しらぬがまもの

夕奥真田

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骸の上に立つ

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本当にこれで良かったのか、分からない…。

朝日が顔を覗かせる少し前、空から降る微かな色が、地の薄闇を和らげ、なだらかな丘陵地帯に輪郭を持たせ始めた、おそらく、歩く分には特段問題のない頃、僕は地べたに膝をついて、辺りに散乱した“新聞”を拾い集めていた。

刷られて間もないのか、インクの匂いが時折鼻につく。

だが、それ以上に強い、新聞に付着した、或いは周囲に広まった“血”の匂いが鼻をおかしくさせる。

ベヒモスが報告してくれたコハブでの一件は、時間が経過してしまったせいもあってか、想像以上に厄介な事になってしまっていた。

昨日の半日程の調査によると、どうやら事の発端は領主、つまりプレシエンツァの館が火事になった事にあるらしい。

火事は間もなく消し止められたそうだが、その原因究明と、行方の知れなかった領主を探しに、火元である領主の部屋を捜索していた騎士たちが、例の真実を知ってしまったとのことだ。

しかし、領主の館へ入る門近くで、混乱する大衆を必死に宥めていた騎士たちによれば、余計な混乱を招かぬ為にも、この真実は一度伏せておくよう騎士長から命令されていたらしい。

領主の行方を探し、どういう状況であったかを調査してからでないと、大衆にいらぬ誤解を与えかねない、と。

実際、プレシエンツァの行方が分からないのは、ひどく不可解だ。

コハブ周辺を飛び回る竜族の多さから、黒龍が配下である竜を引き連れ、昨夜の魔王の命令を無視する様に無理矢理襲いかかったのかとも思ったが、それならば領主よりも、竜族に非難の矛先が向くはず。

だとすると、プレシエンツァの館は何故燃えたのだろうか…?

彼自ら火をつけた?

何の為に…?

昨夜の決定をフェンリルたちが教えたから?

