最強の触手使いに俺はなる

木全伸治

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暁の風団長ジルア

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「おら、ドすけべ。起きな」
ベシベシと荒っぽく頬を叩かれ起こされた。
「ん?」
腕が触手になった男というのがよほど珍しかったらしく、昨夜は遅くまで、ギルドの酒場で調子に乗って触手を皆の前で動かして騒いだ。で、ドアに鍵もかけずに部屋で眠ってしまったようだ。
しかも、目を開けると俺を睨む女剣士と傍らには、女格闘家や女魔法使いなどが、おっぱいやケツ丸出しの乱れた格好で俺の部屋で一緒に雑魚寝していた。冒険者の女は安くはないが、酒に任せての乱痴気騒ぎは無礼講のようである。その宴の主賓で泥酔した俺もなんとなく昨夜のことを覚えていた。酔った女冒険者たちは、ちょっと好奇心で試しに自分を触手で縛ってみてくれというもの好きがいて、他の冒険者も囃し立てたので何人か実演してみせた。それが宴会芸のように受けたところまでははっきり覚えていたが、その流れで、俺の部屋に連れ込んで雑魚寝になったようだ。いや、うすぼんやりとだが、触手で彼女たちの恥部に結構エロいことしたような気もするが、飲み過ぎたためか、どこまでやったかはっきり覚えていないが、彼女たちの服装が乱れているところから、何もしてないということはないだろう。
「え、ん? お、いて、いてててて・・・」
乱れた女冒険者たちの姿は、まるで触手王に持て遊ばれた女剣士の姿に似ていると、ふとあのときのことを思い出してしまい、ギリギリと頭が痛み、それで目がすっきりと覚めた。
「目が覚めた? もう朝よ」
女剣士が怖い顔で俺を睨み続けている。このタイミングで女格闘家が艶っぽい寝言を吐いた。
「ああ、あん、もっと、もっと奥まで頂戴・・・」
「あ?」
女剣士がギロリと俺を鋭く睨む。
「い、いや、俺は何もしてないぜ」
本当に今は何もしていない。完全に夢の中での寝言のようだ。
「いい、いい、そこ、もっと、もっとぉぉ」
今度は触手を抱き枕にしていた女魔法使いが興奮するような寝言を吐いた。
「おい、あんたら起きてるだろ。起きてて、わざと・・・」
俺は、彼女たちが、そういう寝言をわざと呟いて俺を追い詰めていると察したが、相棒の視線は冷たいままだった。
「言い訳なんて、男らしくない」
「寝たふりなんてやめてください」
「だ、だめ、離さない」
明らかに寝たふりをして俺の触手を彼女たちが強く抱きしめようとする。
埒があかないと思った俺は、触手をしゅるるっと彼女たちから離すように手繰り寄せた。昨夜の宴会芸披露のおかげで触手の伸び縮みは俺の思い通りだった。
「あ、待って」
まだ、寝言を続けようとするが、それ以上やると、起きているとバレると思ったのか「むにゃむにゃ」と、触手を離し、彼女たちは乱れた服装のままで寝たふりを続けた。
「ほら、行くわよ」
「い、行くって?」
「忘れたの、大賢者様に会いに行くんでしょ? それとも、昨日飲み過ぎたから、今日は動けない?」
「あ、いや、行くよ、行く行く」
俺の部屋で寝たふりを続ける女冒険者たちを放置して俺は部屋を出た。鍵はかけない。別に盗られるような金目のものはないし、触手王の報奨金は相棒が受け取っている。
階段を降りるとギルドの受付のある一階も似たようなありさまで、ベテランの獣人のおっさんをはじめとして、冒険者たちが泥酔して、受付のそばでごろ寝していた。冒険者は野宿や、どこでも寝れる図太さがなければやっていけないが、これはさすがにひどい有様だった。冒険者出入り禁止の酒場が出るのも当然だ。
出発前におっさんに挨拶したかったが、起こすのも悪いので、そのままギルドを出た。
外では聖女様と獣人娘が待っていた。
「遅いぜ、旦那」
「お酒臭いですね」
聖女様がちょっとだけ顔をしかめる。
酒をこぼした覚えはないが、宴会芸のように触手を動かした際に触手に酒が染み込んだかもしれない。
「オヤジより、マシさ。どうせ、また床で酔い潰れてるんだろ」
獣人娘が苦笑していた。実の娘には、ギルド内で酔い潰れている父親の姿が容易に想像できるようだ。
「酔いつぶれていた方がマシさ、こいつなんか部屋に女連れ込んで触手で乱交してやがった」
「お、おい、自分は恥ずかしことを口外するなと口止めさせるのに、俺はいいのかよ」
「なにやってたんだよ、旦那は。腕が触手になって大変なんだろ」
獣人娘が俺を呆れるように見る
「いや、みんなで雑魚寝してただけだよ」
「雑魚寝してただけ? それにしては、お姉さんたち、あんたの触手を気持ち良さそうに抱いてたじゃないか」
「触手を抱いて・・・」
なにかすごいことを想像したらしい聖女様がポッと頬を赤らめ俺から視線を外した。
俺は、弁解をやめた。ここは下手に言い訳すれば余計に傷口を広げるような気がしたからだ。
とにかく、ギルドを出発して、街はずれへ向かう。
