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224話 噛まれておくべきか②
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俺らは一旦解散した。各拠点で点滅者とゾンビ化についての注意動画を何度も流していた。
もちろん道内中のネットでも拡散している。
タウさんが自衛隊のショーグンらと話し合った時、やはり同じところで議論が紛糾したらしい。隠すか打ち明けるか。
だが隠しても結局漏れて一般市民の中に生活魔法を欲して必ず『隠れ点滅』が現れるだろうと。
いずれ感染は起こりゾンビ化に発展する。隠しても止められない。
それならば、情報を入手出来る環境に居る者達だけでも、正しい情報と危険性を伝えようと言う意見にまとまったそうだ。
怖いのは、一般市民の中の『独り』で居る者だ。本人が名乗り出るタイミングを間違えば、即ゾンビである。
集団はお互いの目があるからまだ間に合うかもしれないが、集団の中の孤立はソレが怖い。ネットでもそこのところをしっかり流してはいるらしい。
道内はまだいい。地上がしっかり動き出している。駐屯地の自衛隊や警察、消防も、今や活動している。
点滅かどうかは、然る場所のマップ使用者でないと判断出来ない。なので第一段階の症状として『発熱』『倦怠感』『目の充血』で判断を各自に委ねているそうだ。
この大災害の世の中だ、発熱や倦怠感は多くの者がその症状を訴えている。なので『目の充血』を決め手にしたそうだ。
それらの症状を訴えた者の家族に、第二感染として症状が出た時のために連絡先を渡しているそうだ。これもスマホが繋がる北海道ならではだな。
勿論、茨城もその辺りは一緒だ。
問題は、それ以外の地。ただし、カンさんの小型基地を置いた県は繋がっているので情報は流せる。だが、地上を動ける機関がない。
茨城か北海道から出向く事になるが、テレポートスクロールがない。ブックマークも決まった数カ所のみで、市民はそこまでたどり着ける足がない。
基地を設置した県、青森、岩手、宮城、福島、新潟、栃木、群馬、埼玉、東京(八王子)は、北海道と通信が繋がっている。山形、秋田は隣県に近い場所は繋がるらしい。
自衛隊が積極的にそれらの県内の駐屯地と連絡をとる活動をしているそうだ。
そして愛知。愛知は県内の通信は繋がっているが、茨城や北海道とは難しい。稀に繋がる程度だ。
どんなにネットに「助けて」と書き込んでも、こっちには届かないんだ。
一応愛知にもゾンビ化の情報は流したそうだ。タウさんに言われて自衛隊のリアステ持ちを名古屋へ運び、ブックマークをして貰った。
ブックマークをしてもテレポートスクロールが無ければ結局役には立たないのだが……。サンバとフジだけでもテレポートリングがあるからなんとかするだろう。
そこら辺は俺らが考える事ではない。自衛隊の仕事だ。
現在、心配されているのが、『点滅者』ではない『発熱、倦怠感、目の充血』の人達だ。
情報が出回った事でそれらの症状がたまたま出ただけで周りから排除される危険性がある。悪ければ殺されるかもしれない。
殺されるのを恐れて隠したり隠れたり、その中に本当の感染者が居てゾンビ化してしまう。
結局、全人類(日本人)を助けるのは無理だな。
それにそもそもこの情報が行き渡らない地域では既にゾンビが発生しているだろう。
今はポツポツと発生しているゾンビも、どこかのタイミングで大量にゾンビ発生が起こるのは避けられない。
ゾンビの大量発生は避けられない、なら俺は、今俺が出来る事をするしかない。
朝の『ゆる体操』と『大仏ツアー』だ。
あ、ちょっと前までは『ふにゃ体操』と言ってたのだが、締まりがないと言われて『ゆる体操』に改められた。
体操とツアーの後は、会議室で恒例の会議だ。
俺は学級委員長だが座っていればいい。会議は『議長』が進めてくれる。
因みに『議長』は親戚班の春ちゃんだ。キッズ班から翔太も参加している。
「まず、緊急や変事について報告をお願いします」
「1班 カーチーム 加瀬 異常なしです」
「2班 バイカーチーム 球磨 異常なし」
「3班 アーチャーチーム 奈良 異常なしです」
「4班 大型船チーム 河島 異常なしです」
「5班 小型船チーム 烏川 異常ありません」
「キッズ班 第八世代 翔太!異常ないです!」
何、第八世代ってカッコいいな。今時の子だなぁ。
「親戚班 鹿野一族 春政 異常なし」
春ちゃん、議長と班長を兼ねてるのか。ってか、鹿野一族って何、恥かしいぞ?
