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21 三か月前の真実⑩ エミル

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 なんだそれは。
 私とルツィエルの婚約内定は、極秘事項のはずだ。
 それもこれもコートニー侯爵が、ただでさえ私のところに嫁がせるのが嫌なのに、内定の段階で早々に発表しては、ルツィエルが令嬢たちの嫌がらせを受けるのではないかと心配するからそうしたのだ。
 本当は貴族を全員集めてすぐさま宣言(という名の牽制)したかったが、義父のたっての頼みだ、聞かないわけにはいかない。
 それなのに帝都のみならず、こんな片田舎にまで私たちの恋物語が広まっていると?
 (やっぱり隠し切れないものなのだな……)
 急激に鼻の下が伸び、デレデレとしだしたエミルに周囲は震え上がる。
 (ルツィエルの私を見る目は恋する乙女そのものだし……私も彼女にだけは甘い視線を向けていたから)
 きっと水面下では、私たちの恋の噂が広まっていたのだろう。
 そしてこの事故だ。
 悲劇を乗り越えて結ばれようとしている私たちの物語は、いつか書物や演劇となり、きっと飛ぶように売れ──

 「事故に遭った皇太子殿下は、側で一生懸命看病してくれたお姉ちゃんと恋に落ちたんですって!そのお姉ちゃん、なんとうちの領主さまの娘なのよ!名前はユーリア様っていうの」

 「……は?」

 なに……今なんて言った……?
 ユーリア?ルツィエルじゃなくて?

 「ダ、ダナ!その話、いったい誰から聞いたんだ?」

 「お兄ちゃんがいない間、たまに帝都から来る行商のおじさんが来たの。その時に教えてもらったのよ。二人はとってもお似合いで、四六時中くっついているほど仲睦まじいんだって!」

 この子はなにを言っている?
 皇太子はここにいるではないか。
 このフェレンツ帝国皇帝ミロシュの唯一の実子で、ルツィエルのために生まれた妖精、それが私だ。
 暗殺という名の事故に遭って、さらには監禁されていた私がなぜ帝都にいて、ヤノシュの娘なんぞと乳繰り合うことになっているのだ。

 「ダナ、それは……なにかの間違いじゃないか?行商のおじさんと君を疑う訳じゃないんだが、皇太子殿下はとても優秀で心は慈悲深く、なによりこの世に二人といない素晴らしく美しい顔をしていると聞いたことがあるよ?」

 「妖精さんは、皇太子殿下と会ったことがあるの?」

 「ああ。とても素晴らしい人だ。でも事故に遭って、まだ見つかっていないと聞いたけど?」

 「おかしいわねぇ。確かにおじさんが言ってたのよ、二人はもうすぐ婚約するんだって」

 「……ミロフ、これはどういうことだ」
 
 私は部下の一人に訊ねた。
 
 「わ、私にもさっぱりわかりません。ですが人格は云々として、殿下の顔を見間違えることは不可能に近いです」

 「では帝都にいるのはいったい──」

 「た、大変だ!」

 入り口の近くに立っていたオトが急に声を上げた。

 「どうした」

 「見たことのない黒装束の男たちがこの家を包囲してます!」








 
 
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