怪異の忘れ物

雨が上がったら外は安全

巨大なショッピングモールに逃げ込むのは、基本だろうし、実際、それで、私たちは助かった。政府の指定した避難所の多くは学校などの公共施設であり、商業施設であるショッピングモールほど防犯などの対策が施されているわけではなく、当然、それは奴らの侵入を許すこととなった。だから、学校に逃げ込んだ人々の多くが彼らに食われた。
ショッピングモールに逃げ込んだ私たちは、防犯カメラを使って、奴らが入って来ない様に皆で24時間交代で見張った。だから、奴らの侵入を許さなかったし、誰も犠牲者を出さなかった。そして、雨が上がり長い梅雨が明けようとしたとき、私たちはショッピングモールの外に出ることにした。生けるしかばねである奴らは、梅雨の湿度のために十分に腐っていた。いくら痛みを感じない死体でも、腐ってしまえば力は出せない。奴らになりたての死体の中には、走る奴もいたが、腐ってしまえば、その動きは散漫となり、恐怖ではなくなっていた。
しかも、全身腐っているから、近づいて来ても臭いですぐに分かった。
だから、ショッピングモールから私たちは安全に脱出できた。映画のように奴らに取り囲まれて絶体絶命にはならなかった。所詮、映画は映画だ。