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2話 ニッポン街
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----(清見視点)----
俺たちが今住んでいるのは、俺たちが転移した異世界の地下にある踏破済み迷宮、踏破済みだからもう魔物は出現しないほぼ安全な洞窟型迷宮。
そこはこの世界の人達の地下都市デスエからも徒歩1時間ほどなのでそこそこ近いから便利だ。
俺たちはデスエの人達にかなりお世話になっている。個人的にではなく、日本としてデスエの民と仲良くさせてもらっているのだ。
この星の住民からしたら俺たちは異世界人(異星人?)だが、見た目は変わらない。謎の翻訳機能のおかげで言葉が通じるので交流もなんとか出来ている。と言うか、俺は末端の人間なのでよくわからないが、その辺は日本人を仕切ってくれている自衛隊が、きっと色々と上手く交流してくれているのだろう。
そう、見た目の基本は一緒だ。顔の中に目が二つ、鼻と口があり、顔の左右には耳が付いている。手足も二本ずつ。デスエのサウナみたいな施設を利用した時に俺は見た。ヘソもあった。という事は親の胎内で育つ哺乳類系だな。あと、股間に逸物。
地球人と変わらぬ見た目の造りだが、日本人より大柄ではある。色々と。髪や目の色は地球で言うところの欧米人っぽい。地下に住んでいるから陽が当たらないせいだろうか? 全体的に薄っぽい色の人が多い。というか地上もそこまで陽当たりは良くなかった気がする。
黒髪の人が全くいないわけではない。濃い茶髪の人もいるし、青に近い黒髪の人もいた。あれ、なんかかっこいいな。光の加減で青くも見える。俺の頭はどこから見ても黒一色だからなぁ。最近は伸びた髪を後ろでひとつに縛っている。デスエに床屋があるのか、そのうち誰かに聞いてみよう。
それはさておき、俺たちが住んでいる『ニッポン』と名付けられた迷宮は、不思議な空間だ。
巨大な鍾乳洞のような地下迷宮を利用して造られた街だ。白い壁は外国の遺跡っぽい。が、住民の居住空間には畳が敷かれている。
畳……そう、日本の畳だ。謎の空間スキル『仏間』で再生された畳だ。毎日一定量が再生されるので、それがニッポン街に居る避難民達へと配布されたのだ。
謎の再生は畳以外にも色々とあり、避難民へと順繰りに配布されていく。雑多ではあるがそれぞれの居住スペースに置かれ、使用されているみたいだ。
物資が再生するのは『仏間』だけではない。他の空間スキルでも同じように色々な物が再生している。
居住スペースの床面の上に飛行機の座席が置かれている家も多く見られる。リクライニングした状態でソファー代わりのようだ。
衣服類も復活の都度、自衛隊で管理しつつ国民に配布されていっている。布団や毛布も一応はひととおり行き渡ったようだ。
『飛行機の座席が置かれているのが見える』と言うのは居住空間は完全な密室ではないから『見える』のだ。
巨大な洞窟の壁や穴を利用して造られた街で、地下なので屋根はない。自然な穴や囲みを利用しているので、家屋としての『壁』もない。
隣のスペースと区切るような低い塀があるくらいだ。だから、まぁ、自然とお隣さんのあれやこれが見えてしまうのだ。
それでも、配布された物を使い、スペース内に見えない空間を造ったりと各家が工夫をしている。
初めの頃は、殆どオープンな避難所だったが、今は結構、街っぽくなってきている。
オープンすぎる空間が、今のところ苦情や揉め事に発展しないのは、『地球に戻るまでの避難所』と考えている人が多いからだろう。
『救助が来るまである程度の生活が出来れば良し』と思っているのだろう。
これが『一生ここに住む』と言われたら、きっと不満は爆発するのかもしれない。
地球(日本)を知らない世代と覚えていない世代は、今の状態が普通と思っているだろう。
それと、自分を含むオタク、異世界ファンタジーやゲームに造詣が深い面々も、この状況に文句はない。それどころかたぶん、楽しんでいると思う。うん、大変だけど楽しいは楽しい。
いつか地球から救助が来るなら、尚のこと今この状況を楽しんでおかなければ!
