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3話 新しい日常生活
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----(大島視点)----
ここで暮らしている者達はこの3年で変わったと思う。
避難民から住民へ。
以前は全てにおいて自衛隊に頼り切っていた避難民達が、この地下都市『ニッポン』に来て1年くらい経った頃から、徐々に自ら動くようになっていった。
とはいえ、勝手に動いたら大混乱になる。そのへんは自衛隊が仕切っていたのだが、住民の中から代表を決めて色々な仕切りごとも自衛隊から住民へと移しつつある。
各町会のとりまとめもしかり。
配給や当番も自衛隊はノータッチだ。自衛隊は必要な事を町会長へ下ろす。それぞれの町会長から町会民へとスムーズだ。
新しいルールや情報も自衛隊が町会長へ渡すと、回覧板の形であっという間に展開される。
各町会を通して住民の情報も集めてもらい自衛隊がまとめるのに助かったそうだ。
現在は衣食住は全て配給制だ。ボランティア募集は集まりも早いので、自衛隊から各町会への橋渡し作業はボランティアが行う事も多い。
この世界の知識の勉強会は定期的に開いている。俺は、これはとても重要な事だと思っている。
『地球からの救助』を待っている人達にコレの重要性を理解してもらうのは難しいだろう。
だが、本当に救助はくるのだろうか?
もし来るとしても、それが10年後、50年後になる可能性は?
オタクの俺はアニメや小説で異世界転移モノをよく読んでいた。今居る俺達の状況、コレが本当に『異世界転移』なのかはわからない。物語と現実がかけ離れているせいかもしれないが、スキルがあるからといってそんなに簡単に『俺TUEEEE!』にはならない。バンバンスキルアップしてレベルMAXにもならない。
勇者も賢者も聖女もいなければ、大魔法も収納ボックスもない。ダンジョンのある世界なのに、デスエには冒険者もいるのに、何というかもっと生活に密着した世界なんだ。
生活に密着した世界……、そうなんだ。それなんだよ。当たり前だけど、生活のための迷宮、生活のための冒険者活動。
ダンジョンとしての迷宮は、地球で言うところのマグロ漁船やカニ取り船のように、危険と背中合わせの一攫千金、それに近い。
迷宮の浅い階層は、普通に猟、だよな。
それに迷宮に潜らず生活している者も多い。地下である事を除けば、本当に普通の生活なんだ。
物資再生の謎の空間スキルのある俺たち地球人の方がよっぽど異世界人だよな。
そう、結局、小説のようにこの世界へと異世界転移したのではなく、単に別次元の世界に迷い込んだだけ、なのではと。
よく言う『神隠し』的な。直ぐに戻るケースもあるが、数十年後に戻ってくるという話、戻ってこなかった話の方が多い。
誘拐や殺人だったというケースは別にしても、戻らなかった事の方が多い。
つまり、俺ら側からしたら、戻れないケースの確率が高い。
だとしたら、この世界に馴染む努力は必要だと、考える。
と、そう思うのは、昨夜、清みんやオタ仲間と話したせいだ。
「異世界ファンタジーと言うよりどっちかって言うと都市伝説よりじゃないか?」
「都市伝説?」
「うん。知らない世界へスリップしちゃう系。ほら、きさら……何とか駅で起こりやすいやつ」
「こんなに大勢でスリップするもんかね」
「うーん、滑りやすかった?」
滑りやすいにも程があるな。日本のあちこちで滑りまくったな。
「いやさぁ、キサラ◯駅は関係なく、今回はほら、黒い豆粒。アレに襲われただろ?」
「うん、多分、その黒い物体が触れると滑りやすくなる?」
清みん、滑るとかの言い方だと逆にわかりづらいぞ? 普通にその黒いやつが触れた瞬間、別次元へスリップしたとかでいいんじゃないか?
