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聖女ホーリエ
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「おい、聖女様を連れて来てやったぞ、さっさと開けろ」
ひとりで悩み考え込んでいた俺の耳に、相棒の声が響く。
つい、喜んで、バッとドアを開けてしまいそうになり、自分の腕を見て思い直す。
「あ、ああ・・・、ちょっと待て。まず、聖女様だけ、先に入ってもらえないかな?」
二人同時より、一人づつ入ってもらってこの腕を見せて、状況を説明した方が落ち着いて理解してもらえるのではと考えた。
女剣士の場合、今の俺の触手を見た瞬間、問答無用で一刀両断しそうな気がする。なにしろ、あの触手野郎に彼女はなぶられエロいことをされた。しかも、触手に彼女が捕まっているその隙を利用して俺は奴を倒した。そのため彼女が穴と言う穴をなぶられているのを俺は助けずに倒すチャンスと思い行動した。今の俺の触手を見て、その屈辱を思いだして、感情的に抜刀する可能性は十分にあった。
俺の相棒は割と美人で、剣よりドレスが似合いそうだったが、その性格は剣を持つのにふさわしく負けず嫌いの男勝りで血の気が多い。あの触手に散々もてあそばれたことが忘れられず、その怒りのままに俺をぶった斬らないという保証はなかった。
そういう強気なところがあったから、あの野郎になぶられても、心が折れずにいるのかもしれないが、今の俺の腕を見てそれが悪い方に働いて感情が爆発しないと断言できる要素は皆無である。
とにかく、ここは慎重に先に聖女様に俺の腕を診てもらい、次に女剣士という順番が妥当と判断したのだが、女剣士は俺の意図を別に考えたようだ。
「おい、貴様、聖女様を部屋に連れ込んで何をする気だ!」
「バカ、違う、妙な勘違いするな」
「いいからさっさと開けて、昨日の獲物を寄こせ。私がすぐに金に換えて来てやる」
相棒は、まだ俺の部屋に、あの革袋に詰めた奴の触手が残っていると思っているようだが、まさか、なくなっていて、代わりに俺の腕が触手になっているなんて、想像もつかないだろう。
何も知らない女剣士がガチャガチャとドアを開けろと急かす。
「ま、待て、落ち着け、いいか、実は、あいつの触手はなくなったんだ」
「なくなった? お、お前、あれが、どれだけの賞金首か・・・」
「分かってる。なくなったことと、色々説明したいことがあるんだが、とにかく、開けるから、落ち着けよ?」
こうなったら、仕方ない。下手に隠さずに開けるしかないと覚悟を決めた
「落ち着け? 何を隠してる・・・」
「だから、まず落ち着けって、とにかく騒ぐな、他の誰かに見られるのは、ちょっとまずい」
「まずい、だと!」
「俺の腕が触手になったからだよ」
もう面倒臭くなってバッとドアを開け、扉のそばにいた女剣士を触手で部屋に引っ張り込む。
「お、おい、なんだ、急に開けるなよ、危ないだろ!? て、なんだ、その手は・・・」
「だから、触手になったって言っただろ」
部屋の中に引っ張った俺の触手を見て、女剣士が唖然としてる。
「おい、これ、マジか・・・」
「だから、すぐ、開けられなかったんだ」
女剣士の後ろにいた聖女が、俺の姿を見て、状況を察したのか部屋の中に入ってきてそっとドアを静かに閉めた。
「どうされたんですか、その腕?」
ドアを閉めてから聖女様が冷静に尋ねる。
「朝、起きたら、こうなってたんだ。俺にも訳が分からないんだ」
「貴様、魔族が化けているんじゃないだろうな」
疑うように女剣士が腰の剣を抜き、俺の喉元に切っ先を突きつけた。
「化けてない、本物だ、俺は本物」
他人から見れば、触手に寄生されたと考えるよりも、魔族が中途半端に人間に化けていると考える方が、自然のようだ。思った通り、俺の相棒は、冷静さを欠いているようだ。聖女様がいなければ、歯止めが効かず俺はぶった切られていたかもしれない。
自分に向けられた切っ先を触手でちょいとつまんで喉元からずらす。
「多分、昨日倒した、あの野郎の呪詛だと思う」
「呪詛?」
「そうだ、倒されるときに、あいつが俺を呪ったんだと思う。お前も触手仲間になれと」
「は? 私は何ともないぞ」
女剣士が自分の腕を見る。
「あいつに止めを刺したのは俺だし、倒したあいつの触手、俺が持ってただろ、それが消えて、俺の腕がこうなってたんだ」
「うわ、動かすな、キモイ!」
俺が、よく見えるように女剣士に腕を向けると、本気で彼女は気味悪がった。
「だから、あいつの死に際の呪いで、こうなったと思うんだ、ちょっと聖女様,診てくれよ」
「み、診るのですか?」
