100 / 229
開拓村脱走【第四係】三好今日香
時間は開拓村の社員達の脱走前に巻き戻る
-------(三好今日香 視点)-------
私は三好今日香。
31歳、既婚、現在妊娠四ヶ月。日本で最大手の商社、やまと商事に勤めてた。
やまと商事では都内の営業所をいくつか経由して現在は日比谷にある本社に勤務してた。
本社っていいよね~。ずっと本社に行きたかったんだ。
「本社」って響きもいいけど、それ以上に仕事がラク!働かなくても給料貰えるし、有給も取り放題。仕事中にお茶、お菓子OKとか、さすが本社だわぁ。
噂通りの極楽部署に行けてラッキ~。
営業所で、「先輩にイジメられた」とか「上司にセクハラされた」とか、何度かテキトーにでっち上げて訴えてたら何と本社勤務になれたの。私、カシコイ!
ところが、ひと月ほど前に、突然謎の現象で変な場所、この地に飛ばされた。
「飛ばされた」って転勤じゃないわよ。
いやだ何コレ、SFみたいな?気がついたらここにいました的な何か。謎の力で飛ばされたとしか言いようがないんですけど。
まぁでも飛ばされたのが自分ひとりじゃなくて良かった~。
なんと、うちの部署全員で飛ばされたのよ。やまと商事、事務統括本部、全員よ、全員。もうビックリー。
気を失って目が覚めたら職場の窓の外はジャングル。
でもゆっくり驚いてもいられなかった。変な外国人が非常口から突入してきて、うちらは追い立てられるようにその外国人の街まで連れて行かれたの。
途中で地面に寝させられたり、地面だよ?地面!キャンプとか大っ嫌いなのに、しかもテントも無い地面!
さらにトイレもなくてその辺でしろとかありえないっしょ。したけどぉ。しかも、街まで1日以上かかったよ。徒歩で!
あ、そうだ!中松!あいつズルい!中松あつ子。前に六係で一緒だった女。なんか自分が可愛いとか賢いとか絶対勘違いしてそう。
でも仕事出来なくてホントは飛ばされてきたんじゃね?
で、アイツの何がズルいって、街まで皆んなが徒歩なのに、アイツひとりだけ馬車に乗せてもらってたのよ。ズルくない?
街に到着してすぐにアイツ捕まえて聞いたら、「妊娠の事言ったら乗せてくれた」ですって。
私だって妊娠してるんだけど!何で自分だけラクしようとするかな。
ほんっとやな女。性格ワル!六係にいた時、島にもっと悪口吹き込めばよかったぁ。
で、街に着いた次の日に変な格好の人らの説明があって、『開拓村』と『神殿』の2チームに分かれるように言われた。
『神殿』は1ヶ月以内に仕事と住むとこを自分で見つけないといけないんだって。たった1ヶ月で就職と新居決めるなんて無理っしょ。
もちろん『開拓村』にした。そっちは無期限で家とかご飯とかあるみたいだし。
翌日には村に向けて出発。またしても徒歩でかな~り歩かされたよ。何で車とかバス無いのよ!!!荷物を乗せた…えと、あれ何?馬車?……荷馬車?
馬が荷物乗せたのを引いてるやつ。
「妊娠してるんだけど」ってアピールして、それに乗ろうと思ったけど、「荷物がいっぱいで無理だ」と断られた。
酷い!あと、中松の嘘つき!
まぁ、いいや。村に着いたらゆっくりしよ~。
騙された!何、この村。何もないじゃん。
ボロい木の柵の先に、ボロい木の小屋が数軒。ログハウスとも言えないくらいの、ほんっとぉにボロい小屋。
村の中はアスファルトやコンクリートは無くて、ゴロゴロの石と土の地面。ところどころぬかるんでる。
薄汚れた服の人がボロ小屋から出てきてこっち見てた。
ねぇ、私達の泊まるホテルは?ホテルとは言わないけどせめて旅館はどこ?見た感じそんな建物が全く見えないんだけど。
副部長が村の外国人と何か話したあと、その村人のあとについていった。皆んなも来るようにって言われたのでゾロゾロついて行った。
そこには、木の柱に大きな葉が屋根のように被せてある、原始人の家みたいのがあった。
「今日からここが皆さんの住まいになります」
副部長が言った。
うっそでしょおおお?
