生き血を吸いたい私と死にたい君と

koystory_maria

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心のない力

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【心の無い力】

心の無い力はただの暴力。 


そう彼に言われた時、
あの日々を思いだし、 

頭は真っ白になり、私の手は震えていた。




21歳の頃、
付き合っていた3歳年上の消防士の彼はDV男だった。 




私は髪を捕まれ引きずられた事もあるし
ひっぱたかれて唇を切って紫色に腫れさせた事もあった。



階段で思い切り蹴飛ばされて落ちそうになり太股には大きなアザも出来たりした。 .




理由は色々だったけど主に他の男性への嫉妬だった。 



追い詰められて、
もう殴られるのが怖くて
死のう、と思って

ある日彼にホテルに呼び出された時、
室内に入ってから睡眠導入剤を大量に飲んだ事があった。 




それからお風呂場で備え付けのT字のカミソリの刃だけを剥ぎ取り、

強く左手首を切った。




死のうと思った時、
人は痛みを感じないんだと思った。




赤い血がダラダラと手首を流れていき
シャワーの音を聞きながら
私は泣いていた。 



いつまでも出てこない私を覗きに来た彼は


「何を馬鹿なことをしよんか!!」



と腕を引っ張ってベットに連れて行き、
腕を止血していた。 




彼は消防士で、救急隊もしていた。 
だからその程度の出血では死なない事も分かっていたのだろう。



こんな風になった私を見ても、
平然とまた私を怒鳴り始め

「そこに土下座しろ」


と威圧的に言っていた。



だけど
そのぐらいになって
ホテルに入ってから飲んだ薬が体を蝕んでいった。

恐ろしい程に頭が割れるような痛み。 


「痛い!!頭が痛い…!!」
ベットの上でもがくほど苦しかった。 


なぜ頭が痛くなるのか?
と疑問を持った彼に、
さっき大量に飲んで捨てた睡眠薬の箱が入ったゴミ箱を指差した。 



「お前はなんをしよんか!? 」




その後、私は薬がどんどん体に回ってしまい、徐々に意識が飛んでいった。

薄い記憶の中で、

彼が私の口に水を大量に飲ませようとしていた所や、喉に指を突っ込んで吐かせようとしていた所が断片的に記憶にあった。 


けれどその後の記憶は無くなって
私は意識を失った。 



その後目が覚めた時は
病院のベットの上で3日後だった。

人工呼吸器が着いていて、
ICU室内だった。 



私の親は
今夜が峠かもしれないので覚悟を

とまで言われたいた。 


全身の血液を入れ換える血液透析をして、
心臓は弱りきってしまっていた。



危篤状態になった原因は
意識の無いときに大量に飲まされた水が
肺に大量に入っていて
肺水腫になってしまっていたからだ。 



親は周りから弁護士や警察に相談を勧められていたけれど、
それをしなかった。 


理由は、 
危篤状態から意識を取り戻した私が



初めに発した言葉が




「彼は…? 彼はどこ…?」




私の、彼を心配する言葉だったからだ。 




彼からの暴力は
全て私への愛だと思っていた。 




私が失敗ばかりするから、
金銭感覚がだらしなかったり、
他の男に気軽に話し掛けたりするから… 




彼は私を愛しているから
それを暴力として怒ってるだけだと…。 




手首に巻かれた包帯を
毎日看護師さんが来て優しく丁寧にクルクルとほどいていく。 



ガーゼを捲ると何針も縫われて結ばれた傷口にポンポンと消毒液を塗っていく。 


看護師さんは何を思っているだろう。 .


私を、

憐れだと思っているだろうか。 



そんな私の心を読んだかのように、巻き終わった腕に触れて



「痛かったですね。。。 


もうしないで下さいね。」 


と少し微笑んで部屋を出ていった。




その後肺水腫によってレントゲンで見たとき真っ白になっていた肺は綺麗に元に戻り、動きが弱ってしまった心臓は日常活動出来るほどになった。


3週間の入院を経て
退院したけれど、入院前と比べて体重は10kgも痩せていた。 



その為、体力が戻るまでしばらく寝たきりの生活だった。




沢山の心配を掛けた職場の仲間や友人達が何度も見舞いに来てくれて、諭され、2度と相手と会わないで欲しいと泣く人、



危篤と聞いて病院に向かう車の中でアクセルを踏む足が震えていたと叱って頭をコツンとしてきた人、



抱き締めて生きててくれて良かったと何度も言う人、、、 



自ら命を絶つ行為で、その場の苦しみから逃れるのは簡単な事だけど

残された人達の事を
自分の体なんかよりも酷く傷付けたのだという事を知った。 





大事な人を守る努力って…


何なんだろう。。。 


色々な哀しい記憶がトラウマになり、今も精神的な障害に襲われる事がある私は 
ちょっとした一言に傷付いたり考え込み過ぎたりして、
身動きとれない日もあるけれど 



ただ子供達の笑顔を見ると

今が、今の瞬間が
何より大切なのだと感じるし、 

3人の子供達の笑顔は
私の弱い心を毎日癒してくれていた。



四年前に前夫と離婚した時に
長女は7歳、次女は3歳だった。

そして、お腹の中には3人目の赤ちゃんを身籠ったばかりだった。




私達は実家のある福岡へ戻り、
これから迎える出産と子供達を育てて行かなければいけない不安で途方に暮れていた。



だけど子供達はいつも笑顔で
私に癒しをくれた。



その可愛い日々の瞬間を綺麗に写真に残したい。
そういった想いから、私は一眼レフカメラを買った。



一眼レフカメラを購入して、
撮った写真を毎日インスタグラムにupする。



可愛い子供達の写真を載せるだけ、
それが未来の見え無い私にとっては大きな生き甲斐となった。



そしてインスタグラムを始めて3年目に
まさか恋に落ちる事になるなんて…。





次に続く【彼と会う日】
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