今度は聖女様に腕を向けると、触手を向けられた彼女もさすがに顔をしかめていた。その嫌そうな顔を見た瞬間、俺の奥底で、この触手で目の前の聖女様を捕まえたら、どんなもだえ方をするのか、ふと興味がわいてしまった。男勝りの女剣士が、触手に一方的になぶられていた時の姿を思い出して、それを聖女様に置き換えて、つい俺はよからぬ妄想をしてしまう。
「大丈夫ですか?」
ふと俺が心の中で良からぬ妄想をしてしまったことを察したかのように聖女が問う。
「い、いや、あの、で、聖女様の治癒魔法で、これなんとか、なりませんか?」
「治癒魔法で、ですか、確かに聖なる力を浴びせたらもとに戻るかもしれませんね。試してみましょう」
聖女はうねる触手を前に気持ち悪そうにしながら、俺を見つめた。
腕が触手になった人間に聖なる魔法をかけるのは初めてなのだろう。俺だって、触手になった腕に聖なる魔法をかけられた人間の話など聞いたことない。
上手くいくか分からないが、聖女様は神に祈り始めた。
「母なる大地よ、この者に癒しの奇跡を、その慈愛を・・・」
ぽわっと俺の触手が光って温かくなって来たような気がした、が、次の瞬間に来たのは癒しではなく激痛だった。
「うおっ、い、いてぇぇぇぇ・・・・・・」
思わず、膝を折り、床の上で、丸くなる。触手たちが、うねうねと激しく悶えた。そして、痛みに耐えきれないという感じで触手が爆発した。痛みに耐えるように俺の触手が一気に伸びて、聖女や女剣士にいやらしく絡みついた。
「きゃっ」
「な、おい・・・」
触手の攻撃がどんなものか知っている女剣士でさえ、躱せず、触手に縛り上げられるように捕まっていた。
それは彼女たちの乳房を持ち上げるように絞めつけ、太ももにまとわりつき過敏な彼女たちの股間に食い込んでいた。
「いや、は、離して」
「お、おい、な、何とかしろ」
聖女が悶え、女剣士が、俺に何とかしろという感じで睨んでいた。
「な、なんとかって、いっても・・・こ、これは・・・」
人間、急に叩かれたらビクッとする。あれと同じ反応だろう。聖なる癒しの力に苦痛を感じて触手が反射的に伸びて彼女たちをつい掴んでしまったようだ。
痛みに耐えきれずに反射的に伸びた触手なので、どうやって伸びた触手をもどせばいいのかよく分からない。それに、せっかくつかんだ二人を離さず、もっと触手で締め付けてみたいという欲求が込み上げて来ていた。あの野郎の怨念か、触手を持つとそういう気分に感化させられるのか、悶える二人の姿をもっと見ていたいという欲望にかられていた。
「ちょ、いい加減に、しな」
女剣士が、俺を鋭くにらむ。このまま触手で拘束を続けたら後が怖そうだ。俺は、痛みで突発的に伸びてしまった触手を落ち着かせるように伸ばした触手に意識を集中して触手を元に戻そうとした。
触手を戻そうと意識を触手に向ければ向けるほど触手を通して、彼女たちの胸や太ももなどの感触が伝わってきて、男として興奮してきてしまう。
が、落ち着け、落ち着け、伸ばした触手を早く引っ込めるんだと俺は必死に冷静になろうと努めた。男として本能のままに触手でふたりを犯してみたいという性欲と葛藤し、気を静め、触手を操ってみる。
触手の拘束が緩みぬるりとそれが身体から離れると、聖女は、頬を染めつつ乱れた服を整え、女剣士は触手に捕まれても手放さなかった剣を、首を撥ねようとするかのごとく俺の首筋に当てた。
「お、おい、落ち着け、いまのは不可抗力だ」
「不可抗力だと? お前、ニヤニヤしてなかったか? 人の身体触りまくって気持ち良かったんだろ、この、むっつり童貞野郎」
身体を這いまわっていた触手の感触を思い出すのか、彼女の怒りは相当なものだった。
「いや、この触手、そんなに過敏じゃなくて、そんな感触なんて、分からなかったよ、ほら、あいつだって、触手何本も切られても俺たちに襲ってきただろ、この触手って、意外に鈍いみたいだぜ」
もちろん嘘で、その胸の弾力や肌のぬくもりも伝わっていたが、正直に話したら、それこそ、俺の首が飛ぶだろうと虚言を並べた。俺は話を逸らすように聖女様に聞いた。
「あの、すごい痛みがしたんですけど、これ、どういうことでしょうか」
聖女の癒しの詠唱で苦痛にのたうつモンスターは、蠢く死体や死霊ぐらいのはずである。
触手系モンスターに効くなんて聞いたことがない。
「ええと、待ってください」
まだ新米であるゆえ、聖女様にも分からない現象のようで、考え込む。
「聖なる力で痛みを感じるというは、呪詛の類だからこそかもしれません。呪詛だからこそ、聖なる力に反発して痛みが走る。これ以上やれば触手を浄化できるかもしれませんが、あなたの魂まで浄化するかもしれません」