戻ってから『もっとダンジョンにいっとけばよかったー』とか『レベルMAXにしたかった』なんて後悔しないようにな。
なぁんて、頭では考えているのだけど、実際は普通に忙しい日々を送っている。
というのも俺のスキル『仏間』の押入れの中の物を再生させるには、押入れから出して少しだけ傷を付けておく必要がある。傷を付けると何故か新しい物が押入れに翌日再生しているのだ。
あ、もちろん俺だけではない。空間スキル持ちは全員がソレだ。トイレママさんのトイレも、風呂ママさんのバスルームも、キチママさんのダイニングキッチンも、それから、飛行機の機体とか保育園とか病院とかもそうだ。
空間スキル持ちの空間から再生させた物資が避難民達へ配布されるのだ。
身体ひとつで異世界へ来てしまった人達には、物資はとても重要だ。
迷宮の地下10階層に造られた街ニッポンから、螺旋階段を上がり地上へと出た場所に、空間スキルの建物が置かれている。
地下10階の街に住んでいても、再生の仕事のために地上へ行く必要がある。
最初の頃は毎朝自衛隊が地上まで階段をあがりその作業をおこなっていた。
そう、別に空間スキル持ちが作業を行わなくとも、誰かがそれを代行出来る。ただし、スキル持ちが建物から一定の期間もしくは距離を離れてしまうとスキル消滅の危機があるのだ。
スキルが消える、それは、もう物資の再生が行われないという事だ。
避難民が地下10階層の鍾乳洞で生活する上で、地球での物資はとても貴重だ。
この世界に馴染み、自分達の食糧や生活物資を自分達で調達出来るようになっていれば話は別だが、結局まだ殆どの人が『救助を待つ被災者』のままなのだ。
しかし人は少しずつだが変わり始めた。徐々に一般人も作業に加わるようになった。
皆よく10階層の階段の登り降りをするなと感心する。10階層と言っても、ひとつの階層の高さが日本の1階分とは比べものにならないくらい階段が長い。俺からしたら地上までは気が遠くなるくらいの長さ(高さ)だ。
最初の頃は自衛官に担がれていた俺やママさんらも、今では自分の足で移動している。
俺が出した要望で階段の途中、広めの場所にベンチが設けられた。いや、ベンチ必要!(本当はエスカレーターが欲しいくらいだ)
色んな人が休んでいるのを見かける。
一般人の人が作業に参加するために地上へ上がるようになってから、『地上詣で』の一環として仏間の仏壇を外側に向けて置いている。
線香や蝋燭も用意してある。
地下から上がってきた人は毎日の無事を祈りそこで手を合わせる。毎日神社に参拝する感じか。
実は現在は仏壇が3台ある。
1台は仏間の元からの位置に。もう1台は、外から拝めるように、仏間前の外に設置した。
そして3台目は、地下10階層の加瀬家に設置した。兄貴と山根さんが下まで降ろしてくれた。
朝晩はそこで手を合わせるが、地上に来た時も仏間の仏壇に手を合わせる。両親や祖父母のお位牌は下に持っていった。
地下10階層に運び込んだママさんらのトイレと風呂も、当初は子供達専用だった。
今はフロアの水場近くに、それなりの数のトイレと共同浴場が作られたので、そっちを利用する人が殆どだ。
とはいえトイレは混んでいるし、風呂は男女で曜日が分けられている。まだまだあの頃の日本には追いつかない。
今の『ニッポン』は大正か昭和初期といったところか。
実は、和式トイレはブーイングが凄かった。なのですぐに腰掛けタイプになった。もちろん水洗ではないしウォシュレットもない。が、座って用を足せるのは嬉しいようだ。それとトイレットペーパーがある。それが俺らを文明人に引き止めてくれている。
実はこの世界にはダンジョンがある。俺たちが住んでいるのが踏破済み迷宮、つまり終わったダンジョンだ。そして当然だが未踏破の迷宮、生きたダンジョンもある。探索者……冒険者かな、迷宮に潜ると当然トイレは無いので野グソになるそうだ。
あれかな。犬の散歩のようにブツはお持ち帰りか?と思った。
それはそれでちょっとアレだな。迷宮内ですれ違う冒険者達が腰にブツの入った袋をぶら下げているって……。あと、迷宮内が臭そうだ。
「迷宮内ってトイレあるの?」
以前に自衛隊に連れられてよく迷宮に行く大島氏に聞いた事があった。
「ないぞ」
無いんだ……。じゃあお持ち帰りタイプか。