だが、言いたい事はわかる。別の次元、別の世界へと何かの弾み(今回は黒い物体の接触)で移動した。そう簡単に戻る事はできないって事だろう。
だから、俺はニッポンの街にいる皆もこの世界の事を学ぶべきだと考えている。
自衛隊も同じ考えのようで、デスエとは積極的に関係を持ち、向こうの文化を取り入れようとしている。
勉強会を開催しているのもその一環だ。
勉強会は自由参加だが、思っていたよりも皆、積極的に取り組んでいる。満席で、教室を増やしたりしていた。
昨年末あたりからデスエツアーも少人数ではあるが頻繁に行うようになった。それもこの世界を肌で感じてもらい、学んでもらうためだそうだ。
デスエの街なり迷宮なりで働く事になるのもそれほど時間はかからないかもしれない。
自衛隊が行っていた朝の地上詣でも、一般人に解放される時間が、『朝だけ』から『午前中のみ』に延びた。
もちろん地上が危険な事は周知の上でしっかり防衛もはられている。
病院でのトイレやシャワーを使いたい者、洗濯をする者、作業に参加する者で、地上は意外と混み合っている。
螺旋階段も穴側はしっかりとロープが張られた。
荷物が通る時は、皆壁際に寄って待つ。登りと降りもぶつからないように譲り合う。登山の狭い山道のようだ。すれ違う時にお互いに挨拶やら声をかけたりしている。
空間建物で再生された食糧は毎日町民全員に行き渡る数がない。
もちろん順番で配給は行われるが、足りない分は現地食材で調理を行う。
調理場は水場にある。共同浴場を挟み、トイレとは逆の方に炊事場と焚き火台がある。キャンプ場の、もう少し原始的な感じか。
自衛隊がデスエの食堂でレシピを入手してきてくれたおかげで、何とか調理をして食事する事が出来ている。
調理は町会ごとにルールを決めているようだ。
料理好きが居ない町会はなかなかに悲惨らしい。一応、自衛官がヘルプに入っているようだ。
俺が住む花笠どおり町会は、調理好きが多くて助かる。毎回美味しい食事にありつけている。
「あ、大島っちー、今日はカニだって。さっき山根さんがカニ獲れたって言ってた!」
清みんが嬉しそうだ。現地食材で清みんが唯一食べられるのがカニ(本当は蜘蛛だ)だからな。
他の食材の時の項垂れ具合といったらもう。清みんは全部顔に出るからわかりやすいな。
俺は調理されちまえば、元が何だろうが気にならない。この世界の食材(魔虫)はサイズが大きいからな。
虫の形のまま調理される事はほとんどないのだ。清みんは自分から材料名を聞きに行きショックを受ける事が多い。気になるなら聞かなきゃいいのにな。
肉もよく出るのだが、清みんは見た目どおりで草食なのか、焼き肉の時は箸の進みが遅い。
一度、橘さんに聞いた事がある。
「清みんは向こうに居たときは何を食ってたんですか? ベジタリアン?」
「ああ、いや、野菜も食うが、肉より魚かな。肉はソーセージやハンバーグなら食うんだがステーキや焼き肉は箸が進まなかったな。お袋達が生きていた時は和食……魚メインが多かった」
「そうか、なら、ここでの肉を焼いただけなのは清みんにはキツイな」
「この世界じゃ、贅沢言って食わないやつは死ぬだけだから皆何でも食ってる。けど、清見はほっとくと本当に食わないからなぁ」
「そうですね。気がついたら餓死していそうで怖いな」
「うちだけ特別にしてもらうわけにはいかないからな。ただ、清見が食べなかった翌日はスライム達が率先して蜘蛛を狩ってくるんだよ。しかも結構な量をな。それで隊も、カニは花笠町会を優先してくれている」
そういえば食材が肉の時でも、花笠通りのママさん達が肉をミンチにしてハンバーグや肉団子を作る事が多いな。