「まだ家を建てている途中で柱と雨除けだけですがおいおい造っていくそうです」
え?え?
いや、柱って言っても日本のような綺麗な柱じゃなくて、木の節とかもついてるデコボコと歪んだ木の棒じゃん。あと、葉っぱを重ねただけで雨避けになるの?
絶対水漏れるやつじゃん。床なんか、ただの地面。
おいおい造るって、意味わかんない。てか、その葉っぱ屋根の建物……建物って言いたくないんだけど、雑魚寝で7~8人がギュウギュウに寝るとして、3軒しか見当たらないけど?
うちら全部で80人、こっちに来たんだけど、全然足りないじゃん。
ほぼ家じゃないからどこで寝ても同じだけどぉ。
ボケっと見てたら、すぐ目の前の葉っぱ屋根の下にササっと2係のおばさんらが陣取った。
さすが、普段から“総合職”を傘に着て威張ってるババァだけあるな。抜け目がないわぁ。
慌てて残り二つの葉っぱ屋根を見ると、そっちはもう1係のお婆ちゃん達が陣取ってた。
出遅れた。くっそぉぉ
その夜はかなりの人数があぶれて何もない地面で寝た。
「神殿に残った方が良かったな~。失敗した」
思わず呟いてしまった。
疲れていたからか、地面でもあっという間に寝てた。
翌朝、明るくなって目が覚めたら、身体がいったぁい。ボキボキと腰や肩を回しながら立ち上がり周りを見渡した。
半分くらいはまだ寝ている。起きている人は副部長の近くに集まって何やら話していたので私も近くへ行って耳を傾けた。
情報収集、情報収集。昨日みたいに出遅れたら嫌だからね。
副部長が昨日村人から聞いた話をしていた。
村人もこんなに大人数が来ると思ってなかったらしく、家が間に合わなかったそうだ。
そりゃそうよ。そもそも60人と言われてたのに80人来ちゃったしね。それでも60人でも数日前に言われたばかりで、何とか3軒分の柱と雨除けを建てたって言ってた。
とりあえず雨季に備えて屋根だけでも優先的に作る予定だそう。
これからは開拓村の一員として全員で家造りや畑や狩りをするそうだ。
え……無理じゃん。だってうちら、大手商社の事務員だよ?事務は出来ても大工や農作業なんてやった事ない。
出来ないし、やりたくないよ。
開拓村って家とご飯があってゆっくり暮らせるとこじゃないの?
田舎ライフ満喫って思ってたのに、何かホント、騙されたああああああ。
開拓村での日々が始まった。
外国人のような村人に言われて副部長と男性陣が家造りに参加していた。
4係の男性3名と5係の男性4名と副部長の全部で8人で作業をしている。6係の島係長はそこにいない。
男性陣で唯一働いてない男、島。
島係長は2係のおばちゃんらに混ざってコソコソヒソヒソと何かやってる。
アイツって時代劇の悪代官みたい。
時代劇ってあまり見た事ないけどお笑い芸人がたまにやってるアレ。
『そちも悪よのう』『いえいえお代官様こそ』ってやつ、島係長ってまんまソレなんだよね~。
ん?悪代官じゃなくて「そち」って言われてる方、ずる賢い顔してる奴だね。
最初の頃は副部長は女性陣にも声かけていたけど、あの1係2係が言う事なんて聞くわけがない。
逆に2係の総合職のババァに言い負かされていた。副部長、弱いなぁ。
5係のモンスターお局三人衆は作業しないどころか不平不満が五月蝿い。朝から晩までモンクと悪口言ってる。
あ、ちなみに、私が作業に参加しないのは「妊娠中」だからだよ。
妊婦に無理させたらダメでしょう?