「香、僕だって恥ずかしいんですよ。わかりやすいからこれにしましたが、班長を良治さんに押し付……変わってもらおうと思ってます」
うんうん、そうだな。それがいいな。親戚班って言い方もイマイチだな。
「じゃ、そのあたりは班内で話し合ってくれ」
「緊急事項がなければ、次は報告に入らせていただきます」
ホワイトボードに地図が映し出された。
あ、ちょっとカッコいい会社の会議みたいだな。
俺の派遣先のやまと商事もかなりの大手で、デカイ会議室のスクリーンにはパソコンの画面が映し出されて、説明する人が棒で何やら印を付けたり、パソコン操作する人と画面で紹介する人のペアで発表をしていた。
だが、俺がいた部署は20年以上時代に取り残されているようなとこだったので、会議にはいつも分厚い紙のプリントを配っていた。誰も読まないそれをいつも作らされていたっけ。もったいな。
他部署にヘルプで入って驚いたなんの。同じ会社でここまで違うのか。
そして、今、目の前には、ふふふ。って、俺が操作をするわけではない。マルクとキヨカのペアだ。凄いな、ふたりとも。
まぁ、キヨカはバリバリのバリキャり?(バリキャリの意味は知らん)だからともかく、マルクがどんどん賢くなっていく。
先日、ミレさんと何かやってると思ったら、これの勉強会だったんだな。パパは息子の成長が嬉しいのと、置いて行かれてさみしいのがチョッピリだ。
「現在、苫小牧拠点の外周に地元民達が集まっています」
春ちゃんがそこまで話すと画面が切り替わり、拠点と外回りを上空から写した写真に変わった。
「今回の『点滅化』『ゾンビ化』にあたり、1番の懸念事項である外周ですが、自衛隊の協力をいただける事になりました。札幌駐屯地苫小牧出張所からと、白老駐屯地からです」
「うちは苫小牧より白老町の方が近いからな」
「はい。自衛隊の方が検問所を作りそこに交代で駐屯していただけるとの事です」
「それは助かる。この先起こるゾンビ化は防げないが、なるべく被害を抑えたい」
「暫くは拠点民に強制の作業が発生すると思います。各班でしっかり意思疎通をお願いします」
「こんな時代だからなぁ、それにうちらは随分恵まれている」
「恵まれすぎてますよ」
強制の作業とは何だろう?
うちの拠点、うちの血盟で何かする事あったっけ?
「みんなで何かするんか?」
「香、普通の事ですよ。この拠点を会社に例えると、社員の皆さんに働いてもらう。香はよく『うちはホワイトだから』と言ってますよね? ホワイト企業だから働かなくていいって事じゃないです。ホワイトでも最低限の仕事はしてもらう」
なるほど、確かにそうだな。
「これから起こるゾンビ化を最小限に食い止めるのに必要な事、それはいち早く『点滅者』の発見です。では、点滅者の発見に必要な事は何か」
スクリーンに春ちゃんが話す言葉が書き映されていく。マルクがパソコンに入力をしているのがスクリーンに映るようだ。
「点滅者発見に必要なのは、第一に『リアルステータスのマップ』です。第二に発見する場所、検問所。第三に検問所を通ってもらう仕組み、流れです」
①リアルステータス持ち
②検問所
③検問システム
と、スクリーンに映し出された。なるほどわかりやすい。
「②の検問所は既に出来ています。③の検問システムも自衛隊が考えてくださいました」
「どんなん?」
「はい、検問済みの方には証明を発行しています」
「けど、今日は点灯でも明日点滅になるかもしれないだろ?」
「はい。なので、3日おきの検問を義務付けているそうです」
「あのね、前にお父さんが朝のらじお体操の時にハンコ押してくれたでしょ? あれだよ?」
「前の体操? ふにゃ…くにゃ、ぷる……ゆる体操、ゆる体操か? ハンコなんて押してないぞ?」
「違うよ、お父さん、ムゥナの時朝に体操してたでしょ」
「ああ、ラジオ体操の、夏休みにハンコ貰うあれか」
