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ギルド長オライム
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俺たちはしばらく待たされて、受付のお姉さんに奥の部屋に案内された。
「こちらで、ギルド長がお待ちです。さ、どうぞ」
促され、聖女様も含め俺たちは中へ。
そこは豪奢な応接室だった。大きな商談や大切な密談などに使われるのだろう。誰にも聞かれないように壁や扉が厚いのが感じ取れる。また、そこにある家具や調度品が一級品だということは素人目でも分かる。
そこで待っていたのは、人間離れした美麗なエルフだった。この大陸にどれだけの冒険者ギルドが存在するか知らないが、エルフがギルド長をやっているのはうちくらいだろう。もちろん、会うのは初めてではないが、冒険者として下っ端の俺たちが親しいと言えるほど会話はしたことがない。
「済みませんが、よく見せてくれませんか。あなたの腕を」
ギルド長に言われて、俺はマントをとった。
「ほぉ、これは、これは、本当に見事に触手だ。痛みとかはないんですか?」
「いえ、全然」
ちょっと自分の意志で触手を持ち上げ、開いたり閉じたりするが、動かしても苦痛はない。
「ちょっと触ってみていいですか」
「ど、どうぞ」
ギルド長が恐る恐る俺の触手に手を伸ばす、ゆっくりと触りながら根元の肘辺りまで調べる。
「本当に生きた触手ですね」
「はい」
仮装だったら、どれだけいいか。
ギルド長の目の前で、何度も動かして見せる。
俺自身、未だに、これが、自分の身体の一部とは信じられない。だが、自分の腕のように動かせるのは事実だ。
「オオモグラ退治に出かけた村で、触手王に偶然出会ってなんとか退治して、その触手の一部を持って帰って来て朝起きたら、その持って帰ってきた触手が消えて、俺の手がこんな触手になってたんです。たぶん、倒された触手王の呪いだと思うのですが、これ、元に戻せますか、ギルド長?」
エルフは長寿であり、森の賢者でもある。人間の知らない知識を豊富に持っているはずだ。それに期待したのだが、ギルド長は、軽くため息をついた。
「こんなのは、初めて見ました。私もなにかの呪術の一種だとは思いますが、確証はありません。ましてや治し方は・・・」
「そうですか」
「聖女様は、どう思われますか」
同席している聖女様にギルド長が視線を向ける
「聖なる力で癒してみようとしましたが、失敗しました。魂にまで食い込んでいるようで、癒しではなく、逆に苦痛を与えるようで・・・」
「なるほど、聖なる力だと、癒しではなく苦痛になると」
ギルド長がうんうんとうなずく。
「触手王は、魔族でも上位種で、あまり倒された例がありません。当然、こんなことも聞いたことがありません」
「つまりギルド長も、これの治し方に全く心当たりはないと」
「はい、申し訳ありません。で、どうします?」
「これから、自分で治し方を探します。で、その、あいつを退治した報奨金は、どうなりますか? 証拠の触手が消えてしまったものですから」
「ああ、そうですね。治すための情報集めをするのに、お金がいるでしょう。いいでしょう、すぐに報奨金をお渡しできるように手配します」
ギルド長としては、治し方はわからないが、せめてお金だけでもという親心なのだろう。助かる。
「・・・すると、その触手王の残りの遺体は、まだその村に?」
「はい。村長は、村はずれに埋めるとは言ってましたけど」
「うむ、その遺体、ギルドで回収して、きちんと処分したほうがよさそうですね、何人か後で送りましょう。で、どうすれば、その腕を元に戻せるか、何か心当たりはあるのですか?」
「いえ、なにもありません。ギルド長は何か心当たりは?」
「うむ、私も倒された魔族の恨みで肉体が変えられたというのは初めて聞く話で、戻し方は。しかも、癒しの魔法を掛けてもらったら、激痛が走るんですね・・・」
「はい、そうです」
ギルドの長は深く考え込んだ。
「これは、森の大賢者様に聞きに行くしかないかも」
「森の大賢者?」