私もぉ、男性陣の作業を手伝いたいんだけどぉ、しょうがないよね。
妊婦なんだもん。というわけで、木陰に座ってリラックスしてまぁーす。
それにしてもお腹空いた。私達が来るときに一緒に運び込まれた食料は1日1食で30日分なんだって。あとは自給自足しろって。
畑作ってもすぐには食べれないらしいし、どうするんだろう。
てか、うちら、畑作ってないよ。今は家…というか葉っぱ屋根の柱を作る方が優先みたい。
女性陣に畑をやってほしいと副部長に懇願されたけど、誰もやらない。私は妊婦だからしょうがないんだよ?畑作業して流産したら大変だもん。
でも、ババア達、畑やれよ!って感じ。
あー、お腹空いた。皆んなは1日1食だけど私は3食貰ってる。
子供流産しちゃうって騒いだら3食にしてくれた。とはいえ、一回が少ないから、マジお腹減ったよぉ。
何だかんだでひと月近くたった。
男性陣が頑張って屋根付き柱を7つ建てた。最初にあった3つと併せて全部で10軒。
とりあえず葉っぱ屋根もあり、いつ雨が降っても大丈夫、らしい。
いや、雨降ったら地面がドロドロだよね。
副部長達はようやく畑作りも始めたみたい。だけどどう見ても80人を養えるサイズの畑じゃないよね。
最初の頃は手伝いに来ていた村人も最近じゃ全く来ないから、自分達でやるしかないみたい。
何か副部長達、ガリガリに痩せてボロボロで今にも死にそう。女性陣もモンクばっか言ってないで手伝ってあげればいいのにぃ。
5係のモンスターお局のひとり、大倉がまた騒いでる。
「頭痒い、お風呂入りたい! 何でお風呂ないの! てか、もう外で寝るのヤダ! ちゃんとした家で寝たい! ベッドで寝たい寝たい寝たい、ご飯食べたい、味噌汁飲みたい、チョコ食べたい、ケーキ食べたい、帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい」
うるさいなぁ。
みんな、そう思ってるよ。でもしかたないでしょう。言いたいけど我慢する。大倉に睨まれると面倒だから。
最近、この村の人に嫌われている気がする。あ、私じゃなくて、やまとのみんながね。
最初の頃に比べて対応が素っ気無いというか雑というか。
まぁ、1、2係のお婆ちゃんや5係の大倉達が嫌われているんだろうけどね。
この村に来た当初、やまとの社員は大体五つのグループに分かれた。
A班は2係の総合職のおばちゃん10人と6係の安田さん達4人の計14名。
安田さんは2係の大塚さんらともとから仲が良いからね。
次にB班。
1係の高齢者グループ、40歳以上から定年間近の38人の大所帯。昔から若手を虐めて追い出してたお婆ちゃんの集まり。若い子追い出すから婆ぁが増える一方、笑える。
C班は、同じ1係でも若手の30~40代が12人。3~40代が若手とかってそれも笑えるよねぇ。まぁ20代でパートなんてしないか。
D班はうちら4係の女子4名。
とは言ってもうちらは別に仲が良くて組んでるわけじゃないけどね。残ったから何となく集まったって感じ。
そして最後E班は男性チーム。
副部長の長谷川さんと4係の青山さんら3人と5係の藤沢さんら4人の合計8人。
ん?全部で76人?あと4人足りない…?ここには80人で来たはず。
あ!そうそう。
5係のお局三人衆、大倉、中谷、小島を忘れてた。
あの五月蝿い3人を忘れるなんて。てかあの3人は協調性なさすぎて、3人それぞれ別個なんだよね。どこのグループにも入れて貰えない。
かと言って3人が組んでるわけでもない。もちろんうちのチームにも入れないよ。
あー、あと、島!
あの時代劇はA~Cを渡り歩いてる感じ。何で男性組に入らないんだろ。力仕事が嫌で逃げ回ってるのかな?
で、最近ちょっと気になってるんだけど。
A班、B班、C班が、何か陰で連み始めたっぽい気がするんだよね?
うちらD班と副部長のE班は除け者チックで、ABC 3チームで何かコソコソしてるの。あ、ABC+お局三人衆+島ね。
気になってマークしてたら、何と脱出計画とか立ててるの!