「人が多い階層は、ソレっぽい場所があったな。日本のトイレのようにしっかりとした個室ではなかったが、見えづらい行き止まりが割とソレに利用される。まぁ、するとしても小が殆どで大は迷宮に入る前に済ませてくるのが普通らしい」
とは言え、突然、腹が痛くなる事もあるだろうし、泊まりがけの迷宮探索なら大も必須だ。
「その、ソレっぽい場所は水は流せるの?」
だって、行き止まりにブツが山盛りとかさ、何の嫌がらせだよ。行き止まりの通路にある壺を割ったら普通はお宝が出てくるのが(ファンタジーの)常識だよ。なのに、壺を割るとブツが出てくるとか、いや、割る前から臭いでわかる。
もちろん、水を流すシステムなどないそうだが、そこは生きた迷宮の不思議で、しばらくすると地面に吸い込まれるそうだ。
ほら、魔物の死体を放置すると洞窟の地面に吸収される、あれと同じらしい。
ちなみに、俺たちが住んでいるここは死んだ迷宮なので、地面にウンコをしても吸収はしてくれない。そこは要注意だ。
朝の地上詣でが人気なのは、地上にある産院の洋式トイレを使いたいという理由らしい。ウォシュレット目当てか。
使用は自由にされている。ただし、トイレ掃除は順番で回ってくる。
そう、トイレ掃除の順番で思い出した。現在の地下街『ニッポン』は、区画もちゃんと整理されて区画や通りにも名称が付けられた。
うちの前の通りは『花笠通り』で、うちを含む20件ほどが同じ町内として『花笠町会』と言う名前だ。
簡易な地図も配られている。地図は町会の中央の壁にも貼ってある。
「裕理君、お花どおりにお散歩行こうか」
「お花! お散歩、行く」
花は咲いてないけどね。町会名は各住民が付けていい。他と被った場合は話し合いになる。
あの少し高台になっている地域は『山の手一』『山の手二』といった感じで山の手は確か『八』まであったかな。
『青山』『麻布』『白金台』を名乗っている地域もあったな。ふざけているのか本気でつけたのか、どっちだ?
だが以前よりだいぶ活気があふれてきて避難所から少しだけ街っぽくなった気がする。
共同の施設、水場や浴場、そしてトイレなどの掃除当番が、町会ごとに回ってくるのだ。うん、俺らは綺麗好きの日本人だからな。
俺たちが今住んでいるのは、俺たちが転移した異世界の地下にある踏破済み迷宮、踏破済みだからもう魔物は出現しないほぼ安全な洞窟型迷宮。
そこはこの世界の人達の地下都市デスエからも徒歩1時間ほどなのでそこそこ近いから便利だ。
俺たちはデスエの人達にかなりお世話になっている。個人的にではなく、日本としてデスエの民と仲良くさせてもらっているのだ。
この星の住民からしたら俺たちは異世界人(異星人?)だが、見た目は変わらない。謎の翻訳機能のおかげで言葉が通じるので交流もなんとか出来ている。と言うか、俺は末端の人間なのでよくわからないが、その辺は日本人を仕切ってくれている自衛隊が、きっと色々と上手く交流してくれているのだろう。
そう、見た目の基本は一緒だ。顔の中に目が二つ、鼻と口があり、顔の左右には耳が付いている。手足も二本ずつ。デスエのサウナみたいな施設を利用した時に俺は見た。ヘソもあった。という事は親の胎内で育つ哺乳類系だな。あと、股間に逸物。
地球人と変わらぬ見た目の造りだが、日本人より大柄ではある。色々と。髪や目の色は地球で言うところの欧米人っぽい。地下に住んでいるから陽が当たらないせいだろうか? 全体的に薄っぽい色の人が多い。というか地上もそこまで陽当たりは良くなかった気がする。
黒髪の人が全くいないわけではない。濃い茶髪の人もいるし、青に近い黒髪の人もいた。あれ、なんかかっこいいな。光の加減で青くも見える。俺の頭はどこから見ても黒一色だからなぁ。最近は伸びた髪を後ろでひとつに縛っている。デスエに床屋があるのか、そのうち誰かに聞いてみよう。
それはさておき、俺たちが住んでいる『ニッポン』と名付けられた迷宮は、不思議な空間だ。
巨大な鍾乳洞のような地下迷宮を利用して造られた街だ。白い壁は外国の遺跡っぽい。が、住民の居住空間には畳が敷かれている。
畳……そう、日本の畳だ。謎の空間スキル『仏間』で再生された畳だ。毎日一定量が再生されるので、それがニッポン街に居る避難民達へと配布されたのだ。