「私の祖父で、この辺りのエルフじゃ、最も長寿で知らないものはないというほどの御仁ですよ。もはや、森の仙人と呼べるかもしれません。紹介文と地図を渡すから会ってくるといい。あの爺さんに分からなければ、正直、完全にお手上げだと思うよ」
「は、はい」
「ちょっとここで待ってなさい、今紹介文と地図を用意するから」
そして、紹介文と地図を持ってギルド長が、部屋に戻って来た。
「私がついて行ければいいが、これでもいろいろ忙しい身でね。触手王の報奨金は即出すように言ってあるから、それを受け取って、私の祖父に会いに行けばいい」
「もしかして、遠いんですか」
「遠いというより、普通の人間ではきつい山道が多い。しっかり、装備を整えた方がいい」
「は、はい」
「とりあえず、今の私ができるのは、ここまでだ。あとは頑張りたまえ」
「はい・・・」
一応励ましてくれているのだが、その励ましが、逆に俺を不安にさせる。森の大賢者に無事に会えたとしても確実に腕をもとに戻せる方法が分かる保証はないようだからだ。しかし、今は行くしかあるまい。他に選択肢はない。
「ん、どこよ」
俺が受け取った地図を女剣士がひょいとと取り上げる。
「なによ、こんな山奥に行かないとだめなの?」
「あら、本当ですわね、ここから最低でも往復一ヶ月でしょうか」
聖女様も覗き込み、感想を述べる。
「お、おい、返せよ」
「ついて行くんだからいいでしょ」
「お前ら、まさか俺に付き合うつもりか?」
「当然、もしかしたら私がそんな腕になってたかもしれないし」
「乗り掛かった舟というものです、ここで困っている者を見捨てたら聖母などにはなれませんから」
女剣士と聖女が、俺に腐れ縁ですからという感じで笑っていた。
「本当に、いいのか?」
「水臭い、それとも、この私らが、あんたをそう簡単に見捨てる薄情者だと?」
そんな俺たちを見てギルド長がにっこりと笑う。
「いいねぇ、冒険者仲間ってのは。ま、冒険者ってのはパーティーを組むのが当り前だ、君たちだけでなく、他にも頼ればいい、うちのギルドはそういう助け合いができる冒険者の集まりだと思ってるから」
そうギルド長に背中を押されて、俺たちはその応接室を出た。
「こちらで、ギルド長がお待ちです。さ、どうぞ」
促され、聖女様も含め俺たちは中へ。
そこは豪奢な応接室だった。大きな商談や大切な密談などに使われるのだろう。誰にも聞かれないように壁や扉が厚いのが感じ取れる。また、そこにある家具や調度品が一級品だということは素人目でも分かる。
そこで待っていたのは、人間離れした美麗なエルフだった。この大陸にどれだけの冒険者ギルドが存在するか知らないが、エルフがギルド長をやっているのはうちくらいだろう。もちろん、会うのは初めてではないが、冒険者として下っ端の俺たちが親しいと言えるほど会話はしたことがない。
「済みませんが、よく見せてくれませんか。あなたの腕を」
ギルド長に言われて、俺はマントをとった。
「ほぉ、これは、これは、本当に見事に触手だ。痛みとかはないんですか?」
「いえ、全然」
ちょっと自分の意志で触手を持ち上げ、開いたり閉じたりするが、動かしても苦痛はない。
「ちょっと触ってみていいですか」
「ど、どうぞ」
ギルド長が恐る恐る俺の触手に手を伸ばす、ゆっくりと触りながら根元の肘辺りまで調べる。
「本当に生きた触手ですね」
「はい」
仮装だったら、どれだけいいか。
ギルド長の目の前で、何度も動かして見せる。
俺自身、未だに、これが、自分の身体の一部とは信じられない。だが、自分の腕のように動かせるのは事実だ。
「オオモグラ退治に出かけた村で、触手王に偶然出会ってなんとか退治して、その触手の一部を持って帰って来て朝起きたら、その持って帰ってきた触手が消えて、俺の手がこんな触手になってたんです。たぶん、倒された触手王の呪いだと思うのですが、これ、元に戻せますか、ギルド長?」
エルフは長寿であり、森の賢者でもある。人間の知らない知識を豊富に持っているはずだ。それに期待したのだが、ギルド長は、軽くため息をついた。
