に置いていた革袋の中を確認してみる。
袋は空だった。盗られたか。
冒険者の中には、他人が倒した獲物の報奨金をかすめ取るクズもいる。だが、ここはギルドの管理する建物内で、扉の鍵もこじ開けられた様子はない。もし、この冒険者のたむろするこの建物内でそんなことをしたら、即バレるだろう。ギルドの追放又は投獄、他のギルドに連絡されて一生冒険者として食えなくなるだろう。あの触手の魔族は高額の賞金首だったから、冒険者から犯罪者になる危険を犯してまでは盗まないという保証はない。
状況から目をそらすな、冷静になれ。
俺に冒険者の心得を教えてくれた先輩の教えを思い出して、一つの推論を出す。あの触手がまだ生きていて、俺の腕を奪い、俺に寄生したと考える方が、自然じゃないのか。
だが、倒した魔族の肉体の一部が冒険者に寄生するなんて話は、聞いたことがない。もし、そんなことが起きるのなら、報奨金の受け取りのための証拠品としてモンスターの一部をとってくることは非常に危険なことだということになり、それをギルドが認めるわけがない。
これは寄生ではなく、呪詛かも。魔族などが倒された際にカウンターで発動させる呪いで、自分を倒した相手を死なばもろともと道連れにする呪詛があると聞いたことがある。
自分を倒した相手を呪って、相手の身体を触手に変える。
その呪詛の代価として、持ってきた触手が消えた。何とか納得できそうな仮説に考え付く。
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