「魂の浄化って,それ、召天ですか。つまり、聖なる力でこれを治そうとすると俺は死ぬかもということですか?」
「はい、恐らく。それほど密接にあなたの魂に食い込んでいる呪いかと」
「では、神の奇跡で治そうとすると、俺は浄化されてあの世行きと」
「だと思います。ですが、魂は浄化され、きっと来世ではけがれなき魂で生まれ変われるかと」
聖女様は、冗談ではなく真顔で俺にそう応えた。
来世とは、冗談じゃない。
「あの、なにか、安全に楽に呪詛を解除できるような神器に心当たりは?」
この世には、死者さえ生き返らせるというアイテムが存在していると聞いたことがある。この腕を元に戻すようなものがあってもおかしくないと思って尋ねたが、聖女様は残念そうに首を横に振った。
「このような腕を元に戻せる神器など私は聞いたことありません」
「なら、いっそのこと斬っちまって、それから治癒魔法をかけてみたらどうだ?」
女剣士の提案に聖女が呆れる。
「それをやったら、腕が切れたままの治癒ということになるので、確実に両腕はなくなりますよ」
「神の奇跡で腕の復元は」
「そこまで高度な治癒魔法は私には無理です。伝説級の大聖母様でも数少ないかと」
俺は相棒の提案にため息を吐いた。
「おいおい、俺も触手とはおさらばしたいが、生涯両腕なしと言うのは、勘弁してくれよ」
「だが、その腕を見ていると、むかつくんだよ」
女剣士が、忌々しそうに俺の触手を見る。
「あ、ああ・・・、お前、あいつに手ひどくやらたからな」
無数の触手になぶられる彼女の姿を思い出し、ついにやにやしてしまった。あれは、本当にエロかった。
すると女剣士は剣の代わりに、俺の頭をがっしりと腕でロックした。剣士は武器である剣が折れた際の対応手段として格闘術も身に付けつけていた。こめかみを絞めつけるようにがっちり腕でロックして俺の頭を絞めつけてきた。密着して胸が当たった。彼女は胸当てをつけていたがそれは身体の動きの邪魔をしない軟らかい皮鎧だったので、彼女の胸の弾力は伝わってくるし、すでに触手を通して散々触っていたが、その感触のよさを感じる余裕がないほど彼女はギリギリと頭を絞めつけてきた
「いた、いたぃ・・・、死ぬ」
「今、昨日のこと思い出して、ニヤニヤしてただろ、このむっつりスケベ野郎。あのことは忘れろ。もう思い出すな」
「あの、昨日、何があったのか詳しく教えてください」
「ん?」
聖女様の当然の疑問に女剣士が首を傾げる。
「いえ、詳しいお話を聞かせていただければ、そこから、この呪いを解く方法がわかるかも」
女剣士は忌々しい記憶を思い出したくなくて渋ったが、聖女様の言葉には一理あると俺は思った。
「そ、そうだ、聖女様に、昨日のことを聞いてもらえば、何か解決策が見つかるかも」
誰かに事情を説明することで、要点が整理されるということはよくあることだ。
俺たちは聖女に語り始めた。
近くの村で畑を荒らすオオモグラ退治の依頼があった。オオモグラは、人間の大人ほどの大きさがあり、ただの農民では駆除できないので、依頼が来て、俺たちは出かけた。ただのでかいモグラなので、俺たち二人だけで出かけた。
巣穴を見つけたら、入り口で焚火して、煙を巣穴に送り、いぶり出して退治だった。空を飛ぶわけでも、火を吐くわけでもなく、堅い鱗に覆われているわけでもなく、毒もなく、ただその大きさにビビらなければ、楽勝のモンスターだった。意外に早く巣穴を見つけられ、俺たちは、数日で、依頼を達成し、依頼主の村長に感謝されて、その日は、その村に泊まり、俺たちのための宴が開かれることになった。そして、陽が沈み、宴が盛り上がり始めた頃、村人の一人が慌てて村長の屋敷に駆け込んできた。
「触手のバケモノが出た、冒険者さん、助けてくれ!」と。
オオモグラを退治できたから、そいつも退治できると期待したようだが、正直、俺たちは一瞬迷った。オオモグラは所詮、大きいだけのモグラ、触手野郎は、こちらの神の理を無視したような生き物であり、本来なら、多数の冒険者が装備を整えて討伐する対象だった。この村を見捨てて逃げ出しても、ギルドの冒険者仲間は誰も非難しなかっただろう。俺たち二人だけで相手しようというのは無謀の極みだった。
だが、宴を開いてもらい、感謝されて、調子に乗っていたと思う。俺たちは村長の屋敷を飛び出し、その村人に案内されて奴の元に向かった、その先では、その村人の妻と娘が触手に捕まり、もてあそばれていた。触手の魔物の特徴として、人間を食らうために襲ったりはしない。メスの少ないゴブリンは人間の女性を繁殖の道具にするため襲ったりするが、繁殖のためではない。ただ、おもちゃとして、人間の女性を捕まえて凌辱するのである。