子供向けメニューかと思っていたけど、もしかすると……。
清みん、愛されているなぁ。
ここで暮らしている者達はこの3年で変わったと思う。
避難民から住民へ。
以前は全てにおいて自衛隊に頼り切っていた避難民達が、この地下都市『ニッポン』に来て1年くらい経った頃から、徐々に自ら動くようになっていった。
とはいえ、勝手に動いたら大混乱になる。そのへんは自衛隊が仕切っていたのだが、住民の中から代表を決めて色々な仕切りごとも自衛隊から住民へと移しつつある。
各町会のとりまとめもしかり。
配給や当番も自衛隊はノータッチだ。自衛隊は必要な事を町会長へ下ろす。それぞれの町会長から町会民へとスムーズだ。
新しいルールや情報も自衛隊が町会長へ渡すと、回覧板の形であっという間に展開される。
各町会を通して住民の情報も集めてもらい自衛隊がまとめるのに助かったそうだ。
現在は衣食住は全て配給制だ。ボランティア募集は集まりも早いので、自衛隊から各町会への橋渡し作業はボランティアが行う事も多い。
この世界の知識の勉強会は定期的に開いている。俺は、これはとても重要な事だと思っている。
『地球からの救助』を待っている人達にコレの重要性を理解してもらうのは難しいだろう。
だが、本当に救助はくるのだろうか?
もし来るとしても、それが10年後、50年後になる可能性は?
オタクの俺はアニメや小説で異世界転移モノをよく読んでいた。今居る俺達の状況、コレが本当に『異世界転移』なのかはわからない。物語と現実がかけ離れているせいかもしれないが、スキルがあるからといってそんなに簡単に『俺TUEEEE!』にはならない。バンバンスキルアップしてレベルMAXにもならない。
勇者も賢者も聖女もいなければ、大魔法も収納ボックスもない。ダンジョンのある世界なのに、デスエには冒険者もいるのに、何というかもっと生活に密着した世界なんだ。
生活に密着した世界……、そうなんだ。それなんだよ。当たり前だけど、生活のための迷宮、生活のための冒険者活動。
ダンジョンとしての迷宮は、地球で言うところのマグロ漁船やカニ取り船のように、危険と背中合わせの一攫千金、それに近い。
迷宮の浅い階層は、普通に猟、だよな。
それに迷宮に潜らず生活している者も多い。地下である事を除けば、本当に普通の生活なんだ。
物資再生の謎の空間スキルのある俺たち地球人の方がよっぽど異世界人だよな。
そう、結局、小説のようにこの世界へと異世界転移したのではなく、単に別次元の世界に迷い込んだだけ、なのではと。
よく言う『神隠し』的な。直ぐに戻るケースもあるが、数十年後に戻ってくるという話、戻ってこなかった話の方が多い。
誘拐や殺人だったというケースは別にしても、戻らなかった事の方が多い。
つまり、俺ら側からしたら、戻れないケースの確率が高い。
だとしたら、この世界に馴染む努力は必要だと、考える。
と、そう思うのは、昨夜、清みんやオタ仲間と話したせいだ。
「異世界ファンタジーと言うよりどっちかって言うと都市伝説よりじゃないか?」
「都市伝説?」
「うん。知らない世界へスリップしちゃう系。ほら、きさら……何とか駅で起こりやすいやつ」
「こんなに大勢でスリップするもんかね」
「うーん、滑りやすかった?」
滑りやすいにも程があるな。日本のあちこちで滑りまくったな。
「いやさぁ、キサラ◯駅は関係なく、今回はほら、黒い豆粒。アレに襲われただろ?」
「うん、多分、その黒い物体が触れると滑りやすくなる?」
清みん、滑るとかの言い方だと逆にわかりづらいぞ? 普通にその黒いやつが触れた瞬間、別次元へスリップしたとかでいいんじゃないか?