「こんなのは、初めて見ました。私もなにかの呪術の一種だとは思いますが、確証はありません。ましてや治し方は・・・」
「そうですか」
「聖女様は、どう思われますか」
同席している聖女様にギルド長が視線を向ける
「聖なる力で癒してみようとしましたが、失敗しました。魂にまで食い込んでいるようで、癒しではなく、逆に苦痛を与えるようで・・・」
「なるほど、聖なる力だと、癒しではなく苦痛になると」
ギルド長がうんうんとうなずく。
「触手王は、魔族でも上位種で、あまり倒された例がありません。当然、こんなことも聞いたことがありません」
「つまりギルド長も、これの治し方に全く心当たりはないと」
「はい、申し訳ありません。で、どうします?」
「これから、自分で治し方を探します。で、その、あいつを退治した報奨金は、どうなりますか? 証拠の触手が消えてしまったものですから」
「ああ、そうですね。治すための情報集めをするのに、お金がいるでしょう。いいでしょう、すぐに報奨金をお渡しできるように手配します」
ギルド長としては、治し方はわからないが、せめてお金だけでもという親心なのだろう。助かる。
「・・・すると、その触手王の残りの遺体は、まだその村に?」
「はい。村長は、村はずれに埋めるとは言ってましたけど」
「うむ、その遺体、ギルドで回収して、きちんと処分したほうがよさそうですね、何人か後で送りましょう。で、どうすれば、その腕を元に戻せるか、何か心当たりはあるのですか?」
「いえ、なにもありません。ギルド長は何か心当たりは?」
「うむ、私も倒された魔族の恨みで肉体が変えられたというのは初めて聞く話で、戻し方は。しかも、癒しの魔法を掛けてもらったら、激痛が走るんですね・・・」
「はい、そうです」
ギルドの長は深く考え込んだ。
「これは、森の大賢者様に聞きに行くしかないかも」
「森の大賢者?」
「私の祖父で、この辺りのエルフじゃ、最も長寿で知らないものはないというほどの御仁ですよ。もはや、森の仙人と呼べるかもしれません。紹介文と地図を渡すから会ってくるといい。あの爺さんに分からなければ、正直、完全にお手上げだと思うよ」
「は、はい」
「ちょっとここで待ってなさい、今紹介文と地図を用意するから」
そして、紹介文と地図を持ってギルド長が、部屋に戻って来た。
「私がついて行ければいいが、これでもいろいろ忙しい身でね。触手王の報奨金は即出すように言ってあるから、それを受け取って、私の祖父に会いに行けばいい」
「もしかして、遠いんですか」
「遠いというより、普通の人間ではきつい山道が多い。しっかり、装備を整えた方がいい」
「は、はい」
「とりあえず、今の私ができるのは、ここまでだ。あとは頑張りたまえ」
「はい・・・」
一応励ましてくれているのだが、その励ましが、逆に俺を不安にさせる。森の大賢者に無事に会えたとしても確実に腕をもとに戻せる方法が分かる保証はないようだからだ。しかし、今は行くしかあるまい。他に選択肢はない。
「ん、どこよ」
俺が受け取った地図を女剣士がひょいとと取り上げる。
「なによ、こんな山奥に行かないとだめなの?」
「あら、本当ですわね、ここから最低でも往復一ヶ月でしょうか」
聖女様も覗き込み、感想を述べる。
「お、おい、返せよ」
「ついて行くんだからいいでしょ」
「お前ら、まさか俺に付き合うつもりか?」
「当然、もしかしたら私がそんな腕になってたかもしれないし」
「乗り掛かった舟というものです、ここで困っている者を見捨てたら聖母などにはなれませんから」
女剣士と聖女が、俺に腐れ縁ですからという感じで笑っていた。
「本当に、いいのか?」
「水臭い、それとも、この私らが、あんたをそう簡単に見捨てる薄情者だと?」
そんな俺たちを見てギルド長がにっこりと笑う。
「いいねぇ、冒険者仲間ってのは。ま、冒険者ってのはパーティーを組むのが当り前だ、君たちだけでなく、他にも頼ればいい、うちのギルドはそういう助け合いができる冒険者の集まりだと思ってるから」
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