知性のない言語を解さないバケモノは魔物とされ、知性があり言語を解する化け物は魔族と分類される。その知性ある魔族から見ると、武器がなければ魔物一匹倒せない下等な人間は魔族のおもちゃとして存在しているという差別的な考え方があった。また、人間に屈辱を味合わせることは魔族の神たちへの最高の貢物とされていた。だから、触手の魔族は、その触手で女性を襲っていたぶることで、邪神への信仰心を示していた。もちろん、それは、魔族側の信仰心の話であり、人間側にとっては迷惑でしかない。
それは、巨大な毛玉のバケモノだった。ただ、その一本一本が意志を持って可愛げなくうごめき、捕まえた親子をつるし上げ、その体に触手を這わせて、ゆっくりとなぶっていた。
村人の妻は触手で四肢の自由を奪われ、空中で大の字にその足を大きく広げさせられ、その股間に触手の太くて長いものを突っ込まれていた。恥部に入り込んだ触手がうねるたびにビクビクと震えていた、同じく捕まっている娘も逃げられず、「お母さん・・・」とただ母親が触手に乱暴されるのを見ているしかできなかった。たぶん、次は自分だと触手に絡まれつつ絶望しているのだろう。
俺は、その光景を思わず凝視してしまった。村人の奥さんは子どもを産んでいる割に若く、奇麗な人だった。
無数の触手にからめとられ、ビクビクと震え続けている。
「すげぇ」
「なに、ぼけっと見てるの、バカ。助けるわよ」
女剣士が、俺をどついてしかる。
そして、彼女は無謀にも正面から突っ込んでいった。
「で、かっこよく向かっていったのはいいけどさ、こいつ、逆に触手に捕まって、さ。で、…い、いて、いてぇぇ」
これから、盛り上がるところを詳しく説明しようとしたら、女剣士は再び俺の頭蓋骨を砕くような勢いで、こめかみを絞めてきた。「いて、いてぇよ、おい、いてぇって、言ってるだろ・・・」
「ふん、うるさい、お前の頭を砕いて、その記憶を消してやる」
「あの触手野郎に口やケツに突っ込まれて、顔赤らめて気持ちよさそうに喘いでいたろ、お前!」
かっこよく突っ込んでいったが、親子を助けるどころか、逆に無数の触手につかまり、彼女が派手に暴れたので、触手野郎の注意がそれ、その隙にこっそりと反対側から近づき、蠢く触手の中心を俺は剣で刺して奴を倒した。奴の注意が相棒に完全に向くまで、俺は卑怯にもその間凌辱される彼女を助けようとはしなかった。そして、その村には泊まらず、討伐の証拠の触手を持って、昨夜、急ぎ、ギルドに戻って自分の部屋で爆睡したら、腕が触手になったというわけである。と聖女様に説明した。
「本当に、あの時のお前、すごく気持ちよさそうな声出してたよな」
「だ、誰が気持ちよさそうに、だと、き、貴様、本当に二度と思い出せないようにその頭砕いてやる」
バッと再び女剣士が俺の頭を強くロックする。
「いぎ、いていて・・・」
苦しむ俺を見て聖女様が声を掛ける。
「あ、あの、分かりました、詳しい状況は分かりました。よほど恥ずかし目に会われたんですね、私も、これ以上は聞きません」
聖女がそう言うと、ようやく女剣士は俺への頭のロックをはずした。
こめかみがジンジンする。
「たく、俺の頭蓋骨を本気で砕くつもりか」
締められている間、何度か、両腕の触手で反撃してやろうかと思ったが、さすがにそれは我慢して頭の痛みに耐えた。
「ああ、本気で砕きたいね。あんたがこの話をうっかり他人に漏らさないように今すぐあんたを始末したいよ」
女剣士は俺に本気の殺意を向けていた。
「ちぇ、酒の肴には、最高のネタなのに」
冒険者は仲間同士で酒を飲むのが好きで、その際、自分の経験した面白い冒険の話をするのがお約束である。その際に、あの触手野郎に捕まった女剣士の話は絶対に受けると思っていた。
「あ、そうだ、聖女様、神の名のもとに絶対に約束を守らせる誓約の呪文ってあるんだよね」
女剣士が思い出したように聖女に尋ねる。
「え、ええ、ありますけど」
「それで、こいつにこの話を誰にも漏らさないと誓約させられる?」
「はい、できますけど」
「なら、こいつにその誓約を結ばせちゃって」
「お、おい、ちょっと待て、触手野郎の討伐の詳細をギルドの受付で説明しなくちゃ、報奨金がもらえないだろ。そんな誓約させられたら」
討伐証拠の触手は消えてしまったので、その代わりにギルドの受付で詳しく話をする必要があるだろう。
「討伐の証拠なら、あんたの腕にあるでしょ、それを見せてギルドが報奨金を払わないとか言い出したらごねればいい。ま、そういう交渉は私がするから、あんたは何も言わず黙ってればいいわ」
そうして俺は、呪詛解除より先に、触手野郎との戦闘の詳細を誰にも漏らさないという神聖な誓約書にサインさせられた。聖女による神の名の下に行われ誓約は、神聖なものであり、それを破れば、天罰が下るという。