謎の再生は畳以外にも色々とあり、避難民へと順繰りに配布されていく。雑多ではあるがそれぞれの居住スペースに置かれ、使用されているみたいだ。
物資が再生するのは『仏間』だけではない。他の空間スキルでも同じように色々な物が再生している。
居住スペースの床面の上に飛行機の座席が置かれている家も多く見られる。リクライニングした状態でソファー代わりのようだ。
衣服類も復活の都度、自衛隊で管理しつつ国民に配布されていっている。布団や毛布も一応はひととおり行き渡ったようだ。
『飛行機の座席が置かれているのが見える』と言うのは居住空間は完全な密室ではないから『見える』のだ。
巨大な洞窟の壁や穴を利用して造られた街で、地下なので屋根はない。自然な穴や囲みを利用しているので、家屋としての『壁』もない。
隣のスペースと区切るような低い塀があるくらいだ。だから、まぁ、自然とお隣さんのあれやこれが見えてしまうのだ。
それでも、配布された物を使い、スペース内に見えない空間を造ったりと各家が工夫をしている。
初めの頃は、殆どオープンな避難所だったが、今は結構、街っぽくなってきている。
オープンすぎる空間が、今のところ苦情や揉め事に発展しないのは、『地球に戻るまでの避難所』と考えている人が多いからだろう。
『救助が来るまである程度の生活が出来れば良し』と思っているのだろう。
これが『一生ここに住む』と言われたら、きっと不満は爆発するのかもしれない。
地球(日本)を知らない世代と覚えていない世代は、今の状態が普通と思っているだろう。
それと、自分を含むオタク、異世界ファンタジーやゲームに造詣が深い面々も、この状況に文句はない。それどころかたぶん、楽しんでいると思う。うん、大変だけど楽しいは楽しい。
いつか地球から救助が来るなら、尚のこと今この状況を楽しんでおかなければ!
戻ってから『もっとダンジョンにいっとけばよかったー』とか『レベルMAXにしたかった』なんて後悔しないようにな。
なぁんて、頭では考えているのだけど、実際は普通に忙しい日々を送っている。
というのも俺のスキル『仏間』の押入れの中の物を再生させるには、押入れから出して少しだけ傷を付けておく必要がある。傷を付けると何故か新しい物が押入れに翌日再生しているのだ。
あ、もちろん俺だけではない。空間スキル持ちは全員がソレだ。トイレママさんのトイレも、風呂ママさんのバスルームも、キチママさんのダイニングキッチンも、それから、飛行機の機体とか保育園とか病院とかもそうだ。
空間スキル持ちの空間から再生させた物資が避難民達へ配布されるのだ。
身体ひとつで異世界へ来てしまった人達には、物資はとても重要だ。
迷宮の地下10階層に造られた街ニッポンから、螺旋階段を上がり地上へと出た場所に、空間スキルの建物が置かれている。
地下10階の街に住んでいても、再生の仕事のために地上へ行く必要がある。
最初の頃は毎朝自衛隊が地上まで階段をあがりその作業をおこなっていた。
そう、別に空間スキル持ちが作業を行わなくとも、誰かがそれを代行出来る。ただし、スキル持ちが建物から一定の期間もしくは距離を離れてしまうとスキル消滅の危機があるのだ。
スキルが消える、それは、もう物資の再生が行われないという事だ。
避難民が地下10階層の鍾乳洞で生活する上で、地球での物資はとても貴重だ。
この世界に馴染み、自分達の食糧や生活物資を自分達で調達出来るようになっていれば話は別だが、結局まだ殆どの人が『救助を待つ被災者』のままなのだ。
しかし人は少しずつだが変わり始めた。徐々に一般人も作業に加わるようになった。
皆よく10階層の階段の登り降りをするなと感心する。10階層と言っても、ひとつの階層の高さが日本の1階分とは比べものにならないくらい階段が長い。俺からしたら地上までは気が遠くなるくらいの長さ(高さ)だ。
最初の頃は自衛官に担がれていた俺やママさんらも、今では自分の足で移動している。
俺が出した要望で階段の途中、広めの場所にベンチが設けられた。いや、ベンチ必要!(本当はエスカレーターが欲しいくらいだ)
色んな人が休んでいるのを見かける。
一般人の人が作業に参加するために地上へ上がるようになってから、『地上詣で』の一環として仏間の仏壇を外側に向けて置いている。
