この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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998年目

02 祈り ※チヒロ

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 ※※※ チヒロ ※※※



この国で新年を迎えた。

私は初めてみんなと一緒にひとつ歳をとった。

11歳になったのだ。

19歳になったエリサが少し背が伸びましたね、と気付いてくれて嬉しかった。

しかし16歳になって、あの儀式の時よりかなり背が伸びたレオンには逆に縮んだんじゃないかと言われてしまった。

くうううぅー。
レオンだってシンと比べたらまだまだ小さいくせに。

そのシンは24歳に。
レオンの護衛、近衛騎士隊の副隊長、《王家の盾》の当主。

どれだけ仕事してるの?お休みは?と疑問に思って聞いたら、エリサと同じように南の宮の一室を与えられていて、ほぼそこに住んでいるようなものだと言う。
エリサは尊敬してたけど……なんて仕事人間!

テオは私と同じく11歳になった。
背が伸びないのを気にしている。
「お姉さんはそのままのテオがいいよ」と言ったらエリサに口を塞がれた。

その後セバス先生にお歳を聞こうとしたらやはりエリサに口を塞がれた。


ジルはあれから頻繁に王宮にやってくるようになった。
シンに挨拶して、あとは私の部屋で寝ている。賢い子だ。
本当はシンの側にいたいだろうけど、シンはお仕事だもんね。

そんなジルが運動不足にならない様にと、テオにフライング・ディスクを作ってもらった。
なんと木製だ。多分。木だよね?テオもそう言っていたし。
色は木だけど感触は……なんだか前世のと変わりない気がするけど。

でも部屋でジルにキャッチの練習をさせようとして、エリサとセバス先生に慌てて止められた。

そうだった、ジルは犬じゃなかった。
……私には大きいシベリアンハスキーにしか見えないのだ。許してほしい。

せっかく作ってもらったのだから、と庭に出てテオと遊んでいたら休憩中の騎士の皆さんが興味津々にやってきた。
「やってみますか?」と誘ったら、10人くらい集まった。エリサも加わった。

テオの作ったフライング・ディスクはよく飛んだ。そして、さすが騎士。
投げてキャッチして、また投げて……の、遊びはすぐに競技になった。

大興奮で遊ぶ騎士の皆さん。
作ったテオは囲まれ褒められて、頬を染め嬉しそうに笑っていた。

その後、騎士の皆さんは「休憩終了にも気付かず遊んでいるとは何事か」と、シンに叱られていたけど。エリサも。


王太子妃様がよくお茶会に誘ってくれ、私は女子会を楽しんでいる。
初めて会った時は赤ちゃんだった王子様も、今や元気にハイハイを始めている。
なんと靴を脱いであがる絨毯の上で、だ。

私の部屋の一角に靴を脱いであがる絨毯が敷いてあり、私がそこで座ったり寝転んだりしている、と知った王太子妃様が王子様に良いと採用されたのだ。

私としてはちょっと恥ずかしいけど、赤ちゃんは何でも触るし、舐めちゃうし、口に入れちゃうから良いことだよね。

王太子妃様は「それでも目が離せなくて」と困ったふうでいてその実、ものすごく幸せそうに微笑まれた。


王宮の衣装係さんとお針子さん達には着物を作ってもらった。

この国には四季がある。
一年が始まるのが北の季節。そのあと東、南、西の季節と巡ってまた北に戻る。

前世の国の四季に当てはめれば東が春、南が夏、西が秋で、そして今の北の季節は冬だ。

気温は前世の国の冬ほど低くない、と思う。雪は滅多に降らないし。
でも寒いのだ。なんせ暖房器具が暖炉しかないからね。

そのため北の季節には、北の季節専用の温かい服が必要となる。

私は厚い布地でクルタを作ってもらえればそれで十分だったのだけど。
レオンから他に、正装用と普段着用のドレスを作るよう言われてしまった。

それで正装用はともかく普段着用のドレスは着物にしてもらったのだ。

だって今の私は成長期の子どもなんだよ?

サイズぴったりのドレスなんて、すぐに着られなくなっちゃう。
もったいないでしょう!

着物ならサイズ直しが簡単だし、何年でも着られるはずだ。
ボタン穴を開けないからリメイクも簡単。そして重ね着すれば温かい。

でも普通の着物だけだとちょっと寂しいかな、ということで女袴と打掛も作ってもらった。

これは大成功だった。
お針子さんたちはそれは見事に作ってくれたのだ。
特に打掛に入れてもらった刺繍の見事さといったら!

女袴にブーツを履けば明治時代の女学生になった気分だ。
打掛を羽織れば室町時代のお姫様になった気分。

可愛いし、温かいし最高!
アイシャにも着せてあげたいくらいだ。


と、いうのもアイシャはとても寒がりだった。

侍女さんはずっとお仕着せのドレス一枚で、ストールを羽織ることも、ずっと暖炉にあたってもいられないのだから当然かな。

だけどアイシャは15歳で王宮に上がったと言っていたけど。
それから毎年、北の季節をどうやって凌いでいたんだろう?

エリサと同じ騎士なら、騎士服にコートに手袋付きで寒くなかっただろうにね。


私は考えて、アイシャに背中側にも布があるエプロンを作り着てもらった。

防寒の基本は背中だ。
前身ごろしかない普通のエプロンに比べ、私が作ったエプロンは背中にも布があって温かいだろうし、袖がないから仕事の邪魔にもならないはず。

ここは王宮。だから少し飾りはつけた。
けれど基本は長方形の布の真ん中に穴を開け、そこから首を出して着てウエストでくるりと結んだらはい、着れた――という程度の簡単なエプロンだった。

アイシャは喜んでくれた。
温かいし仕事の邪魔にもならず最高です!と笑ってくれて私も嬉しくなった。


けれど数日後、

「アイシャさんのエプロンを、王宮侍女の北の季節の制服にしましょう!」

と言って、王宮の衣装係さんが鼻息荒く飛び込んでくるとは思いもしなかった。
アイシャのエプロンを見た侍女さんたちに欲しいとお願いされたそうだ。

でもそれ、誰か偉い人の許可がいるんじゃないの?

そう聞いたらなんと既に国王様が許可されていると言われて驚いた。
なんならお仕着せのデザインも変えて良いと言われたそうでもっと驚いた。

だけどせっかく許可をいただいたのだ。
ならば実際に着る侍女の皆さんの要望を聞いてより良く改善しなきゃ。

そう言ったらレオンが侍女の皆さんの意見をまとめる窓口になった。

そうだよね。レオンは私の世話係だもの。
うう。ただでさえ忙しそうなのに。お仕事増やしてごめんなさい。

でも。レオンには申し訳なかったけど、私は王宮で働く侍女の皆さんに感謝されて嬉しかった。

ここで私に出来ることを探していこうと思っていたのだ。
だからほんの少しでも、誰かの役に立てたなら嬉しい。


ねえ。わかってもらえるかな。


私は毎日、空を見上げて祈る。

この幸せがあなたに届きますように、と。


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