この村を出て、やまとのビルの事務室に戻るんだって!何それ!ズルい!
島がA B Cを渡り歩いていたのってその計画の根回ししてたのかぁ。
てかさあ、何でうちらを除け者にするの!ひどくない?島、アイツまさに悪役そのもの!ババアどもも酷い!
副部長の耳に入ったら止められると思って、副部長チームに言わないのはわかるけどぉ。うちら4係女子除くの酷くない?
大倉(5係のお局婆あ)を捕まえて直撃した。
「ねえ、知ってるんだけど、脱出計画立ててるよね? 何でうちのチームに声かけてくれないの。副部長にバラそっかなぁ」
大倉はマズイという顔をしたあと、しどろもどろに言い訳を始めた。
「だってさー4係は村に馴染んでるじゃん? 男性陣も女性陣も楽しそうに畑とかやってるし」
楽しそうかは知らんけど、確かに水戸さん達は最近毎日、畑でなんかやってるな。
「ふ~ん、ま、いっか、この事黙っておくから私も一緒に行くからね」
「え…」
「やっぱ床のある生活したいよね~。事務室! 久しぶり! あ、防災用の食糧とか水とかあるんじゃない? 綺麗な水で頭洗いたい~~。で、いつ出発予定?」
「…………ああ、えと、明日の……正午、なんだけど」
「わかった。明日、正午ね」
「絶対言っちゃダメだからね。特に副部長には」
「わかってるよ」
「副部長達に気づかれないように、正午までどこかに隠れててもらえる?」
「うん、わかった。で、正午にどこ集合?」
「………村の門に集合」
お昼を過ぎた、村の門前…。
誰も来なかった。
そしてABC班は消えた。私は騙され、置いて行かれたのよ。
-------(三好今日香 視点)-------
私は三好今日香。
31歳、既婚、現在妊娠四ヶ月。日本で最大手の商社、やまと商事に勤めてた。
やまと商事では都内の営業所をいくつか経由して現在は日比谷にある本社に勤務してた。
本社っていいよね~。ずっと本社に行きたかったんだ。
「本社」って響きもいいけど、それ以上に仕事がラク!働かなくても給料貰えるし、有給も取り放題。仕事中にお茶、お菓子OKとか、さすが本社だわぁ。
噂通りの極楽部署に行けてラッキ~。
営業所で、「先輩にイジメられた」とか「上司にセクハラされた」とか、何度かテキトーにでっち上げて訴えてたら何と本社勤務になれたの。私、カシコイ!
ところが、ひと月ほど前に、突然謎の現象で変な場所、この地に飛ばされた。
「飛ばされた」って転勤じゃないわよ。
いやだ何コレ、SFみたいな?気がついたらここにいました的な何か。謎の力で飛ばされたとしか言いようがないんですけど。
まぁでも飛ばされたのが自分ひとりじゃなくて良かった~。
なんと、うちの部署全員で飛ばされたのよ。やまと商事、事務統括本部、全員よ、全員。もうビックリー。
気を失って目が覚めたら職場の窓の外はジャングル。
でもゆっくり驚いてもいられなかった。変な外国人が非常口から突入してきて、うちらは追い立てられるようにその外国人の街まで連れて行かれたの。
途中で地面に寝させられたり、地面だよ?地面!キャンプとか大っ嫌いなのに、しかもテントも無い地面!
さらにトイレもなくてその辺でしろとかありえないっしょ。したけどぉ。しかも、街まで1日以上かかったよ。徒歩で!
あ、そうだ!中松!あいつズルい!中松あつ子。前に六係で一緒だった女。なんか自分が可愛いとか賢いとか絶対勘違いしてそう。
でも仕事出来なくてホントは飛ばされてきたんじゃね?
で、アイツの何がズルいって、街まで皆んなが徒歩なのに、アイツひとりだけ馬車に乗せてもらってたのよ。ズルくない?