「現在、拠点の外回りでソレを配っています。昔は夏休みのラジオ体操で毎朝ハンコが欲しくて通いましたね」
「ああ、休まず40日間参加すると、確か何か貰えたんだよな?」
「はい、拠点の外周でも3日毎の検問のたびに印を押して、印がいっぱいになると参加賞をお渡しする事なっています。少し前に参加賞の件で香に相談したのですが覚えていないですか?」
「ああ! あれ、子供のラジオ体操かと思ってた」
「大丈夫ですか? 参加者全員ですのでかなりの数になりますよ?」
「大丈夫大丈夫。……と、うっかり使っちまうとあれだから、商品は自衛隊員に預けておくか。マップ出来るやつが来るんだからアイテムボックスも当然あるよな」
「はい。では、ある程度の商品を先渡しで自衛隊に預かっていただきましょう」
やはり頼れる仲間がいるのはラクだ。自分で全てを考えるのは難しい。特に俺のようにボンヤリ生きるのが好きな人間には一日中考えていると直ぐに脳みそが休止してしまう。
あの大災害から、中々ゆっくり出来る日が訪れない。俺は神様に聞きそびれてしまったが、タウさん達が聞いた話によると、地球の未来は大変だと言ってたそうだからな。
隕石が降り注いで、衝撃波が来て、地震が来て、津波が来て、火山が噴火して、火山灰が降り注いで、それだけでも未曾有の大災害なのに。
ドサクサに紛れて木は動くし、獣は凶暴になるし、挙句にゾンビ化だ。ゾンビ化は獣だけでなく人間含む動物全般だろうなぁ。
もしかすると魚……もだろうか。
生き残るのに精一杯で、生き続けるのもやっとで、心がへし折れてる人も多いだろう。
頑張っても頑張ってももっと頑張らないといけないって辛すぎるな。だから、うちは出来る限りホワイトにするぞ!
「はい。香の言う通り、僕達は頑張りますが、無理だなと思ったら拠点に籠りましょう。全員は救えない。救えない人を見てはいけない。自分が救いたい人だけを見ましょう」
春ちゃんの言葉にふと子供時代が頭をよぎった。もしかして春ちゃんは『鹿野家』の救いようがない人達は見ずにいつも俺だけを救っていてくれたのだろうか。
うん、絶対にそうだ。
マルクがクイクイと俺の袖を引っ張り、タオルを渡してきた。
「……春ちゃん、遅くなって本当にすまん」
「バカですね、香は。そんな事少しも気にしてないですよ」
俺はタオルで目元をゴシゴシと擦った。
「①のリアルステータス持ちですが、各班の状況はどうでしょうか」
春ちゃんが皆をみまわした。俺も同じように見る。すると翔太が手を挙げた。
「第八世代は全員出た」
え……、聞き違いかな?……何が出た?てか、第八ってキッズ班だよな?
周りも息を飲んでいた。
「……翔太君、第八世代全員とは?名前をあげてもらえますか?」
「うん、うーんと、僕と、洸太と、朝陽と湊斗の4人。あ、僕は前から出てたけど」
「やったね、翔ちゃん! 流石班長!」
「はやっ、早くねぇか……マジか」
やはり子供は色んな意味で吸収が早いのだろうか。ゲームも凄いもんな。
「カオさん、うちのチームはゲームも体操も全部精一杯やってるから!」
翔太がフンスと鼻息荒く自慢げだった。
生活魔法と間違えているのではと春ちゃんが聞き直したが、リアルステータスの表示だそうだ。因みに生活魔法はその2日前に『水』『火』は出せるようになっていた。
「子供は身体も成長期って事もあるし、神様の祝福だか魔素だかも吸収しまくってるかも知れんな」
「そうですね。しかし、大人もモタモタしていられないですね。他のチームはいかがです?」
「うちのメンバーはまだ日が浅いからなぁ」
「うちもです」
カセナラクマのチームは現在リアルステータスは班長のみのままだ。
「ふんっ! ゔぅん!!! すてぇぇぇぇたすっっっ!」
部屋の隅っこでウカワが身体を折り曲げて力んでいた。……うんちか。
「出た出た出たああああああああ」
うんちが?
