7 / 19
静寂の森
しおりを挟む
大賢者のいる森に向いながら、団長は、どうやって触手王を退治したか詳細を知りたがった。
実際に、何度か戦っていて、その強さを身に染みていたようだ。
俺が、暁の風の団員百人ほどを両の腕の触手で一気に吹っ飛ばしたように、触手王は千人以上の兵に囲まれても退治できなかったと。それを、こんな田舎の無名に近い冒険者に退治できるわけないと心底疑っていた。だが、確かに受け取った報奨金の額を考えると俺と女剣士ふたりだけで本来は倒せるはずのない魔族だったのは間違いない。
しかし、倒したのは事実であり、オオモグラ退治に出かけた先の村で偶然遭遇し、村の親子が捕まっている隙に後ろからばっさり斬ったと語った。
「後ろから?よく、 あんな毛玉の背後が分かったね」
「触手の動きが鈍い面があって、そっちが後ろだと思って、そっちから近づいたんだ。それと、捕まえた獲物をもてあそぶなら、よく見えるようにするだろうと思って、村の親子をもてあそんでいない反対側が目の届かない背後だと思ってね」
それは、村の親子ではなく、じっくりとなぶられる女剣士の様子を観察して得た情報だが、俺は女剣士も捕まって触手王になぶられたことだけは口にしなかった。
「なるほど、よく見ようとしてる方が前で、その反対が背後になるか。言われてみると単純だね。あいつの触手が四方八方に伸びて毛玉のようで、どっちが前か後ろか、私らは見抜けなかった。それをあんたは見抜いた」
「ま、後ろが死角だったと言っても、あいつの興味が女にしかなかったから、隙を突けたと思うぜ」
俺はちらりと相棒を見た。俺が余計なことを言わないようにしっかり監視していた。
あの時、相棒が無数の触手に絡みつかれて、普段からは想像できないほど怯え恥じらい悶えていたので触手王の注意を引いてくれたから、男の俺なんて、すっかり、存在を忘れ去られ、うまく後ろに回ることができた。
「いて、いててて・・・」
つい、あのとき触手にからめとられた女剣士の淫らな姿を頭の中に思い出してしまいこめかみに痛みが走った。
「おい、どうした?」
団長が首を傾げたが、女剣士はすぐピンと来たようだった。
「お前、余計なこと思い出して、言いそうになったな?」
「い、いてて、でも、少しはあのときのこと思い出さないと説明できないだろ」
「思い出す、なんだい?」
「いや、その、実はこいつも触手王に捕まって、その隙に・・・」
「で、その時捕まった触手に淫らなことをされた光景を思い出すと天罰が下るように私が誓約を結んだんです・・・」
聖女様が会話に割り込むように補足する。
「へぇ、旦那は、仲間が捕まったのに、助けるよりも先にその隙を利用して敵の背後に回ったんだ、やるね」
意外に頭の回転が速い獣人娘が、そのときの状況を理解してニカッと笑う。
「利用じゃなくて、一瞬の勝機も逃さなかったと言ってくれ」
「ものは言いようだね、ま、私らも、囮を使ってあいつを退治する方法は考えてたさ。あいつが、女を触手でもてあそぶのが大好きだってのは分かってたからね。だから、あんたがあいつを退治したってのは、納得したよ。仲間を囮にしたとは、本当にやるね」
団長さんも笑っていた。
「いや、結果的に囮にしただけで、わざとじゃ・・・」
女剣士の目が冷たかった。男の俺には味方がいなかった。
「あの、俺一人に相手させないで、皆さんも働いてくださいよ」
俺たちは森の中で、人間大の魔物であるオオネズミの群れに襲われていたが、撃退しているのは俺の触手だけで、女性陣は俺の後ろでのんびりとそんな雑談をしていた。
「いや、敵にすると厄介だけど、味方にすると頼もしいね、触手ってやつは」
ヒュンヒュンと波打って唸る触手の壁が、俺たちに猪突猛進で襲い掛かってくるオオネズミを次々吹っ飛ばしているのを見て、団長さんがニコニコしていた。
俺はほとんどオオネズミを見ていなかった。言葉を解せないアホな魔物は、ただ獲物めがけて突進するだけでうねる触手を躱そうとしないから楽だった。
ただ触手をうねうね動かし壁を作ると、それに勝手にオオネズミが突っ込んできて跳ね飛ばされていた。
「ん? もう終わったかな」