ひとりで悩み考え込んでいた俺の耳に、相棒の声が響く。
つい、喜んで、バッとドアを開けてしまいそうになり、自分の腕を見て思い直す。
「あ、ああ・・・、ちょっと待て。まず、聖女様だけ、先に入ってもらえないかな?」
二人同時より、一人づつ入ってもらってこの腕を見せて、状況を説明した方が落ち着いて理解してもらえるのではと考えた。
女剣士の場合、今の俺の触手を見た瞬間、問答無用で一刀両断しそうな気がする。なにしろ、あの触手野郎に彼女はなぶられエロいことをされた。しかも、触手に彼女が捕まっているその隙を利用して俺は奴を倒した。そのため彼女が穴と言う穴をなぶられているのを俺は助けずに倒すチャンスと思い行動した。今の俺の触手を見て、その屈辱を思いだして、感情的に抜刀する可能性は十分にあった。
俺の相棒は割と美人で、剣よりドレスが似合いそうだったが、その性格は剣を持つのにふさわしく負けず嫌いの男勝りで血の気が多い。あの触手に散々もてあそばれたことが忘れられず、その怒りのままに俺をぶった斬らないという保証はなかった。
そういう強気なところがあったから、あの野郎になぶられても、心が折れずにいるのかもしれないが、今の俺の腕を見てそれが悪い方に働いて感情が爆発しないと断言できる要素は皆無である。
とにかく、ここは慎重に先に聖女様に俺の腕を診てもらい、次に女剣士という順番が妥当と判断したのだが、女剣士は俺の意図を別に考えたようだ。
「おい、貴様、聖女様を部屋に連れ込んで何をする気だ!」
「バカ、違う、妙な勘違いするな」
「いいからさっさと開けて、昨日の獲物を寄こせ。私がすぐに金に換えて来てやる」
相棒は、まだ俺の部屋に、あの革袋に詰めた奴の触手が残っていると思っているようだが、まさか、なくなっていて、代わりに俺の腕が触手になっているなんて、想像もつかないだろう。
何も知らない女剣士がガチャガチャとドアを開けろと急かす。
「ま、待て、落ち着け、いいか、実は、あいつの触手はなくなったんだ」
「なくなった? お、お前、あれが、どれだけの賞金首か・・・」
「分かってる。なくなったことと、色々説明したいことがあるんだが、とにかく、開けるから、落ち着けよ?」
こうなったら、仕方ない。下手に隠さずに開けるしかないと覚悟を決めた
「落ち着け? 何を隠してる・・・」
「だから、まず落ち着けって、とにかく騒ぐな、他の誰かに見られるのは、ちょっとまずい」
「まずい、だと!」
「俺の腕が触手になったからだよ」
もう面倒臭くなってバッとドアを開け、扉のそばにいた女剣士を触手で部屋に引っ張り込む。
「お、おい、なんだ、急に開けるなよ、危ないだろ!? て、なんだ、その手は・・・」
「だから、触手になったって言っただろ」
部屋の中に引っ張った俺の触手を見て、女剣士が唖然としてる。
「おい、これ、マジか・・・」
「だから、すぐ、開けられなかったんだ」
女剣士の後ろにいた聖女が、俺の姿を見て、状況を察したのか部屋の中に入ってきてそっとドアを静かに閉めた。
「どうされたんですか、その腕?」
ドアを閉めてから聖女様が冷静に尋ねる。
「朝、起きたら、こうなってたんだ。俺にも訳が分からないんだ」
「貴様、魔族が化けているんじゃないだろうな」
疑うように女剣士が腰の剣を抜き、俺の喉元に切っ先を突きつけた。
「化けてない、本物だ、俺は本物」
他人から見れば、触手に寄生されたと考えるよりも、魔族が中途半端に人間に化けていると考える方が、自然のようだ。思った通り、俺の相棒は、冷静さを欠いているようだ。聖女様がいなければ、歯止めが効かず俺はぶった切られていたかもしれない。
自分に向けられた切っ先を触手でちょいとつまんで喉元からずらす。
「多分、昨日倒した、あの野郎の呪詛だと思う」
「呪詛?」
「そうだ、倒されるときに、あいつが俺を呪ったんだと思う。お前も触手仲間になれと」
「は? 私は何ともないぞ」
女剣士が自分の腕を見る。
「あいつに止めを刺したのは俺だし、倒したあいつの触手、俺が持ってただろ、それが消えて、俺の腕がこうなってたんだ」
「うわ、動かすな、キモイ!」
俺が、よく見えるように女剣士に腕を向けると、本気で彼女は気味悪がった。
「だから、あいつの死に際の呪いで、こうなったと思うんだ、ちょっと聖女様,診てくれよ」
「み、診るのですか?」
今度は聖女様に腕を向けると、触手を向けられた彼女もさすがに顔をしかめていた。その嫌そうな顔を見た瞬間、俺の奥底で、この触手で目の前の聖女様を捕まえたら、どんなもだえ方をするのか、ふと興味がわいてしまった。男勝りの女剣士が、触手に一方的になぶられていた時の姿を思い出して、それを聖女様に置き換えて、つい俺はよからぬ妄想をしてしまう。