いや、そうであったとしても、態々火事を起こし、自分を不利な地位へ貶めるとは思えない。

…何かあったと考えた方がいい。

おそらくはプレシエンツァの息が掛かったであろう騎士長の命令に背き、真実を大衆には振り撒いた、我々の目からすれば余計なことをする者もいるのだから。

「…不運、でしたね。貴方がたも」

散らばった新聞を掻き集めていた手を止め、薄暗い世界に転がる肉塊に、もう一度心の中で手を合わせる。

仕方がなかった、必要なことだった、彼らへの言い訳は幾らでも思い浮かぶが、それを口にしたところで、意味があるのは僕自身の心と、手伝ってくれた弟のナルヴィくらいだ。

単なる仕事として、この新聞を他の街に届けようとしていた、彼らには何の慰めにも、弔いにもならない。

「…兄ちゃん、本当にこれで良かったのか?」

証拠を消す為、金の大狼の姿となり、車を引いていた馬を頭から丸齧りしていたナルヴィが、力無い声で、自問するかの如く、ぽつりと尋ねる。

この子が聞いているのはおそらく、彼らを殺すことに“意味”があったのかという、合理的な観点ではなく、彼らを殺して“良かった”のかという、倫理的な観点だろう。

しかし、僕にはそのどちらも答えられなかった。

そもそも倫理的なものについては答える権利がないのだ。

魔王が望んでいるのは、人と魔物の共存であり、支配ではない。

それ故、人の生死を決める決定権を、僕は勿論、全ての魔物が持たないのだから。

だが、合理的な観点についても分からない。

コハブ中に広まってしまった真実を、他の街に伝播させぬ為とはいえ、新聞配達人を殺害したことが本当に効果あることなのか。

今更ながら、無謀で浅はかな考えであったとも思えてしまう。

この新聞を止めたとしても、新しい物はどんどんと刷られ、それを運ぶ者も新しくなる。

正に、いたちごっこだ。

ましてや、人通りが少ない時刻故に出来たことでもある。

人目については、魔物の沽券に関わる。

「…これからどうするんだ?兄ちゃん?」

何も答えられず、ただ黙々と新聞を拾い集めていると、ナルヴィは縋る様な声を上げた。

やはり、命乞いまでした、無抵抗の人間を引き裂いたことに、強烈なショックを受けているらしい。

「一度、魔王様の元に戻りましょう。多少の時間は稼げたはずですから…」

「…分かった」

ナルヴィは静かに頷くと、今にも吐きそうに嗚咽を漏らしながら、馬を胃袋へと押し込めてくれた。







コハブとシエル王城はかなりの距離がある。

怠け癖がありつつも、体力を落とさぬよう日々過ごしている、根は真面目で優しいナルヴィでさえ、それなりの時間が掛かってしまう程に。

結果、ぽっかりと空いた空から、人々の活気が微かながらに届く中庭において、いつも通り墓の手入れをしている魔王の元へと到着出来たのは、日がすっかりと登った頃だった。

「大変遅くなってしまい申し訳ありません。ナリとナルヴィ、ただいま戻りました」

「…ナルヴィはどうした?」

手が汚れることなど気にせず、素手のまま、雑草抜きなどの作業をしていた魔王がちらりとこちらを向く。

豪華絢爛とは程遠い、質素なドレスに身を包み、手を泥で染めた、ひどく大衆的な出で立ちではあるが、その近寄り難くもある、高貴な雰囲気は決して揺らいでいない。

「…申し訳ありません。ひどく疲れたと言っていたため、今は先に休ませています」

「…そうか、大事無いなら良い。それで?コハブの様子は如何様だった?」

「正直に言って、ひどくまずい状況です…」

コハブで見聞きし、行ってきたことを、魔王へ包み隠さず伝える。

本来であれば、会議場にフェンリルたちも集め、そこで議論すべきことなのだが、今はそんなことをしている暇もなければ、正直、最近の身勝手な彼らを集める必要性もない。

一昨日前、黒龍のプレシエンツァたち追討、正確には確保の命令に関し、真っ向から反対したスレイプニルに、ガルディエーヌを逃したフェンリル、傀儡のシエル王に執着するヘル。

どの者たちも、全ての魔物が切望しているであろう、魔界復興という崇高な目標に向け、全身全霊取り組んでいる魔王に対し、畏敬の念を忘れ、私利私欲に走っている気がしてならない。

それ故、そんな者たちを会議に混じらせること自体、無意味にしか思えなかった。

「そうか…。ベヒモスの言うことは本当だったか」

「はい。確認した時には、プレシエンツァとレイダット・アダマーに関する情報だけが流れていましたが、いつ我々に関する情報が出てくるとも分からない、危険な状態です。如何しますか…?」

一部だけ拝借してきた、例の新聞を手渡し、それに付け加える様に説明しながら、次なる指示を乞う。

魔王は目の動きが分かる程の早さで新聞を読み終えると、深い息を吐いた。

「もはや、この際プレシエンツァたちの情報は仕方がない。一領主がその名声欲しさに謀った事とし、我々はその領主を追うために、黒龍を遣わしたと正式に発表すれば良い」

「…ということは、態々配達人を殺す必要はなかったのでしょうか?」

「いや、これ以上真実を拡大させず、収束させるのが本当は最善だ。正式の発表はあくまで、それが上手くいかなった時の次善。それ故、貴公らの行動は我々が動くための時間を確実に稼いでくれた。良い判断だったと私は思うぞ、ナリ」