線香や蝋燭も用意してある。
地下から上がってきた人は毎日の無事を祈りそこで手を合わせる。毎日神社に参拝する感じか。
実は現在は仏壇が3台ある。
1台は仏間の元からの位置に。もう1台は、外から拝めるように、仏間前の外に設置した。
そして3台目は、地下10階層の加瀬家に設置した。兄貴と山根さんが下まで降ろしてくれた。
朝晩はそこで手を合わせるが、地上に来た時も仏間の仏壇に手を合わせる。両親や祖父母のお位牌は下に持っていった。
地下10階層に運び込んだママさんらのトイレと風呂も、当初は子供達専用だった。
今はフロアの水場近くに、それなりの数のトイレと共同浴場が作られたので、そっちを利用する人が殆どだ。
とはいえトイレは混んでいるし、風呂は男女で曜日が分けられている。まだまだあの頃の日本には追いつかない。
今の『ニッポン』は大正か昭和初期といったところか。
実は、和式トイレはブーイングが凄かった。なのですぐに腰掛けタイプになった。もちろん水洗ではないしウォシュレットもない。が、座って用を足せるのは嬉しいようだ。それとトイレットペーパーがある。それが俺らを文明人に引き止めてくれている。
実はこの世界にはダンジョンがある。俺たちが住んでいるのが踏破済み迷宮、つまり終わったダンジョンだ。そして当然だが未踏破の迷宮、生きたダンジョンもある。探索者……冒険者かな、迷宮に潜ると当然トイレは無いので野グソになるそうだ。
あれかな。犬の散歩のようにブツはお持ち帰りか?と思った。
それはそれでちょっとアレだな。迷宮内ですれ違う冒険者達が腰にブツの入った袋をぶら下げているって……。あと、迷宮内が臭そうだ。
「迷宮内ってトイレあるの?」
以前に自衛隊に連れられてよく迷宮に行く大島氏に聞いた事があった。
「ないぞ」
無いんだ……。じゃあお持ち帰りタイプか。
「人が多い階層は、ソレっぽい場所があったな。日本のトイレのようにしっかりとした個室ではなかったが、見えづらい行き止まりが割とソレに利用される。まぁ、するとしても小が殆どで大は迷宮に入る前に済ませてくるのが普通らしい」
とは言え、突然、腹が痛くなる事もあるだろうし、泊まりがけの迷宮探索なら大も必須だ。
「その、ソレっぽい場所は水は流せるの?」
だって、行き止まりにブツが山盛りとかさ、何の嫌がらせだよ。行き止まりの通路にある壺を割ったら普通はお宝が出てくるのが(ファンタジーの)常識だよ。なのに、壺を割るとブツが出てくるとか、いや、割る前から臭いでわかる。
もちろん、水を流すシステムなどないそうだが、そこは生きた迷宮の不思議で、しばらくすると地面に吸い込まれるそうだ。
ほら、魔物の死体を放置すると洞窟の地面に吸収される、あれと同じらしい。
ちなみに、俺たちが住んでいるここは死んだ迷宮なので、地面にウンコをしても吸収はしてくれない。そこは要注意だ。
朝の地上詣でが人気なのは、地上にある産院の洋式トイレを使いたいという理由らしい。ウォシュレット目当てか。
使用は自由にされている。ただし、トイレ掃除は順番で回ってくる。
そう、トイレ掃除の順番で思い出した。現在の地下街『ニッポン』は、区画もちゃんと整理されて区画や通りにも名称が付けられた。
うちの前の通りは『花笠通り』で、うちを含む20件ほどが同じ町内として『花笠町会』と言う名前だ。
簡易な地図も配られている。地図は町会の中央の壁にも貼ってある。
「裕理君、お花どおりにお散歩行こうか」
「お花! お散歩、行く」
花は咲いてないけどね。町会名は各住民が付けていい。他と被った場合は話し合いになる。
あの少し高台になっている地域は『山の手一』『山の手二』といった感じで山の手は確か『八』まであったかな。
『青山』『麻布』『白金台』を名乗っている地域もあったな。ふざけているのか本気でつけたのか、どっちだ?
だが以前よりだいぶ活気があふれてきて避難所から少しだけ街っぽくなった気がする。
共同の施設、水場や浴場、そしてトイレなどの掃除当番が、町会ごとに回ってくるのだ。うん、俺らは綺麗好きの日本人だからな。
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