「大丈夫ですか?」
ふと俺が心の中で良からぬ妄想をしてしまったことを察したかのように聖女が問う。
「い、いや、あの、で、聖女様の治癒魔法で、これなんとか、なりませんか?」
「治癒魔法で、ですか、確かに聖なる力を浴びせたらもとに戻るかもしれませんね。試してみましょう」
聖女はうねる触手を前に気持ち悪そうにしながら、俺を見つめた。
腕が触手になった人間に聖なる魔法をかけるのは初めてなのだろう。俺だって、触手になった腕に聖なる魔法をかけられた人間の話など聞いたことない。
上手くいくか分からないが、聖女様は神に祈り始めた。
「母なる大地よ、この者に癒しの奇跡を、その慈愛を・・・」
ぽわっと俺の触手が光って温かくなって来たような気がした、が、次の瞬間に来たのは癒しではなく激痛だった。
「うおっ、い、いてぇぇぇぇ・・・・・・」
思わず、膝を折り、床の上で、丸くなる。触手たちが、うねうねと激しく悶えた。そして、痛みに耐えきれないという感じで触手が爆発した。痛みに耐えるように俺の触手が一気に伸びて、聖女や女剣士にいやらしく絡みついた。
「きゃっ」
「な、おい・・・」
触手の攻撃がどんなものか知っている女剣士でさえ、躱せず、触手に縛り上げられるように捕まっていた。
それは彼女たちの乳房を持ち上げるように絞めつけ、太ももにまとわりつき過敏な彼女たちの股間に食い込んでいた。
「いや、は、離して」
「お、おい、な、何とかしろ」
聖女が悶え、女剣士が、俺に何とかしろという感じで睨んでいた。
「な、なんとかって、いっても・・・こ、これは・・・」
人間、急に叩かれたらビクッとする。あれと同じ反応だろう。聖なる癒しの力に苦痛を感じて触手が反射的に伸びて彼女たちをつい掴んでしまったようだ。
痛みに耐えきれずに反射的に伸びた触手なので、どうやって伸びた触手をもどせばいいのかよく分からない。それに、せっかくつかんだ二人を離さず、もっと触手で締め付けてみたいという欲求が込み上げて来ていた。あの野郎の怨念か、触手を持つとそういう気分に感化させられるのか、悶える二人の姿をもっと見ていたいという欲望にかられていた。
「ちょ、いい加減に、しな」
女剣士が、俺を鋭くにらむ。このまま触手で拘束を続けたら後が怖そうだ。俺は、痛みで突発的に伸びてしまった触手を落ち着かせるように伸ばした触手に意識を集中して触手を元に戻そうとした。
触手を戻そうと意識を触手に向ければ向けるほど触手を通して、彼女たちの胸や太ももなどの感触が伝わってきて、男として興奮してきてしまう。
が、落ち着け、落ち着け、伸ばした触手を早く引っ込めるんだと俺は必死に冷静になろうと努めた。男として本能のままに触手でふたりを犯してみたいという性欲と葛藤し、気を静め、触手を操ってみる。
触手の拘束が緩みぬるりとそれが身体から離れると、聖女は、頬を染めつつ乱れた服を整え、女剣士は触手に捕まれても手放さなかった剣を、首を撥ねようとするかのごとく俺の首筋に当てた。
「お、おい、落ち着け、いまのは不可抗力だ」
「不可抗力だと? お前、ニヤニヤしてなかったか? 人の身体触りまくって気持ち良かったんだろ、この、むっつり童貞野郎」
身体を這いまわっていた触手の感触を思い出すのか、彼女の怒りは相当なものだった。
「いや、この触手、そんなに過敏じゃなくて、そんな感触なんて、分からなかったよ、ほら、あいつだって、触手何本も切られても俺たちに襲ってきただろ、この触手って、意外に鈍いみたいだぜ」
もちろん嘘で、その胸の弾力や肌のぬくもりも伝わっていたが、正直に話したら、それこそ、俺の首が飛ぶだろうと虚言を並べた。俺は話を逸らすように聖女様に聞いた。
「あの、すごい痛みがしたんですけど、これ、どういうことでしょうか」
聖女の癒しの詠唱で苦痛にのたうつモンスターは、蠢く死体や死霊ぐらいのはずである。
触手系モンスターに効くなんて聞いたことがない。
「ええと、待ってください」
まだ新米であるゆえ、聖女様にも分からない現象のようで、考え込む。
「聖なる力で痛みを感じるというは、呪詛の類だからこそかもしれません。呪詛だからこそ、聖なる力に反発して痛みが走る。これ以上やれば触手を浄化できるかもしれませんが、あなたの魂まで浄化するかもしれません」
「魂の浄化って,それ、召天ですか。つまり、聖なる力でこれを治そうとすると俺は死ぬかもということですか?」
「はい、恐らく。それほど密接にあなたの魂に食い込んでいる呪いかと」
「では、神の奇跡で治そうとすると、俺は浄化されてあの世行きと」