「ありがとうございます…!」

こう言っては、無神経かもしれないが、魔王に褒められると、今の今まで感じていた罪悪感が薄れていった。

倫理観はともかくとして、合理的な観点から見て、あれは正解だったのだと分かれば十分だ。

今後について話し終わったら、自室に篭り、おそらくは罪悪感に苛まれているであろうナルヴィにも教えてあげよう。

倫理的であろうと、合理的であろうと、“間違ってはいなかった”と教えてあげれば、その苦悩も和らぐはずだ。

「しかし、根本的な解決にはならない。新聞を新しく刷り、別の配達人が動き出せば意味はない。それに、新聞でなくとも、街を行き来している者たちが口伝えしているはずだ。いずれ、シエル中…下手をすれば各国にも出回る」

「…もしそこに各国とレイダット・アダマーに関する情報もあれば、各国王も火消しに奔走する羽目になりますね」

「あぁ…。やっと保ち始めた均衡がまた崩れる」

ようやく手に入れた平穏と安定が、再び瓦解し、終わりの見えない争いの日々が戻ってくることに、美しい魔王の顔が悲痛で歪む。

いや、戻ってくるというよりも、過去以上に酷い、暗雲立ち込める未来がやってきてしまうかもしれない。

というのも、前回、魔物が人間界へとやって来た当初は、前シエル王がその野心のため力を貸してくれたが、真実全てが露呈すれば、実質統率者のいない愚かなシエルは、おそらく魔物の敵に回ると予想されるからだ。

つまり、我々魔物は孤立無縁となり、人間界における信頼と基盤を完全に失うこととなる。

シエルを力で持って制圧するのはひどく簡単だ。

だが、微かな希望の光が見えてきたとはいえ、まだ魔界復興の目処が立たず、人間界に依存しなくてはならないだけに、それは正直避けたい。

結果、この件もまた、シエル国内で内密に処理しなくてはならないのだが、レイダット・アダマーの蹶起や、シエル王の創作など、これまで多くの事に、その力を貸してくれたプレシエンツァたちの協力が無いのが、ひどく悔やまれる。

ん?プレシエンツァ…?

「…そういえば、やはり、プレシエンツァは自分から館に火をつけたのでしょうか?」

「何故そう思う?」

「火元を調べられていないので、詳しくは分かりませんが、食えないあの男の思考を読むに、火事を起こす理由として、一番に考えられるのが、現状出回っている証拠となる様な物を葬るためだと思うのです」

「…しかし、現に情報は流出している。あの用心深い男がこんな杜撰なことをするとは思えん」

「急いでいたのかもしれません。何か急を要する事態に直面して…」

「ふむ…」

「…あり得ませんか?」

話していて馬鹿らしいことは、自身でも理解している。

所詮は、根拠もない妄想話故、否定されて当然、そう思っていた。

しかし、魔王は静かに首を横に振ると、微かな笑みを浮かべてくれた。

「分からない。だが、奴らが我々を裏切っていない可能性を上げるのが貴公だとは…。少し意外だった」

「…」

勿論、ヘル同様、彼らのことを信頼している訳ではない。

しかし、むしろ、注意深く警戒しているからこそ、あの者たちが、こちらを陥れるためとはいえ、自身の地位さえ落とす、こんな愚策とも思えるような策を使ってくるとは思えなかった。

それに、魔王が言っていた様に、あのプレシエンツァならば、火事に見せかけつつも、自分たちの情報だけが燃えてしまうよう細工を仕込むに違いない。

それ故、今回の一件は、どうしても彼らの意図するところではない気がするのだ。

「…だが、発端が何であろうと、今は先にこの件を片付ける。奴らのことは、黒龍に任せておけ」

「そう…ですね…」

何故黒龍をそうまでして彼らに宛てがいたがるのか、その理由を反射的に聞き返そうになるも、それをぐっと呑み込む。

こんなくだらない疑問を持っては、一昨日前の他の幹部たちと変わらない。

勿論、魔王が何故彼らを黒龍に襲わせようとしているのか、その意図は僕にも掴めないが、少なくともだからといって、それに反対する気も、邪魔する気もない。

何故なら、魔物の中で、頂点に立つ魔王の言うことに間違いはないのだから。

「では、我々は一体どうすれば?」

「まずやるべきは、我々との関係有る無しに関わらず、残っている証拠物全てを消し去ることだ。そして、出来ることならば、あまり現実的とは言えないが、情報の流れを制御し、シエル中に真実が広まるのを止める」