「え、おまっ、まさか!」
河島も部屋の隅で力み出した。トイレ行けよ!そこでするなよ!
「俺も出たあああああ!やったぁぁぁぁぁ!」
んだよ、便秘だったのかよ。良かったな、出て。でもそこトイレじゃないから!
「カオさん、ステータスですよ、烏川さんと河島さん、ステータスが出てなかったから」
あれ、そうだったか?もうとっくに出てるものと勘違いしてた。
「実は僕も先程表示されました。リアルステータスです。香、フレンド登録しましょう」
春ちゃんも?早くないか?驚いたな。
「今この部屋に居る者は全員リアルステータスが表示されている、班長はリアルステータス持ちである、でよろしいでしょうか? それからキッズ班の皆さんも呼んで全員でフレンド登録をしましょう」
「おう、そうだな。翔太、班のメンバーを呼んでくれるか?」
「はーい。…………今、ゲーム室だって」
「じゃ、迎えに行ってくるわ」
俺はテレポートでゲーム室に行き、そこに居た洸太達を連れて会議室に戻った。
全員でお互いにフレンド登録を行い、お試し念話やメールをしている。落ち着いたところで子供らをゲーム室へ送っていった。
「点滅者やゾンビ化が急激に進むのと同じで、もしかすると生活魔法やリアルステータスも増え始めている気がします」
「そうだな。タウさんへ連絡をしておいてくれ」
「はい。この会議の内容はタウさんのパソコンへもリアルタイムで流れています」
そうなんだ……俺の機械化は、黒電話で止まってるかもしれん。スマホどころかガラ携も使いこなせていなかったし。パソコンもゲームだけだったしな。
職場のパソコンもエクセルで使うのが殆どで、そもそも社員以外は通信機能が使えなくなっていたからな。
今時のSNSとか全くやった事はない。もっと色々やっておくべきだったな。
「大丈夫、周りで誰かが出来れば問題ありません。香はそのままで十分みんな頼りにしています。それと会議の議事録は、他の拠点にも同時に流れています。見る見ないは先方次第で、緊急時はマークが表示されます」
「あ、じゃあ逆にうちにも他の拠点の会議とか流れてきてるの?」
「はい、来ていますね。時間があれば僕とキヨカさんがチェックしています。
もちろん道内中のネットでも拡散している。
タウさんが自衛隊のショーグンらと話し合った時、やはり同じところで議論が紛糾したらしい。隠すか打ち明けるか。
だが隠しても結局漏れて一般市民の中に生活魔法を欲して必ず『隠れ点滅』が現れるだろうと。
いずれ感染は起こりゾンビ化に発展する。隠しても止められない。
それならば、情報を入手出来る環境に居る者達だけでも、正しい情報と危険性を伝えようと言う意見にまとまったそうだ。
怖いのは、一般市民の中の『独り』で居る者だ。本人が名乗り出るタイミングを間違えば、即ゾンビである。
集団はお互いの目があるからまだ間に合うかもしれないが、集団の中の孤立はソレが怖い。ネットでもそこのところをしっかり流してはいるらしい。
道内はまだいい。地上がしっかり動き出している。駐屯地の自衛隊や警察、消防も、今や活動している。
点滅かどうかは、然る場所のマップ使用者でないと判断出来ない。なので第一段階の症状として『発熱』『倦怠感』『目の充血』で判断を各自に委ねているそうだ。
この大災害の世の中だ、発熱や倦怠感は多くの者がその症状を訴えている。なので『目の充血』を決め手にしたそうだ。
それらの症状を訴えた者の家族に、第二感染として症状が出た時のために連絡先を渡しているそうだ。これもスマホが繋がる北海道ならではだな。
勿論、茨城もその辺りは一緒だ。
問題は、それ以外の地。ただし、カンさんの小型基地を置いた県は繋がっているので情報は流せる。だが、地上を動ける機関がない。
茨城か北海道から出向く事になるが、テレポートスクロールがない。ブックマークも決まった数カ所のみで、市民はそこまでたどり着ける足がない。
基地を設置した県、青森、岩手、宮城、福島、新潟、栃木、群馬、埼玉、東京(八王子)は、北海道と通信が繋がっている。山形、秋田は隣県に近い場所は繋がるらしい。
自衛隊が積極的にそれらの県内の駐屯地と連絡をとる活動をしているそうだ。
そして愛知。愛知は県内の通信は繋がっているが、茨城や北海道とは難しい。稀に繋がる程度だ。