触手王の報奨金で買いそろえた旅の食料などの大荷物は獣人娘がひとりで背負っていた。みんなで荷物を分けようとしたのだが、彼女は自分が役に立つということをアピールするため譲らなかった。ギルドで半人前扱いされているとはいえ、彼女にとっては俺たちは冒険者の先輩であり、いいところを見せて、ギルドに冒険者として推薦してもらいたいのだろう。
街は、夜盗や魔物から住民を守るため、壁に囲まれている。その街の出口で赤い武具で身を固めた百名ほどの武装集団がいた。剣呑な視線を俺たちに向けている。
触手を見られたかと思ったが、今日は忘れずにちゃんとマントで隠していた。が、そのマント羽織っている姿で胡散臭く見えたのか、俺たちは注目された。
「あれ、暁の風じゃない」
女剣士がその赤備えの一団の正体に気づく。
「暁の風って?」
冒険者ではない獣人娘が首を傾げるので、俺が補足する
「冒険者集団だよ。女ばかりで、赤で装備を統一した冒険者というより傭兵団に近いかもな」
モンスターに子供や夫などを殺されて未亡人になった女性が中心で、最初はただの冒険者の集まりだったが、仲間が増えて、大物のドラゴン討伐や盗賊団退治など人数の必要な大仕事を請け負うようになり、金で雇われる傭兵団に近くなった冒険者たちである。
俺も、別の町での仕事でちらりとすれ違った程度で、正直、名前ぐらいしか知らない連中だ。
この街には盗賊団とかドラゴンは現れず、うちのギルドだけで収まる小規模な事件が多く、こんな有名どころの連中がここを訪れるのは奇妙だった。
一番派手な真っ赤な鎧姿の赤毛の女性が俺に近づいてくる。
「あんたが、あの触手王を退治したっていう野郎かい?」
「え? そうだけど、あんたらは?」
「あたしらは暁の風っていう、ま、ちょっとは名の知れた冒険者集団さ。あいつはここのところずっと私らが追ってた獲物だった。あいつがあんたにやられたなんて信じられなくて、どんな奴が倒したのか顔が見たくてね」
俺が倒したことが、もう噂になって広がっているのか。
「俺みたいな無名な奴に倒せるわけないと。けど、倒した証拠に、あいつの怨念で、俺の腕がこの有様だけどな」
俺はマントをめくり、自分の腕を見せた。
「死に際にあいつの恨みを買ったらしくて、この有様だ。こいつを治しにこれから森の大賢者様に会いに行くところなんだが」
「正直、信じられないね、あいつが、やられた振りして、お前さんに、化けてすり替わってるんじゃねぇか」
女は剣を抜いた。女剣士と獣人娘も身構える。
「あいつは、そう簡単にやられるようなタマじゃないからね」
「なによ、簡単に獲物を獲られて嫉妬? 見苦しいわよ、おばさん」
女剣士が挑発するように言う。
「は、そうやって、庇うのがますます怪しいね、ちょいとおとなしく付いてきてもらおうか」
俺たちを数で抑え込もうと赤い集団がざっと取り囲む。
「たく、うるさい、まだ昨日の酒が残ってて、少し頭が痛いんだ。邪魔するな。俺はさっさと、この腕を元に戻したいんだ」
俺は怒りを表現するように触手を逆立たせた。
「どけよ、うざい!」
宴会芸でたっぷり披露したせいか、思い通りに自由に触手を操れる。ひゅんひゅんと鞭のようにしならせて、取り囲んでいた奴らを指で弾くように吹っ飛ばす。
「うおっ」
「げっ」
「ひ」
あっという間に百人ほどが弾かれて、囲みが崩れた。
女剣士におばさんと言われた女性も吹っ飛ばそうとしたが、さすが触手王を付け狙っていただけのことはあり、俺の触手を剣で弾いて躱した。剣で弾かれたのに痛みはなかった。残ったのはそのおばさんだけで、残りは地面に尻餅をついていたり、怯えるように俺たちから下がっていた。
女剣士が切っ先を向ける。
「お仲間は戦意喪失みたいだけど、まだ続けるつもり、おばさん?」
「分かった、分かった、降参だ。が、あんたが触手王の化けた姿じゃないと証明されたわけじゃない。しかも、今の触手の動き、奴が化けていないとますます思えなくなったね。私も、あんたたちについて行くよ、腕を元に戻し行くの見届けさせてもらうよ」
「団長!」
「いいから、黙ってな。あんたらは、こいつに敵わなかった。だったら、誰かが付いて行って見届けるのが筋ってものさ。副長!」
「は、はい!」
俺の触手に飛ばされた若い女武者のひとりが返事をする。
「ちょいと団を離れる。しばらく、お前に団を任せる。あれを追いかけるため、スケジュールも空いてるだろ、この街で、しばらくのんびりしてな。もし、私が戻ってこなかったら、お前が、新しい団長だ。いいね」
「え?」
「分かったかい?」
「は、はい、団を一時、預からさせていただきます」
ビシッと背筋を伸ばして団長に応える。
それをぽかんと見ていると、団長さんが、俺たちに近づく。
「悪いけど、私も同行させてもらうからね。なに、あんたが腕を元に戻すのを見届けるまでの間だ、文句はないよな」
「え、あ、あの・・・」
俺は女剣士たちを見たが、彼女たちも軽く肩をすくめるだけで、文句は出なかった。
「じゃ、俺の腕が元に戻るまで」
そうして、腕が触手になった俺、女剣士、聖女様、獣人娘、暁の風団長の五人のパーティーは、森の大賢者に会いに出発した。
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