何十匹のオオネズミの死骸が辺りに転がり、急に静かになった。
「よし、じゃ、尻尾を取るか」
オオネズミは魔物としては弱い部類に入るが、群れで村を襲い、村人や作物を食い荒らすので退治すると報奨金の出る魔物だった。その退治した証拠となるのが、お尻の細い尻尾である。その細い尻尾の数だけ金が出るので、俺たちは死骸からしっぽを切り取った。森の大賢者様に会って帰った時に換金すればいい。冒険者ならば狩った魔物はきちんと換金というのが鉄則であり、それは団長さんもよく理解していて、慣れた手つきでしっぽを切り取っていた。
「ふぅ」
あらかた切り取った時、彼らは姿を見せた。
「動くな、バケモノ」
エルフだ。弓を構えた十数人にエルフたちが、俺たちを包囲していた。
「そっか、こいつらエルフに追われて慌てて逃げてたのか、道理でいきなり現れたと思った」
獣人娘が、いきなり襲われた理由を知り、苦笑する。
たぶん、エルフの村が近くにあり、村が襲われる前に追い払おうとしたのだろう。その追い立てた先に偶然俺たちがいたようだ。
「俺たちが、あんたらの獲物を横取りしたんで怒ってるのか」
「黙れバケモノ。我らの森に何ようだ」
バケモノと呼ばれ、俺は納得した。俺を魔族と思っているらしい。
「こんな腕してるけど、俺は、立派な人間だから」
「そ、そうです、この方は魔族の呪いでこんな姿になってしまい、この姿を元に戻すために、これから森の大賢者様に会いに行くところなんです」
聖女様と女剣士が簡単に弁明する。
「ほれ、うちのギルドの長が書いてくれた紹介状もあるぜ」
俺は、その紹介状をエルフたちに見せた。触手で持ち、一番近くのエルフへとニュルニュルっと触手を伸ばして渡す。
「ん、本物のようだ」
俺から紹介状を渡されたエルフが中身を確認する。
「うちの村に寄って行け、お前の処分は村長が決める」
「は、はい・・・」
触手でぶっ飛ばせない数ではなかったが、エルフと事を構える理由はない。それは団長らも理解していて、俺たちは黙ってエルフたちに案内されて彼らの村に向かった。
実際に、何度か戦っていて、その強さを身に染みていたようだ。
俺が、暁の風の団員百人ほどを両の腕の触手で一気に吹っ飛ばしたように、触手王は千人以上の兵に囲まれても退治できなかったと。それを、こんな田舎の無名に近い冒険者に退治できるわけないと心底疑っていた。だが、確かに受け取った報奨金の額を考えると俺と女剣士ふたりだけで本来は倒せるはずのない魔族だったのは間違いない。
しかし、倒したのは事実であり、オオモグラ退治に出かけた先の村で偶然遭遇し、村の親子が捕まっている隙に後ろからばっさり斬ったと語った。
「後ろから?よく、 あんな毛玉の背後が分かったね」
「触手の動きが鈍い面があって、そっちが後ろだと思って、そっちから近づいたんだ。それと、捕まえた獲物をもてあそぶなら、よく見えるようにするだろうと思って、村の親子をもてあそんでいない反対側が目の届かない背後だと思ってね」
それは、村の親子ではなく、じっくりとなぶられる女剣士の様子を観察して得た情報だが、俺は女剣士も捕まって触手王になぶられたことだけは口にしなかった。
「なるほど、よく見ようとしてる方が前で、その反対が背後になるか。言われてみると単純だね。あいつの触手が四方八方に伸びて毛玉のようで、どっちが前か後ろか、私らは見抜けなかった。それをあんたは見抜いた」
「ま、後ろが死角だったと言っても、あいつの興味が女にしかなかったから、隙を突けたと思うぜ」
俺はちらりと相棒を見た。俺が余計なことを言わないようにしっかり監視していた。
あの時、相棒が無数の触手に絡みつかれて、普段からは想像できないほど怯え恥じらい悶えていたので触手王の注意を引いてくれたから、男の俺なんて、すっかり、存在を忘れ去られ、うまく後ろに回ることができた。
「いて、いててて・・・」
つい、あのとき触手にからめとられた女剣士の淫らな姿を頭の中に思い出してしまいこめかみに痛みが走った。
「おい、どうした?」
団長が首を傾げたが、女剣士はすぐピンと来たようだった。