どんなにネットに「助けて」と書き込んでも、こっちには届かないんだ。
一応愛知にもゾンビ化の情報は流したそうだ。タウさんに言われて自衛隊のリアステ持ちを名古屋へ運び、ブックマークをして貰った。
ブックマークをしてもテレポートスクロールが無ければ結局役には立たないのだが……。サンバとフジだけでもテレポートリングがあるからなんとかするだろう。
そこら辺は俺らが考える事ではない。自衛隊の仕事だ。
現在、心配されているのが、『点滅者』ではない『発熱、倦怠感、目の充血』の人達だ。
情報が出回った事でそれらの症状がたまたま出ただけで周りから排除される危険性がある。悪ければ殺されるかもしれない。
殺されるのを恐れて隠したり隠れたり、その中に本当の感染者が居てゾンビ化してしまう。
結局、全人類(日本人)を助けるのは無理だな。
それにそもそもこの情報が行き渡らない地域では既にゾンビが発生しているだろう。
今はポツポツと発生しているゾンビも、どこかのタイミングで大量にゾンビ発生が起こるのは避けられない。
ゾンビの大量発生は避けられない、なら俺は、今俺が出来る事をするしかない。
朝の『ゆる体操』と『大仏ツアー』だ。
あ、ちょっと前までは『ふにゃ体操』と言ってたのだが、締まりがないと言われて『ゆる体操』に改められた。
体操とツアーの後は、会議室で恒例の会議だ。
俺は学級委員長だが座っていればいい。会議は『議長』が進めてくれる。
因みに『議長』は親戚班の春ちゃんだ。キッズ班から翔太も参加している。
「まず、緊急や変事について報告をお願いします」
「1班 カーチーム 加瀬 異常なしです」
「2班 バイカーチーム 球磨 異常なし」
「3班 アーチャーチーム 奈良 異常なしです」
「4班 大型船チーム 河島 異常なしです」
「5班 小型船チーム 烏川 異常ありません」
「キッズ班 第八世代 翔太!異常ないです!」
何、第八世代ってカッコいいな。今時の子だなぁ。
「親戚班 鹿野一族 春政 異常なし」
春ちゃん、議長と班長を兼ねてるのか。ってか、鹿野一族って何、恥かしいぞ?
「香、僕だって恥ずかしいんですよ。わかりやすいからこれにしましたが、班長を良治さんに押し付……変わってもらおうと思ってます」
うんうん、そうだな。それがいいな。親戚班って言い方もイマイチだな。
「じゃ、そのあたりは班内で話し合ってくれ」
「緊急事項がなければ、次は報告に入らせていただきます」
ホワイトボードに地図が映し出された。
あ、ちょっとカッコいい会社の会議みたいだな。
俺の派遣先のやまと商事もかなりの大手で、デカイ会議室のスクリーンにはパソコンの画面が映し出されて、説明する人が棒で何やら印を付けたり、パソコン操作する人と画面で紹介する人のペアで発表をしていた。
だが、俺がいた部署は20年以上時代に取り残されているようなとこだったので、会議にはいつも分厚い紙のプリントを配っていた。誰も読まないそれをいつも作らされていたっけ。もったいな。
他部署にヘルプで入って驚いたなんの。同じ会社でここまで違うのか。
そして、今、目の前には、ふふふ。って、俺が操作をするわけではない。マルクとキヨカのペアだ。凄いな、ふたりとも。
まぁ、キヨカはバリバリのバリキャり?(バリキャリの意味は知らん)だからともかく、マルクがどんどん賢くなっていく。
先日、ミレさんと何かやってると思ったら、これの勉強会だったんだな。パパは息子の成長が嬉しいのと、置いて行かれてさみしいのがチョッピリだ。
「現在、苫小牧拠点の外周に地元民達が集まっています」
春ちゃんがそこまで話すと画面が切り替わり、拠点と外回りを上空から写した写真に変わった。
「今回の『点滅化』『ゾンビ化』にあたり、1番の懸念事項である外周ですが、自衛隊の協力をいただける事になりました。札幌駐屯地苫小牧出張所からと、白老駐屯地からです」
「うちは苫小牧より白老町の方が近いからな」
「はい。自衛隊の方が検問所を作りそこに交代で駐屯していただけるとの事です」
「それは助かる。この先起こるゾンビ化は防げないが、なるべく被害を抑えたい」
「暫くは拠点民に強制の作業が発生すると思います。各班でしっかり意思疎通をお願いします」
「こんな時代だからなぁ、それにうちらは随分恵まれている」
「恵まれすぎてますよ」
強制の作業とは何だろう?