「だと思います。ですが、魂は浄化され、きっと来世ではけがれなき魂で生まれ変われるかと」
聖女様は、冗談ではなく真顔で俺にそう応えた。
来世とは、冗談じゃない。
「あの、なにか、安全に楽に呪詛を解除できるような神器に心当たりは?」
この世には、死者さえ生き返らせるというアイテムが存在していると聞いたことがある。この腕を元に戻すようなものがあってもおかしくないと思って尋ねたが、聖女様は残念そうに首を横に振った。
「このような腕を元に戻せる神器など私は聞いたことありません」
「なら、いっそのこと斬っちまって、それから治癒魔法をかけてみたらどうだ?」
女剣士の提案に聖女が呆れる。
「それをやったら、腕が切れたままの治癒ということになるので、確実に両腕はなくなりますよ」
「神の奇跡で腕の復元は」
「そこまで高度な治癒魔法は私には無理です。伝説級の大聖母様でも数少ないかと」
俺は相棒の提案にため息を吐いた。
「おいおい、俺も触手とはおさらばしたいが、生涯両腕なしと言うのは、勘弁してくれよ」
「だが、その腕を見ていると、むかつくんだよ」
女剣士が、忌々しそうに俺の触手を見る。
「あ、ああ・・・、お前、あいつに手ひどくやらたからな」
無数の触手になぶられる彼女の姿を思い出し、ついにやにやしてしまった。あれは、本当にエロかった。
すると女剣士は剣の代わりに、俺の頭をがっしりと腕でロックした。剣士は武器である剣が折れた際の対応手段として格闘術も身に付けつけていた。こめかみを絞めつけるようにがっちり腕でロックして俺の頭を絞めつけてきた。密着して胸が当たった。彼女は胸当てをつけていたがそれは身体の動きの邪魔をしない軟らかい皮鎧だったので、彼女の胸の弾力は伝わってくるし、すでに触手を通して散々触っていたが、その感触のよさを感じる余裕がないほど彼女はギリギリと頭を絞めつけてきた
「いた、いたぃ・・・、死ぬ」
「今、昨日のこと思い出して、ニヤニヤしてただろ、このむっつりスケベ野郎。あのことは忘れろ。もう思い出すな」
「あの、昨日、何があったのか詳しく教えてください」
「ん?」
聖女様の当然の疑問に女剣士が首を傾げる。
「いえ、詳しいお話を聞かせていただければ、そこから、この呪いを解く方法がわかるかも」
女剣士は忌々しい記憶を思い出したくなくて渋ったが、聖女様の言葉には一理あると俺は思った。
「そ、そうだ、聖女様に、昨日のことを聞いてもらえば、何か解決策が見つかるかも」
誰かに事情を説明することで、要点が整理されるということはよくあることだ。
俺たちは聖女に語り始めた。
近くの村で畑を荒らすオオモグラ退治の依頼があった。オオモグラは、人間の大人ほどの大きさがあり、ただの農民では駆除できないので、依頼が来て、俺たちは出かけた。ただのでかいモグラなので、俺たち二人だけで出かけた。
巣穴を見つけたら、入り口で焚火して、煙を巣穴に送り、いぶり出して退治だった。空を飛ぶわけでも、火を吐くわけでもなく、堅い鱗に覆われているわけでもなく、毒もなく、ただその大きさにビビらなければ、楽勝のモンスターだった。意外に早く巣穴を見つけられ、俺たちは、数日で、依頼を達成し、依頼主の村長に感謝されて、その日は、その村に泊まり、俺たちのための宴が開かれることになった。そして、陽が沈み、宴が盛り上がり始めた頃、村人の一人が慌てて村長の屋敷に駆け込んできた。
「触手のバケモノが出た、冒険者さん、助けてくれ!」と。
オオモグラを退治できたから、そいつも退治できると期待したようだが、正直、俺たちは一瞬迷った。オオモグラは所詮、大きいだけのモグラ、触手野郎は、こちらの神の理を無視したような生き物であり、本来なら、多数の冒険者が装備を整えて討伐する対象だった。この村を見捨てて逃げ出しても、ギルドの冒険者仲間は誰も非難しなかっただろう。俺たち二人だけで相手しようというのは無謀の極みだった。
だが、宴を開いてもらい、感謝されて、調子に乗っていたと思う。俺たちは村長の屋敷を飛び出し、その村人に案内されて奴の元に向かった、その先では、その村人の妻と娘が触手に捕まり、もてあそばれていた。触手の魔物の特徴として、人間を食らうために襲ったりはしない。メスの少ないゴブリンは人間の女性を繁殖の道具にするため襲ったりするが、繁殖のためではない。ただ、おもちゃとして、人間の女性を捕まえて凌辱するのである。
