俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

文字の大きさ
56 / 112

56話 機内の安全性

しおりを挟む
 俺は機内へと戻った。皆の心配そうな目に迎えられた。


「大島さん、大丈夫ですか?」

「お兄さん、食べられたかと思ったぁ」

「うん、怖かったね。あんなおっきな……鳥?がいっぱい、お兄さんにくっついて」

「ほら、俺のスキル、ボックスだから平気だぞ? 外から見たらくっついて見えたかも知れないが、ちゃんと空間はあったからな」

「おっさんにハゲタカが群がってたぞ。最後何羽が逃げたな」

「何を調べにいかれたのですか?」


 九条さん(足の悪い旦那の方)に聞かれた。そうだった。幾つかわかった。


「スキルを調べたかったんですよ」

「お兄さんのスキル? ボックスの?」

「まぁ、それもあるけど、桜井さんのスキル『空間(機内)』です」


 俺は思ってた事、今見てきた事を話した。

 桜井さんの空間スキルはかなりのチートだ。水や食料が復活すると言う機能がある。
 それはそれで凄い機能だと思うが、外の獣が入ってこない事からもしかすると『空間』として何某の機能もあるのでは思った。

 俺の『完全防御』と同じように、『空間』にも防御機能が備わっているのではないか。でないと、こんな場所に何日も無事にいられるわけがない。
 何しろハッチは空いているし、ギャレーの先はカーテンのみなのだ。幾らでも侵入し放題のはずだ。

 機体の屋根に登りたかったのは、さっきの獣が天井部分をガリガリと削った跡がどうなっているのか見たかったのだ。
 登れなくて断念したが、その後に面白い事がわかった。

 機体の上から滑り降りてきた鳥獣だが、滑っている時も爪はたてていた。しかし、機体に爪跡はつかなかったんだ。
 そしてウイング……翼部分を移動した時、爪はしっかりと翼の金属を破り突き刺さっていた。

 そもそも、この森に落ちた……置いてある状態の機体だが、前後は綺麗に斬れて無くなっている。まるでケーキでも切ったようにだ。
 しかしその胴体部分に付いたウイングは大木が邪魔したのか、折れて千切れていた。


「それって?」

「うん。恐らくだが、この機体の胴体部分はひとつの空間として守られている、と思う。翼はオマケと言うか空間じゃないんだろうな」


 俺は『空間』と言うスキルは防御スキルの一種なのかもしれないと思った。


「それってさ、ゲームで言うとセーフティゾーンみたいなもんかな」

「何よ、ドド。そのセーフゾーンって」

「だいたいのゲームにあるよな、セーフティゾーンは」

「だから何よ」

「システムでそのゾーンは敵に襲われないってなってるんだよ。ゲームだと街とかがそうだよな」

「そうだな。多分だが空間スキルは、その空間、桜井さんの場合は『機内』とあるだろ? だからこの機内はセーフティゾーンかも知れない」

「やったぁ! つまり安全って事だよね!」

「ご飯もあるしお菓子もあるし最高だね! コタ君ママ凄い!」

「こたくん?」


 桜井さんの子はどうやら光太郎と言う名前らしい。杏達はコタ君と呼んでいた。


 それと俺はもうひとつの疑念。俺の完全防御スキルのある検証を桜井さんの機体を使って実験させてもらったのだ。(こっそりと)

 と言うのも俺のスキル『完全防御(箱型)』だが、目には見えないが電話ボックスのような空間が展開されている。
 敵(獣)に襲われても奴らはこのボックス空間には入って来れない。

 森を移動している時に気がついたのだが、木が繁る狭い空間を通った時に、小さく細い木や枝は箱型空間に押しやられていた。
 流石にデカい大木を倒した事はないが、やってないだけで試したらいけそうな気もする。

 つまり、そうだな、電話ボックスがそこらの(小さい)物を薙ぎ倒して移動しているイメージだろうか。

 俺はここで機体を発見した時、自分は入れないかもしれないと思った。
 機体のハッチと俺のボックスのサイズだと微妙に俺の方がデカい気がしたからだ。

 だが、実際にスライド登りハッチをくぐるとあっさりと中へ入る事が出来た。
 そして機内の狭い通路も座席を薙ぎ倒す事なく進む事が出来た。

 空間スキル同士はお互い干渉し合う事はないのだろうか。

 それは良かったと思う反面、スキル持った人間なら誰でも入れる事になってしまう。悪人や犯罪者も?
 その辺のブレーキ機能はないのだろうか?そう言えばドド達や杏達も普通に俺のボックスに入ってきたな。


「それはさ、おっさんが無意識に俺たちの受け入れを決めたって事じゃね?」

「でも、桜井さんは? 私たちがここに入ってきた時は寝ていたわよ。私たちを受け入れてないわよね?」

「うむ。とすると人間なら誰でも入れてしまうな。まぁ、スキル同士がぶつからないという事はわかった。それと、機体のウィングに近寄った時だが、ウィングの端が潰れた。俺のボックスが翼の金属を押し潰した。そこからも桜井さんの空間はこの胴体部分だけである事がハッキリした」


 俺たちは少なくともこの機内では安全でいられる事がわかった。
 救助が来るまで、救助が来るとは思えないが、しばらくはここでやっていける。
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...