うちの拠点、うちの血盟で何かする事あったっけ?
「みんなで何かするんか?」
「香、普通の事ですよ。この拠点を会社に例えると、社員の皆さんに働いてもらう。香はよく『うちはホワイトだから』と言ってますよね? ホワイト企業だから働かなくていいって事じゃないです。ホワイトでも最低限の仕事はしてもらう」
なるほど、確かにそうだな。
「これから起こるゾンビ化を最小限に食い止めるのに必要な事、それはいち早く『点滅者』の発見です。では、点滅者の発見に必要な事は何か」
スクリーンに春ちゃんが話す言葉が書き映されていく。マルクがパソコンに入力をしているのがスクリーンに映るようだ。
「点滅者発見に必要なのは、第一に『リアルステータスのマップ』です。第二に発見する場所、検問所。第三に検問所を通ってもらう仕組み、流れです」
①リアルステータス持ち
②検問所
③検問システム
と、スクリーンに映し出された。なるほどわかりやすい。
「②の検問所は既に出来ています。③の検問システムも自衛隊が考えてくださいました」
「どんなん?」
「はい、検問済みの方には証明を発行しています」
「けど、今日は点灯でも明日点滅になるかもしれないだろ?」
「はい。なので、3日おきの検問を義務付けているそうです」
「あのね、前にお父さんが朝のらじお体操の時にハンコ押してくれたでしょ? あれだよ?」
「前の体操? ふにゃ…くにゃ、ぷる……ゆる体操、ゆる体操か? ハンコなんて押してないぞ?」
「違うよ、お父さん、ムゥナの時朝に体操してたでしょ」
「ああ、ラジオ体操の、夏休みにハンコ貰うあれか」
「現在、拠点の外回りでソレを配っています。昔は夏休みのラジオ体操で毎朝ハンコが欲しくて通いましたね」
「ああ、休まず40日間参加すると、確か何か貰えたんだよな?」
「はい、拠点の外周でも3日毎の検問のたびに印を押して、印がいっぱいになると参加賞をお渡しする事なっています。少し前に参加賞の件で香に相談したのですが覚えていないですか?」
「ああ! あれ、子供のラジオ体操かと思ってた」
「大丈夫ですか? 参加者全員ですのでかなりの数になりますよ?」
「大丈夫大丈夫。……と、うっかり使っちまうとあれだから、商品は自衛隊員に預けておくか。マップ出来るやつが来るんだからアイテムボックスも当然あるよな」
「はい。では、ある程度の商品を先渡しで自衛隊に預かっていただきましょう」
やはり頼れる仲間がいるのはラクだ。自分で全てを考えるのは難しい。特に俺のようにボンヤリ生きるのが好きな人間には一日中考えていると直ぐに脳みそが休止してしまう。
あの大災害から、中々ゆっくり出来る日が訪れない。俺は神様に聞きそびれてしまったが、タウさん達が聞いた話によると、地球の未来は大変だと言ってたそうだからな。
隕石が降り注いで、衝撃波が来て、地震が来て、津波が来て、火山が噴火して、火山灰が降り注いで、それだけでも未曾有の大災害なのに。
ドサクサに紛れて木は動くし、獣は凶暴になるし、挙句にゾンビ化だ。ゾンビ化は獣だけでなく人間含む動物全般だろうなぁ。
もしかすると魚……もだろうか。
生き残るのに精一杯で、生き続けるのもやっとで、心がへし折れてる人も多いだろう。
頑張っても頑張ってももっと頑張らないといけないって辛すぎるな。だから、うちは出来る限りホワイトにするぞ!