街に到着してすぐにアイツ捕まえて聞いたら、「妊娠の事言ったら乗せてくれた」ですって。
私だって妊娠してるんだけど!何で自分だけラクしようとするかな。
ほんっとやな女。性格ワル!六係にいた時、島にもっと悪口吹き込めばよかったぁ。
で、街に着いた次の日に変な格好の人らの説明があって、『開拓村』と『神殿』の2チームに分かれるように言われた。
『神殿』は1ヶ月以内に仕事と住むとこを自分で見つけないといけないんだって。たった1ヶ月で就職と新居決めるなんて無理っしょ。
もちろん『開拓村』にした。そっちは無期限で家とかご飯とかあるみたいだし。
翌日には村に向けて出発。またしても徒歩でかな~り歩かされたよ。何で車とかバス無いのよ!!!荷物を乗せた…えと、あれ何?馬車?……荷馬車?
馬が荷物乗せたのを引いてるやつ。
「妊娠してるんだけど」ってアピールして、それに乗ろうと思ったけど、「荷物がいっぱいで無理だ」と断られた。
酷い!あと、中松の嘘つき!
まぁ、いいや。村に着いたらゆっくりしよ~。
騙された!何、この村。何もないじゃん。
ボロい木の柵の先に、ボロい木の小屋が数軒。ログハウスとも言えないくらいの、ほんっとぉにボロい小屋。
村の中はアスファルトやコンクリートは無くて、ゴロゴロの石と土の地面。ところどころぬかるんでる。
薄汚れた服の人がボロ小屋から出てきてこっち見てた。
ねぇ、私達の泊まるホテルは?ホテルとは言わないけどせめて旅館はどこ?見た感じそんな建物が全く見えないんだけど。
副部長が村の外国人と何か話したあと、その村人のあとについていった。皆んなも来るようにって言われたのでゾロゾロついて行った。
そこには、木の柱に大きな葉が屋根のように被せてある、原始人の家みたいのがあった。
「今日からここが皆さんの住まいになります」
副部長が言った。
うっそでしょおおお?
「まだ家を建てている途中で柱と雨除けだけですがおいおい造っていくそうです」
え?え?
いや、柱って言っても日本のような綺麗な柱じゃなくて、木の節とかもついてるデコボコと歪んだ木の棒じゃん。あと、葉っぱを重ねただけで雨避けになるの?
絶対水漏れるやつじゃん。床なんか、ただの地面。
おいおい造るって、意味わかんない。てか、その葉っぱ屋根の建物……建物って言いたくないんだけど、雑魚寝で7~8人がギュウギュウに寝るとして、3軒しか見当たらないけど?
うちら全部で80人、こっちに来たんだけど、全然足りないじゃん。
ほぼ家じゃないからどこで寝ても同じだけどぉ。
ボケっと見てたら、すぐ目の前の葉っぱ屋根の下にササっと2係のおばさんらが陣取った。
さすが、普段から“総合職”を傘に着て威張ってるババァだけあるな。抜け目がないわぁ。
慌てて残り二つの葉っぱ屋根を見ると、そっちはもう1係のお婆ちゃん達が陣取ってた。
出遅れた。くっそぉぉ
その夜はかなりの人数があぶれて何もない地面で寝た。
「神殿に残った方が良かったな~。失敗した」
思わず呟いてしまった。
疲れていたからか、地面でもあっという間に寝てた。
翌朝、明るくなって目が覚めたら、身体がいったぁい。ボキボキと腰や肩を回しながら立ち上がり周りを見渡した。
半分くらいはまだ寝ている。起きている人は副部長の近くに集まって何やら話していたので私も近くへ行って耳を傾けた。
情報収集、情報収集。昨日みたいに出遅れたら嫌だからね。
副部長が昨日村人から聞いた話をしていた。
村人もこんなに大人数が来ると思ってなかったらしく、家が間に合わなかったそうだ。
そりゃそうよ。そもそも60人と言われてたのに80人来ちゃったしね。それでも60人でも数日前に言われたばかりで、何とか3軒分の柱と雨除けを建てたって言ってた。
とりあえず雨季に備えて屋根だけでも優先的に作る予定だそう。
これからは開拓村の一員として全員で家造りや畑や狩りをするそうだ。
え……無理じゃん。だってうちら、大手商社の事務員だよ?事務は出来ても大工や農作業なんてやった事ない。
出来ないし、やりたくないよ。
開拓村って家とご飯があってゆっくり暮らせるとこじゃないの?