知性のない言語を解さないバケモノは魔物とされ、知性があり言語を解する化け物は魔族と分類される。その知性ある魔族から見ると、武器がなければ魔物一匹倒せない下等な人間は魔族のおもちゃとして存在しているという差別的な考え方があった。また、人間に屈辱を味合わせることは魔族の神たちへの最高の貢物とされていた。だから、触手の魔族は、その触手で女性を襲っていたぶることで、邪神への信仰心を示していた。もちろん、それは、魔族側の信仰心の話であり、人間側にとっては迷惑でしかない。
それは、巨大な毛玉のバケモノだった。ただ、その一本一本が意志を持って可愛げなくうごめき、捕まえた親子をつるし上げ、その体に触手を這わせて、ゆっくりとなぶっていた。
村人の妻は触手で四肢の自由を奪われ、空中で大の字にその足を大きく広げさせられ、その股間に触手の太くて長いものを突っ込まれていた。恥部に入り込んだ触手がうねるたびにビクビクと震えていた、同じく捕まっている娘も逃げられず、「お母さん・・・」とただ母親が触手に乱暴されるのを見ているしかできなかった。たぶん、次は自分だと触手に絡まれつつ絶望しているのだろう。
俺は、その光景を思わず凝視してしまった。村人の奥さんは子どもを産んでいる割に若く、奇麗な人だった。
無数の触手にからめとられ、ビクビクと震え続けている。
「すげぇ」
「なに、ぼけっと見てるの、バカ。助けるわよ」
女剣士が、俺をどついてしかる。
そして、彼女は無謀にも正面から突っ込んでいった。
「で、かっこよく向かっていったのはいいけどさ、こいつ、逆に触手に捕まって、さ。で、…い、いて、いてぇぇ」
これから、盛り上がるところを詳しく説明しようとしたら、女剣士は再び俺の頭蓋骨を砕くような勢いで、こめかみを絞めてきた。「いて、いてぇよ、おい、いてぇって、言ってるだろ・・・」
「ふん、うるさい、お前の頭を砕いて、その記憶を消してやる」
「あの触手野郎に口やケツに突っ込まれて、顔赤らめて気持ちよさそうに喘いでいたろ、お前!」
かっこよく突っ込んでいったが、親子を助けるどころか、逆に無数の触手につかまり、彼女が派手に暴れたので、触手野郎の注意がそれ、その隙にこっそりと反対側から近づき、蠢く触手の中心を俺は剣で刺して奴を倒した。奴の注意が相棒に完全に向くまで、俺は卑怯にもその間凌辱される彼女を助けようとはしなかった。そして、その村には泊まらず、討伐の証拠の触手を持って、昨夜、急ぎ、ギルドに戻って自分の部屋で爆睡したら、腕が触手になったというわけである。と聖女様に説明した。
「本当に、あの時のお前、すごく気持ちよさそうな声出してたよな」
「だ、誰が気持ちよさそうに、だと、き、貴様、本当に二度と思い出せないようにその頭砕いてやる」
バッと再び女剣士が俺の頭を強くロックする。
「いぎ、いていて・・・」
苦しむ俺を見て聖女様が声を掛ける。
「あ、あの、分かりました、詳しい状況は分かりました。よほど恥ずかし目に会われたんですね、私も、これ以上は聞きません」
聖女がそう言うと、ようやく女剣士は俺への頭のロックをはずした。
こめかみがジンジンする。
「たく、俺の頭蓋骨を本気で砕くつもりか」
締められている間、何度か、両腕の触手で反撃してやろうかと思ったが、さすがにそれは我慢して頭の痛みに耐えた。
「ああ、本気で砕きたいね。あんたがこの話をうっかり他人に漏らさないように今すぐあんたを始末したいよ」
女剣士は俺に本気の殺意を向けていた。
「ちぇ、酒の肴には、最高のネタなのに」
冒険者は仲間同士で酒を飲むのが好きで、その際、自分の経験した面白い冒険の話をするのがお約束である。その際に、あの触手野郎に捕まった女剣士の話は絶対に受けると思っていた。
「あ、そうだ、聖女様、神の名のもとに絶対に約束を守らせる誓約の呪文ってあるんだよね」
女剣士が思い出したように聖女に尋ねる。
「え、ええ、ありますけど」
「それで、こいつにこの話を誰にも漏らさないと誓約させられる?」
「はい、できますけど」
「なら、こいつにその誓約を結ばせちゃって」
「お、おい、ちょっと待て、触手野郎の討伐の詳細をギルドの受付で説明しなくちゃ、報奨金がもらえないだろ。そんな誓約させられたら」
討伐証拠の触手は消えてしまったので、その代わりにギルドの受付で詳しく話をする必要があるだろう。
「討伐の証拠なら、あんたの腕にあるでしょ、それを見せてギルドが報奨金を払わないとか言い出したらごねればいい。ま、そういう交渉は私がするから、あんたは何も言わず黙ってればいいわ」
そうして俺は、呪詛解除より先に、触手野郎との戦闘の詳細を誰にも漏らさないという神聖な誓約書にサインさせられた。聖女による神の名の下に行われ誓約は、神聖なものであり、それを破れば、天罰が下るという。
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