「はい。香の言う通り、僕達は頑張りますが、無理だなと思ったら拠点に籠りましょう。全員は救えない。救えない人を見てはいけない。自分が救いたい人だけを見ましょう」
春ちゃんの言葉にふと子供時代が頭をよぎった。もしかして春ちゃんは『鹿野家』の救いようがない人達は見ずにいつも俺だけを救っていてくれたのだろうか。
うん、絶対にそうだ。
マルクがクイクイと俺の袖を引っ張り、タオルを渡してきた。
「……春ちゃん、遅くなって本当にすまん」
「バカですね、香は。そんな事少しも気にしてないですよ」
俺はタオルで目元をゴシゴシと擦った。
「①のリアルステータス持ちですが、各班の状況はどうでしょうか」
春ちゃんが皆をみまわした。俺も同じように見る。すると翔太が手を挙げた。
「第八世代は全員出た」
え……、聞き違いかな?……何が出た?てか、第八ってキッズ班だよな?
周りも息を飲んでいた。
「……翔太君、第八世代全員とは?名前をあげてもらえますか?」
「うん、うーんと、僕と、洸太と、朝陽と湊斗の4人。あ、僕は前から出てたけど」
「やったね、翔ちゃん! 流石班長!」
「はやっ、早くねぇか……マジか」
やはり子供は色んな意味で吸収が早いのだろうか。ゲームも凄いもんな。
「カオさん、うちのチームはゲームも体操も全部精一杯やってるから!」
翔太がフンスと鼻息荒く自慢げだった。
生活魔法と間違えているのではと春ちゃんが聞き直したが、リアルステータスの表示だそうだ。因みに生活魔法はその2日前に『水』『火』は出せるようになっていた。
「子供は身体も成長期って事もあるし、神様の祝福だか魔素だかも吸収しまくってるかも知れんな」
「そうですね。しかし、大人もモタモタしていられないですね。他のチームはいかがです?」
「うちのメンバーはまだ日が浅いからなぁ」
「うちもです」
カセナラクマのチームは現在リアルステータスは班長のみのままだ。
「ふんっ! ゔぅん!!! すてぇぇぇぇたすっっっ!」
部屋の隅っこでウカワが身体を折り曲げて力んでいた。……うんちか。
「出た出た出たああああああああ」
うんちが?
「え、おまっ、まさか!」
河島も部屋の隅で力み出した。トイレ行けよ!そこでするなよ!
「俺も出たあああああ!やったぁぁぁぁぁ!」
んだよ、便秘だったのかよ。良かったな、出て。でもそこトイレじゃないから!
「カオさん、ステータスですよ、烏川さんと河島さん、ステータスが出てなかったから」
あれ、そうだったか?もうとっくに出てるものと勘違いしてた。
「実は僕も先程表示されました。リアルステータスです。香、フレンド登録しましょう」
春ちゃんも?早くないか?驚いたな。
「今この部屋に居る者は全員リアルステータスが表示されている、班長はリアルステータス持ちである、でよろしいでしょうか? それからキッズ班の皆さんも呼んで全員でフレンド登録をしましょう」
「おう、そうだな。翔太、班のメンバーを呼んでくれるか?」
「はーい。…………今、ゲーム室だって」
「じゃ、迎えに行ってくるわ」
俺はテレポートでゲーム室に行き、そこに居た洸太達を連れて会議室に戻った。
全員でお互いにフレンド登録を行い、お試し念話やメールをしている。落ち着いたところで子供らをゲーム室へ送っていった。
「点滅者やゾンビ化が急激に進むのと同じで、もしかすると生活魔法やリアルステータスも増え始めている気がします」
「そうだな。タウさんへ連絡をしておいてくれ」
「はい。この会議の内容はタウさんのパソコンへもリアルタイムで流れています」
そうなんだ……俺の機械化は、黒電話で止まってるかもしれん。スマホどころかガラ携も使いこなせていなかったし。パソコンもゲームだけだったしな。
職場のパソコンもエクセルで使うのが殆どで、そもそも社員以外は通信機能が使えなくなっていたからな。
今時のSNSとか全くやった事はない。もっと色々やっておくべきだったな。
「大丈夫、周りで誰かが出来れば問題ありません。香はそのままで十分みんな頼りにしています。それと会議の議事録は、他の拠点にも同時に流れています。見る見ないは先方次第で、緊急時はマークが表示されます」
「あ、じゃあ逆にうちにも他の拠点の会議とか流れてきてるの?」
「はい、来ていますね。時間があれば僕とキヨカさんがチェックしています。
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