怪異の忘れ物

木全伸治

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雨音恐怖症

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ある朝、会社に出かけようとしたが、雨が降っていて、思わず後退ってしまった。傘はあったし、数瞬前までは、それを開いて出勤しようとはしていた、
だが、急に怖くなった。傘を開いても、とてつもなく重い雨粒が傘を貫いて自分に当たるような気がして、雨の降る外に一歩も踏み出せなくなったのだ。
雨音が怖い。それは鉄の塊が際限なく、降ってくるように聞こえて、一歩も家から出られなくなり、その日は無断欠勤した。
しかも、運悪く梅雨時で、天気予報も今週は雨の日が多いだろうということだった。
会社の上司から、無断欠勤した日から、俺の携帯に電話が何度もかかってきた。だが、雨音が急に怖くなったから、会社を休んだなんて言わけするよりも、俺は上司の電話を無視することにした。
本当に梅雨時の雨はしつこく、家の中にいても、ガラス窓を割られて、雨粒が飛び込んできそうな恐怖を感じて、会社に行かず、部屋の中で数日過ごした。
いくら梅雨時でも、無限に雨が降ることはなく、その日は、午後から陽が射した。
これで外に出られると思い、俺は乏しくなっていた食料を補充するため近くのコンビニに行くことにした。会社を数日無断欠勤したが、一応貯金はある。コンビニにはATMがあるし、日常生活で必要な物は大体売っている。
このまま明日も晴れれば、上司にお詫びの電話を入れて出勤しよう。いくら無断欠勤したとはいえ、たかが数日である、クビにはならないだろうと、楽観視していた。だが、久しぶりの買い物で、コンビニであれこれ時間を掛け過ぎたせいか、コンビニを出たとき、久しぶりの晴れ間が、どんより曇っていた。
コンビニに向かう前に俺はその日の天気予報を確認しなかった。久しぶりの晴れ間が見られるが、ところによっては、急な夕立に注意が必要だと。
それは、30分程度ですぐ止んだが、ずぶ濡れになった俺は、何か重いもので、連打されたような遺体で発見された。警察は、急な夕立で視界が悪くなった車に跳ね飛ばされての事故だろうとひき逃げ事件として処理した。
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