俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

文字の大きさ
88 / 112

88話 引き続き風呂

しおりを挟む
 -----(清見視点)-----

 トイレの話に続いて病院の個室の話、そして風呂へと話は進んだ。


「お風呂は病棟の各個室の簡易シャワー、それと保育園にちょっとしたお風呂場、子供専用なのでそれほど広くないですよね。家族風呂程度。一応バスタブは付いてるんでしたっけ?」

「ええ。狭いですけどバスタブ付きです」

「それと、リコちゃんママのバスルーム」

「うちもマンションの家庭用のバスルームなのでそれほど広くないです。親子で入ってギリギリかしら」

「バスタブは2箇所か」

「バスタブ、バスルームは乳幼児と付き添い専用ね。大人は男女ともシャワーオンリーで汚れを落とすくらいね。病棟の各個室のシャワールームを男女に分けて、時間……10分刻みに予約制にしましょう」

「病院の一般入院病棟にあるバスルームは5分刻みでひと患者3枠までの予約で回してるって同期の看護師が言ってましたね。バスタブがあるわけじゃないからゆっくりお風呂タイムを楽しむ人はいないし、入院も長期の人って少ないですから。寝たきりの患者さんや高齢者は清拭がありましたからね」

「そうねぇ。産科が特別よね。全個室シャワートイレ洗面付きユニットだもんね」

「5分でも男は十分だが女性の皆さんは足りないのではないですか?」

「実質洗ってる時間ならシャワー室で10分もらえればいいかなぁ」

「そうね、うち2人目だったんだけど最初の子の時はシャワーも厳しかったわー。目を離すと泣く、抱っこしてないと泣く、置いた途端に泣く」

「ああ、背中スイッチね」

「リコちゃんちのバスルームは、交代制で例えば週一回程度でもバスタブに入れれば天国ね」

「新生児室のベビーのケアは看護師もですがママさん達にも交代でお世話をお願いします。母乳をあげる期間は個室と新生児室の行き来になりますね。となると個室病棟に入る避難民さんは出来れば女性でお願いしたいですね。勿論、入院が必要な病人は別ですが」

「出来ればそうお願いしたいです。授乳中とか胸が張った状態で通る廊下とかに男性がウロウロするのも……ごめんなさい、ちょっと無理かも」

「うん、非常時ってわかってます。絶対に無理を通すつもりはないけど、出来れば……ねっ」


 この話、未婚引きニートが聞いていい話ではない。産婦人科なんて一番遠い存在の人種だぞ、俺。
 膝を抱えて小さく小さく小さくなあれ。

 他の男も同じでは、と思ってチロ見すると、奥さんがいるおっさんらは平然としてる。歴戦の勇者だな。

 看護師(男)と保育士(男)もその世界で揉まれた一流の戦士だ。
 救急隊は、性別を気にしていられないプロの人か。

 他は……、いた!高校生男子。くっ、コイツら興味津々で食いついてやがる。
 俺に味方はいない。


「では、そんな区分けで予約表を作りましょう。次は……」

「トイレ、風呂ときて、他に決めておきたいのは、寝床か」

「そうですね。産院はさきほど申しましたように2階は個室を取りまとめて空きが9室、それと廊下も使えますね。1階は外来診察室、検査室、分娩室、待機室なのですが」


 そこで看護師長さんが白衣を着た男性を見た。産科のドクターだそうだ。出産医者って女性じゃなかったんだ。勇気あるな。


「診察室、検査室、分娩室はそのまま残していただきたいです。避難民の方の診察や治療もあるでしょうし、この先の出産の時にも使用すると思います」

「では、待機室と、本館通路前の空間を避難民を受け入れとするのはどうでしょう」

「それなら問題はないと思います」

「保育園は避難民を受け入れる余裕はありませんね。本来は全員通いですから。うちの自宅は園の裏にあったのですが、この世界に来たのは園だけでしたから……」

「まなちゃんママのキッチンは今もぎゅうぎゅうよね。私達がお邪魔しちゃってるから」

「まなちゃんママのところは現在どなたが?」

「うちのまなとりり、リコちゃんとママ、郁未(いくみ)君とママ、鮎川さんと倉田さんで合計9人がうちのダイニングキッチンに転がって寝てる状態です」

「それは厳しいですな」

「あ、いえ、ダイニングといってもリビングも兼ねているのでまぁ。それでも大人5人と子供4人」

「子供も育っていくから窮屈になる一方ね」


「清見氏の仏間は」


 そろそろ矛先が来そうな気がしてフードから頭を出していた。


「ええと、うちの仏間は、裕理くんは夜はキッチンママさんんとこに預かって貰ってるので」

「ああ、そうだった。うちは子供5人で合計10人だわ」

「はい。そんで、うちは兄貴と俺、大島氏と高校生2人と小学生2人、飛行機にいた4人と船にいた4人、自衛官と警官と救急3人で、合計20人。うち赤ちゃんが2名、としても16畳でごろ寝は修学旅行並みです」

「それは……あらためて聞くときついわね」

「自衛官と警官と救急と俺と兄貴とドドクサの9人は、最近は外にシート敷いて寝てる。この世界の季節がわからないけど、まだ夜間に冷える事がないからそれも出来る。中にいる人も人数分の布団があるわけじゃないから、畳に座布団とかだし」

「これは、避難民の寝床どころじゃないわね」

「うちのキッチンも布団があるわけじゃないから、絨毯に座布団なんです。あ、今は清見くんとこの押入れから布団を分けてもらったんです」

「あ、うちの仏間の押し入れ、布団•座布団が沸いて出ます。食糧以外で朝再生」

「それは初耳ですね。布団系だけですか? 押し入れの物は何でも再生?」

「すみません、報告が遅れて。その、最近わかって現在検証中です。毎朝勝手に自動で増えるわけじゃなくて気が付かなかった。押し入れから出して使っていても増えないです。破いたり損傷したら同じのが押し入れに再生……再生っていうか新品ではないけど同じ物が現れてるってか」


 俺の説明がイマイチだったのか、皆が理解出来ない顔つきだった。のでもう少し細かく説明した。


「ええと、外で寝ていた時に石ころで座布団の布を破いて綿がちょっと出ちゃって。その時は気が付かなかったけど、いつの間にか座布団が一枚多くないかって話になって。その時は数え違いと思ってたけど、布団を木に干していて取り込む時にひっかけちゃって、そしたら翌朝布団が押し入れにあって。これはもう、ソレ?じゃないかと、その後にわざと破いてみたら翌朝増えました。それで今、座布団と布団の増殖計画を実施し始めたところです」

「えっ! 何、それ!」

「めちゃグッジョブ、お手柄よ、清見くん」

「清見さん、凄いですよ、それ」


 あ、恥ずかしい。なんか頑張ってもいないところを褒められるのって両手をあげて喜べないな。


「布団が増えるのって嬉しいわね」

「野宿も寒さと危険が無ければ何とかなりそうね」

「つまり、食糧や水を外に移して再生させているのと似ていますね。有難い空間スキルの恩恵ですね!」


 あ、そうだ、俺、気になってた事があったんだ。


「あの、あの、今ここで話しても仕方がないと思いますが、俺気になってて」

「どうぞ? 話してください」


「遺跡の避難民って空間スキル持ち、いないのかな? 300人くらいの人がいるんでしょ?」
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...