だが、言いたい事はわかる。別の次元、別の世界へと何かの弾み(今回は黒い物体の接触)で移動した。そう簡単に戻る事はできないって事だろう。
だから、俺はニッポンの街にいる皆もこの世界の事を学ぶべきだと考えている。
自衛隊も同じ考えのようで、デスエとは積極的に関係を持ち、向こうの文化を取り入れようとしている。
勉強会を開催しているのもその一環だ。
勉強会は自由参加だが、思っていたよりも皆、積極的に取り組んでいる。満席で、教室を増やしたりしていた。
昨年末あたりからデスエツアーも少人数ではあるが頻繁に行うようになった。それもこの世界を肌で感じてもらい、学んでもらうためだそうだ。
デスエの街なり迷宮なりで働く事になるのもそれほど時間はかからないかもしれない。
自衛隊が行っていた朝の地上詣でも、一般人に解放される時間が、『朝だけ』から『午前中のみ』に延びた。
もちろん地上が危険な事は周知の上でしっかり防衛もはられている。
病院でのトイレやシャワーを使いたい者、洗濯をする者、作業に参加する者で、地上は意外と混み合っている。
螺旋階段も穴側はしっかりとロープが張られた。
荷物が通る時は、皆壁際に寄って待つ。登りと降りもぶつからないように譲り合う。登山の狭い山道のようだ。すれ違う時にお互いに挨拶やら声をかけたりしている。
空間建物で再生された食糧は毎日町民全員に行き渡る数がない。
もちろん順番で配給は行われるが、足りない分は現地食材で調理を行う。
調理場は水場にある。共同浴場を挟み、トイレとは逆の方に炊事場と焚き火台がある。キャンプ場の、もう少し原始的な感じか。
自衛隊がデスエの食堂でレシピを入手してきてくれたおかげで、何とか調理をして食事する事が出来ている。
調理は町会ごとにルールを決めているようだ。
料理好きが居ない町会はなかなかに悲惨らしい。一応、自衛官がヘルプに入っているようだ。
俺が住む花笠どおり町会は、調理好きが多くて助かる。毎回美味しい食事にありつけている。
「あ、大島っちー、今日はカニだって。さっき山根さんがカニ獲れたって言ってた!」
清みんが嬉しそうだ。現地食材で清みんが唯一食べられるのがカニ(本当は蜘蛛だ)だからな。
他の食材の時の項垂れ具合といったらもう。清みんは全部顔に出るからわかりやすいな。
俺は調理されちまえば、元が何だろうが気にならない。この世界の食材(魔虫)はサイズが大きいからな。
虫の形のまま調理される事はほとんどないのだ。清みんは自分から材料名を聞きに行きショックを受ける事が多い。気になるなら聞かなきゃいいのにな。
肉もよく出るのだが、清みんは見た目どおりで草食なのか、焼き肉の時は箸の進みが遅い。
一度、橘さんに聞いた事がある。
「清みんは向こうに居たときは何を食ってたんですか? ベジタリアン?」
「ああ、いや、野菜も食うが、肉より魚かな。肉はソーセージやハンバーグなら食うんだがステーキや焼き肉は箸が進まなかったな。お袋達が生きていた時は和食……魚メインが多かった」
「そうか、なら、ここでの肉を焼いただけなのは清みんにはキツイな」
「この世界じゃ、贅沢言って食わないやつは死ぬだけだから皆何でも食ってる。けど、清見はほっとくと本当に食わないからなぁ」
「そうですね。気がついたら餓死していそうで怖いな」
「うちだけ特別にしてもらうわけにはいかないからな。ただ、清見が食べなかった翌日はスライム達が率先して蜘蛛を狩ってくるんだよ。しかも結構な量をな。それで隊も、カニは花笠町会を優先してくれている」
そういえば食材が肉の時でも、花笠通りのママさん達が肉をミンチにしてハンバーグや肉団子を作る事が多いな。
子供向けメニューかと思っていたけど、もしかすると……。
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