俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

文字の大きさ
87 / 112

87話 移動するにあたり

しおりを挟む
 -----(清見視点)-----

 残ったこちらもやる事は多い。
 こちらから出したルールを向こうが飲んだ場合、こちらは引越しをする事になる。

 それについて、こちらもある程度決めておく。
 兄貴と大島氏と隊長、それ以外のメンバーが昨日と同じ場所に集まった。

 昨日よりメンバーは多い。
 病院関係者。看護師長や看護師さん、産院で働いていた人達、それから入院していたママさん達。現在は全員が出産を無事に終えて、ベビー達は新生児からだいぶ育った。

 一部の看護師さんには赤ん坊の世話をしてもらうので参加は出来ず、後で話を聞いてもらう。
 お母さん達は全員出席している。

 保育園からは園長先生と保育士さんがふたり(男女)。残りは現在子供達の相手だ。

 それからフェリーに居たママさんと老夫婦。
 飛行機に残っていたママさんと足の悪い旦那さんとその奥さん。
 小学生コンビの杏と紬は保育園で子供の世話の手伝いだ。高校生トリオは参加している。

 それと仏間チームから鮎川さんと、消防士と警官と救急隊の3人。
 部屋にある椅子では足らずに前の方は床座りだ。


 今回の遺跡の避難民の話をする。それから合流を考えている事、合流にあたり、メリットデメリットを話す。

 そこまでで意見を出してもらう。


「合流で話は進んでいますが、今ここで思ってる事を出してもらいたい」


 会議の音頭は救急隊員のひとり、年配の方と看護師長がおこなっている。俺は大人しく隅っこで聞いている。


「そんなに大勢……。向こうには空間スキル持ちはいないんですよね?」

「となるとこちら頼みになるのか。スペースは足らんのじゃないですか?」

「そうですね。私たちも今まで通り、ベッドを使えるかはわからないです」

「せっかく今の生活に馴染んできたのに」

「でも、大人が増えるのはちょっと安心じゃない?」

「確かに子供が多すぎて何かあった時の対処がなぁ」

「でも大人でもどんな人かわからないんでしょ?」

「まぁ色んな人はいると思いますよ。近所だって会社だって学校だって色んな人が居るでしょう?」


 看護師長が静かに立ち上がる。


「病棟の個室の赤ちゃん達はママとセットだけど、新生児室の赤ちゃんには親御さんは居ない。お母さんだけ先に退院にされた方が2名。それと保育園もママさんが居ない子供が殆どでしょう。もしも大人が増えて、その子供らのママや家族になってくれる方がいたらいいなと思うんです。もちろん今は私達病院関係者や保育園の方が親代わりですけどね」

「デメリットの食糧問題も、朝出てくる食糧もいつまで頼れるかわからないし、この世界から入手する方法も探るべきだと思う」


 俺はおずおずと手をあげた。


「今、朝再生の食糧が手に入ってる間こそがチャンスじゃないかな。今ならまだ体力に余裕がある。動ける体力があって植物を育てたり狩りをしたりが出来るうちに少しでも、その……」


 あんまり大勢に集中して見られるとどこかに入りたくなる。俺は来ていたパーカーのフードを被り前に引っ張って顔を隠した。


「うん、それに、私たちだって清見さんちで拾ってもらわなければ野宿だったんだし、そんな人がいっぱいいるんだよね。私達はラッキーだったね。寝るとこあってご飯あってトイレもお風呂もあって」


 鮎川さんが俺の後を繋げてくれた。


「そうだねぇ。それに遺跡ってのも気になるし、私はもっと自分のスキルをあげたいなぁ。ねっ? ドド君とクサ君もでしょ? 気になってるよね! 遺跡」

 女子は強し。倉田女子はドドとクサの背中をバンバンと叩いた。
 クサじゃないし、とかモゾモゾ言ってた。


「遺跡避難所に合流するとして、大量の避難民がこっちのトイレに押し寄せてくるのはちょっと気になるわぁ」

「そうですね、向こうだけでなくこちらもルールを決めましょう。病院の廊下にあるトイレ、個室のトイレ、保育園のトイレもある程度のルールを先に決めちゃいましょうか。例えば、ここは男性専用、こっちは女性専用とか。それと掃除当番もしっかりと決めます。掃除当番はトイレに限らずですが」

「お風呂とシャワーも入る日や男女別とか事前に予約制にするとかにしたいです」

「どんどん決めちゃいましょう。じゃあまずはトイレ」

「男性の小は、外にそのエリアを作ってもらいましょう。男性の大、女性用、子供用に分けましょうか」

「病院の1階にある共同トイレ、そこは男女のマークがあるので、そこを男性(大)と、女性用。個室は入院用にしてもドアは開け放して、女性用にしましょう。郁未君ママの個人空間トイレは関係者専用に」

「関係者と言うのは?」

「つまり今ここに居る方で女性ですね。遺跡にいる避難民ではない、と言う事です。勿論、ここに居る関係者も病院のトイレを使用可能です。保育園のトイレは子供と保育士さん専用にしましょう」

「賛成」
「なるほど」
「異論なしです」

「次にお風呂……」

「あ、待ってください。質問があります」


 手をあげたのは病院の個室に入っているママさんのひとりだ。


「個室のトイレを共有にするという事は私たちも病院の個室から出ると言う事でしょうか?」

「あそこ、出るのかぁ。そうよね、私達の待遇が今まで良すぎたのよね」

「でも出てどこに? 子供と一緒に野宿?……出来るかしら」

「師長、新生児室には空きベッドが幾つかあります。個室から新生児用ベッドを運び込めるスペースもあります」

「そうですね。赤ちゃんを一室に集めて、新生児室に近い場所にお母さん達の部屋を作りましょうか」

「うちは豪華が売りの産科です! 個室のソファーとテーブルを退かせばママさん用のベッドを4つ入れられます。個室から4人部屋になっちゃいますがどうでしょう」

「12ある個室から3つの部屋にママさん達に集約していただければ9つが非難民に使えるわね。それに逆にベッドがない方が入れる人数にゆとりが出るわね」

「ソファーやテーブルは廊下に並べれば、廊下も避難所として使えますね」

「では院内の細かい采配は師長さんにお願いしてよろしいですか?」


 おっさん救急隊員の仕切りで話は風呂へと戻された。
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...