「…我々だけではかなり荷が重いですね」

あの騒動がコハブの中で収束してくれるのならば、それに越したことはない。

だが、魔王も言っていた様に、実際のところ、怪しまれずにそれを行うのはひどく難しい。

何故なら、新聞屋や情報屋でなくとも、コハブに出入りする者たちが、口伝えに他の街の者たちに情報を流している可能性があるからだ。

ましてや、それを防ぐためと、日中堂々、コハブの街に出入りしている者たちを、朝方の新聞配達人の様に殺すことも出来ない。

そんなことをすれば、余計に問題が発展してしまう。

そこら辺にいる人間を操り、辻斬りさせるというのも手ではあるが、人間如きでは、コハブの街にいる魔物に簡単にやられてしまう。

逆に魔物にやらせては、人間からの信頼を無用に削いでしまうことになる。

検問を開こうにも、その理由がないし、下手をすれば関与が疑われる。

それに、街間の交流を妨げるとなれば、他の領主との兼ね合いもある。

何にしても、人々の往来を止めるのは、大変難儀だ。

「やはり、貴公もそう思うか…。やはり、真実をコハブ内に囲むことは難しいだろうな…。だとすると、やはり、新たな証拠物を消した後、こちらから情報を出すしかない」

「黒龍による追討の正式発表ですか…」

敢えてこちらが先に領主追討の命を発することで、憎悪や不安に燻るコハブの民衆の炎がこちらへと燃え盛るのを防ぐ手立てだ。

だが、これにもいくつか問題がある。

まずは発するタイミング。

現状はおそらくコハブ内でのみ騒がれている事案なため、今発すれば、他の街に不審がられる。

コハブから他の街に伝播し、それを聞きつけた体で発しなければならない。

だが、そうなると当然、後手に回ることになる。

もう一つが、正式発表を行えば、否が応でもシエル中に、このことが知れ渡ってしまう点だ。

三年前のソレイユやフェンガリの様に、小さな街であれば、その街にのみ伝令を遣わすことが出来るかもしれないが、コハブ程大きな街の事案となれば、そうもいかない。

それに、当の領主がいなくては、市民は発表の全てを、他の街に触れ回るはず。

結果として、シエル中に、この正式発表と、その原因となる一件について著聞してしまうということだ。

全く別の情報を流し、真実を覆おうにも、そもそもその真実を知りながらに動ける者は、プレシエンツァたちがいない今、魔物内では幹部たちしかいない。

もっとも、ある程度の痛みを伴うやもしれぬが、これ以上の現実的な策もないのが現状だ。

「分かりました。では、その様にしましょう。しかし、もし…我々の情報が漏れた場合は…?」

「…」

魔王の眉間に皺が寄り、微かに顔が歪む。

勿論、こちらもあまり考えたくはない。

しかし、何かしらの手立てを事前に考えていなくては、再び後手に回り、更なる苦境に立たされる可能性もある。

「無いとは思いたいです…。しかし、一応…念の為です…」

「分かっている…。私とて考えたくはない。だが…」

そこで一度言葉を切ると、見終わったらしい新聞を僕へ手渡し、魔王は周囲を見渡す。

辺りは三年前のあの日から変わらず、何も刻まれない、墓石が並んでいる。

毎日欠かさず、魔王が手入れしているだけあり、墓石は自然による老いこそあれ、ひどい傷や劣化はなく、綺麗な姿形のまま、眠り続けている。

魔王はそれらを見つめ、静かに吐息を吐き出すと、今まで以上に冷たい言葉を口にした。






「…だが、もし漏れていた場合、“白髪”に姿形を変えてコハブを襲う」




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