田舎ライフ満喫って思ってたのに、何かホント、騙されたああああああ。
開拓村での日々が始まった。
外国人のような村人に言われて副部長と男性陣が家造りに参加していた。
4係の男性3名と5係の男性4名と副部長の全部で8人で作業をしている。6係の島係長はそこにいない。
男性陣で唯一働いてない男、島。
島係長は2係のおばちゃんらに混ざってコソコソヒソヒソと何かやってる。
アイツって時代劇の悪代官みたい。
時代劇ってあまり見た事ないけどお笑い芸人がたまにやってるアレ。
『そちも悪よのう』『いえいえお代官様こそ』ってやつ、島係長ってまんまソレなんだよね~。
ん?悪代官じゃなくて「そち」って言われてる方、ずる賢い顔してる奴だね。
最初の頃は副部長は女性陣にも声かけていたけど、あの1係2係が言う事なんて聞くわけがない。
逆に2係の総合職のババァに言い負かされていた。副部長、弱いなぁ。
5係のモンスターお局三人衆は作業しないどころか不平不満が五月蝿い。朝から晩までモンクと悪口言ってる。
あ、ちなみに、私が作業に参加しないのは「妊娠中」だからだよ。
妊婦に無理させたらダメでしょう?
私もぉ、男性陣の作業を手伝いたいんだけどぉ、しょうがないよね。
妊婦なんだもん。というわけで、木陰に座ってリラックスしてまぁーす。
それにしてもお腹空いた。私達が来るときに一緒に運び込まれた食料は1日1食で30日分なんだって。あとは自給自足しろって。
畑作ってもすぐには食べれないらしいし、どうするんだろう。
てか、うちら、畑作ってないよ。今は家…というか葉っぱ屋根の柱を作る方が優先みたい。
女性陣に畑をやってほしいと副部長に懇願されたけど、誰もやらない。私は妊婦だからしょうがないんだよ?畑作業して流産したら大変だもん。
でも、ババア達、畑やれよ!って感じ。
あー、お腹空いた。皆んなは1日1食だけど私は3食貰ってる。
子供流産しちゃうって騒いだら3食にしてくれた。とはいえ、一回が少ないから、マジお腹減ったよぉ。
何だかんだでひと月近くたった。
男性陣が頑張って屋根付き柱を7つ建てた。最初にあった3つと併せて全部で10軒。
とりあえず葉っぱ屋根もあり、いつ雨が降っても大丈夫、らしい。
いや、雨降ったら地面がドロドロだよね。
副部長達はようやく畑作りも始めたみたい。だけどどう見ても80人を養えるサイズの畑じゃないよね。
最初の頃は手伝いに来ていた村人も最近じゃ全く来ないから、自分達でやるしかないみたい。
何か副部長達、ガリガリに痩せてボロボロで今にも死にそう。女性陣もモンクばっか言ってないで手伝ってあげればいいのにぃ。
5係のモンスターお局のひとり、大倉がまた騒いでる。
「頭痒い、お風呂入りたい! 何でお風呂ないの! てか、もう外で寝るのヤダ! ちゃんとした家で寝たい! ベッドで寝たい寝たい寝たい、ご飯食べたい、味噌汁飲みたい、チョコ食べたい、ケーキ食べたい、帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい」
うるさいなぁ。
みんな、そう思ってるよ。でもしかたないでしょう。言いたいけど我慢する。大倉に睨まれると面倒だから。
最近、この村の人に嫌われている気がする。あ、私じゃなくて、やまとのみんながね。
最初の頃に比べて対応が素っ気無いというか雑というか。
まぁ、1、2係のお婆ちゃんや5係の大倉達が嫌われているんだろうけどね。
この村に来た当初、やまとの社員は大体五つのグループに分かれた。
A班は2係の総合職のおばちゃん10人と6係の安田さん達4人の計14名。
安田さんは2係の大塚さんらともとから仲が良いからね。
次にB班。