「お前、余計なこと思い出して、言いそうになったな?」
「い、いてて、でも、少しはあのときのこと思い出さないと説明できないだろ」
「思い出す、なんだい?」
「いや、その、実はこいつも触手王に捕まって、その隙に・・・」
「で、その時捕まった触手に淫らなことをされた光景を思い出すと天罰が下るように私が誓約を結んだんです・・・」
聖女様が会話に割り込むように補足する。
「へぇ、旦那は、仲間が捕まったのに、助けるよりも先にその隙を利用して敵の背後に回ったんだ、やるね」
意外に頭の回転が速い獣人娘が、そのときの状況を理解してニカッと笑う。
「利用じゃなくて、一瞬の勝機も逃さなかったと言ってくれ」
「ものは言いようだね、ま、私らも、囮を使ってあいつを退治する方法は考えてたさ。あいつが、女を触手でもてあそぶのが大好きだってのは分かってたからね。だから、あんたがあいつを退治したってのは、納得したよ。仲間を囮にしたとは、本当にやるね」
団長さんも笑っていた。
「いや、結果的に囮にしただけで、わざとじゃ・・・」
女剣士の目が冷たかった。男の俺には味方がいなかった。
「あの、俺一人に相手させないで、皆さんも働いてくださいよ」
俺たちは森の中で、人間大の魔物であるオオネズミの群れに襲われていたが、撃退しているのは俺の触手だけで、女性陣は俺の後ろでのんびりとそんな雑談をしていた。
「いや、敵にすると厄介だけど、味方にすると頼もしいね、触手ってやつは」
ヒュンヒュンと波打って唸る触手の壁が、俺たちに猪突猛進で襲い掛かってくるオオネズミを次々吹っ飛ばしているのを見て、団長さんがニコニコしていた。
俺はほとんどオオネズミを見ていなかった。言葉を解せないアホな魔物は、ただ獲物めがけて突進するだけでうねる触手を躱そうとしないから楽だった。
ただ触手をうねうね動かし壁を作ると、それに勝手にオオネズミが突っ込んできて跳ね飛ばされていた。
「ん? もう終わったかな」
何十匹のオオネズミの死骸が辺りに転がり、急に静かになった。
「よし、じゃ、尻尾を取るか」
オオネズミは魔物としては弱い部類に入るが、群れで村を襲い、村人や作物を食い荒らすので退治すると報奨金の出る魔物だった。その退治した証拠となるのが、お尻の細い尻尾である。その細い尻尾の数だけ金が出るので、俺たちは死骸からしっぽを切り取った。森の大賢者様に会って帰った時に換金すればいい。冒険者ならば狩った魔物はきちんと換金というのが鉄則であり、それは団長さんもよく理解していて、慣れた手つきでしっぽを切り取っていた。
「ふぅ」
あらかた切り取った時、彼らは姿を見せた。
「動くな、バケモノ」
エルフだ。弓を構えた十数人にエルフたちが、俺たちを包囲していた。
「そっか、こいつらエルフに追われて慌てて逃げてたのか、道理でいきなり現れたと思った」
獣人娘が、いきなり襲われた理由を知り、苦笑する。
たぶん、エルフの村が近くにあり、村が襲われる前に追い払おうとしたのだろう。その追い立てた先に偶然俺たちがいたようだ。
「俺たちが、あんたらの獲物を横取りしたんで怒ってるのか」
「黙れバケモノ。我らの森に何ようだ」
バケモノと呼ばれ、俺は納得した。俺を魔族と思っているらしい。
「こんな腕してるけど、俺は、立派な人間だから」
「そ、そうです、この方は魔族の呪いでこんな姿になってしまい、この姿を元に戻すために、これから森の大賢者様に会いに行くところなんです」
聖女様と女剣士が簡単に弁明する。
「ほれ、うちのギルドの長が書いてくれた紹介状もあるぜ」
俺は、その紹介状をエルフたちに見せた。触手で持ち、一番近くのエルフへとニュルニュルっと触手を伸ばして渡す。
「ん、本物のようだ」
俺から紹介状を渡されたエルフが中身を確認する。
「うちの村に寄って行け、お前の処分は村長が決める」
「は、はい・・・」
触手でぶっ飛ばせない数ではなかったが、エルフと事を構える理由はない。それは団長らも理解していて、俺たちは黙ってエルフたちに案内されて彼らの村に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる