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道標
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子供の頃、遠足で、その山に登ったことがあり、お盆の帰省で、小学生の頃の友人たちで久しぶりに集まらないかという話になり、どうせ集まるなら、ガキの頃に登った山に再び登ろうという話になった。小学生の登れた山で、しかもそれほど高くなく、夏休みの観光シーズンには家族連れでにぎわうような山だった。
久しぶりに集まったということで、みなはしゃいで、山頂で飲もうと用意していた缶ビールを喉が渇いたといって歩きながら開けているバカもいた。山道はなだらかで、ただ、子供の頃より肉体的におっさんになっていたせいのか、途中、最初の能天気な勢いはなくなり、みな黙って登るようになっていたが、それでも盛り上げようとバカみたいにはしゃいだ奴が、山頂への道標をふざけて引き抜いていた。
「おいおい、なにやってるんだ」
「大丈夫、大丈夫、戻すから」
そいつはそう言って笑いながら道標を元あった地面に突き刺した。
それが間違いだった。
「おい、もう山頂についてもいいんじゃないのか」
子供の頃の記憶では、山頂の広い見晴らし台で、引率の先生たちと一緒に楽しくお昼のお弁当を食べたはずだ。
なのに、俺たちは昼を過ぎても頂上には辿り着けなかった。
「おい、道を間違えたんじゃなないのか」
「戻ろうぜ、たぶん、あの道標を抜いたところで道を間違えたんだ」
だが、俺たちは、あの場所には戻れなかった。単純に来た道を戻っているはずなのに、あの一度は引き抜いた道標が見当たらない。
携帯で助けを呼ぼうとしたが、繋がらなかった。
この時、俺は気づくべきだった、道を迷い始めてから、人数が増えて、そいつが全然疲れていないことに。しかも、俺たちが迷っていると気づいて焦っている中、ひとりだけ平然と薄ら笑いを浮かべていることに。
久しぶりに集まったということで、みなはしゃいで、山頂で飲もうと用意していた缶ビールを喉が渇いたといって歩きながら開けているバカもいた。山道はなだらかで、ただ、子供の頃より肉体的におっさんになっていたせいのか、途中、最初の能天気な勢いはなくなり、みな黙って登るようになっていたが、それでも盛り上げようとバカみたいにはしゃいだ奴が、山頂への道標をふざけて引き抜いていた。
「おいおい、なにやってるんだ」
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