1係の高齢者グループ、40歳以上から定年間近の38人の大所帯。昔から若手を虐めて追い出してたお婆ちゃんの集まり。若い子追い出すから婆ぁが増える一方、笑える。
C班は、同じ1係でも若手の30~40代が12人。3~40代が若手とかってそれも笑えるよねぇ。まぁ20代でパートなんてしないか。
D班はうちら4係の女子4名。
とは言ってもうちらは別に仲が良くて組んでるわけじゃないけどね。残ったから何となく集まったって感じ。
そして最後E班は男性チーム。
副部長の長谷川さんと4係の青山さんら3人と5係の藤沢さんら4人の合計8人。
ん?全部で76人?あと4人足りない…?ここには80人で来たはず。
あ!そうそう。
5係のお局三人衆、大倉、中谷、小島を忘れてた。
あの五月蝿い3人を忘れるなんて。てかあの3人は協調性なさすぎて、3人それぞれ別個なんだよね。どこのグループにも入れて貰えない。
かと言って3人が組んでるわけでもない。もちろんうちのチームにも入れないよ。
あー、あと、島!
あの時代劇はA~Cを渡り歩いてる感じ。何で男性組に入らないんだろ。力仕事が嫌で逃げ回ってるのかな?
で、最近ちょっと気になってるんだけど。
A班、B班、C班が、何か陰で連み始めたっぽい気がするんだよね?
うちらD班と副部長のE班は除け者チックで、ABC 3チームで何かコソコソしてるの。あ、ABC+お局三人衆+島ね。
気になってマークしてたら、何と脱出計画とか立ててるの!
この村を出て、やまとのビルの事務室に戻るんだって!何それ!ズルい!
島がA B Cを渡り歩いていたのってその計画の根回ししてたのかぁ。
てかさあ、何でうちらを除け者にするの!ひどくない?島、アイツまさに悪役そのもの!ババアどもも酷い!
副部長の耳に入ったら止められると思って、副部長チームに言わないのはわかるけどぉ。うちら4係女子除くの酷くない?
大倉(5係のお局婆あ)を捕まえて直撃した。
「ねえ、知ってるんだけど、脱出計画立ててるよね? 何でうちのチームに声かけてくれないの。副部長にバラそっかなぁ」
大倉はマズイという顔をしたあと、しどろもどろに言い訳を始めた。
「だってさー4係は村に馴染んでるじゃん? 男性陣も女性陣も楽しそうに畑とかやってるし」
楽しそうかは知らんけど、確かに水戸さん達は最近毎日、畑でなんかやってるな。
「ふ~ん、ま、いっか、この事黙っておくから私も一緒に行くからね」
「え…」
「やっぱ床のある生活したいよね~。事務室! 久しぶり! あ、防災用の食糧とか水とかあるんじゃない? 綺麗な水で頭洗いたい~~。で、いつ出発予定?」
「…………ああ、えと、明日の……正午、なんだけど」
「わかった。明日、正午ね」
「絶対言っちゃダメだからね。特に副部長には」
「わかってるよ」
「副部長達に気づかれないように、正午までどこかに隠れててもらえる?」
「うん、わかった。で、正午にどこ集合?」
「………村の門に集合」
お昼を過ぎた、村の門前…。
誰も来なかった。
そしてABC班は消えた。私は騙され、置いて行かれたのよ。
あなたにおすすめの小説
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
俺達YOEEEEEE?けど異世界満喫したいよね?
くまの香
ファンタジー
異世界転移したニートとサラリーマン、はたして異世界を満喫できるのか?
ある日突然地球を襲った異変により異世界へと来てしまった人々。あれから三年、はたして人見知りニートと疲れたサラリーマンは異世界でどう過ごしているのか。
シーズン1『俺よえー、異世界?』、シーズン2『俺よえー、迷宮?』、そして本編シーズン3は『俺よえー、満喫してる?』
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。