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998年目
38 対立 ※レオン
しおりを挟む※※※ レオン ※※※
チヒロは倒れたままでいた僕の前まで来ると座った。
そして僕の名を呼んだ。
《レ・オン》に聞こえる彼女独特の間で。
いつものようにためらいなく呼ぶその声は今、震えていた。
チヒロがそっと腕を広げた。
頭が細く頼りない腕に包まれる。
「もう大丈夫だよ」と。声が頭の上から降ってくる。
何を言ってるんだろう、と思った。
何を言ってるんだろう。
わざとだ。
僕は奴らを貶めるために。
わざと痛めつけられるフリをしていただけだ。
蔑まれ
絶望して自ら死を選んだと見せるように
それだけ。
それだけ、なのに。
「もう大丈夫だから」
震える声、震えている小さな身体。
雫が降ってくる。
雫はそのまま僕の顔を濡らす。
―――何故、チヒロが泣いているのだろう。
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