上 下
72 / 197
998年目

42 対立の終わり ※レオン

しおりを挟む



 ※※※ レオン ※※※



「私からも謝罪させてください。……申し訳ありませんでした」

チヒロに続き、僕も立ち上がると第2王子に頭を下げた。


第2王子は愚鈍ではない。

医局を《あの男》に裏で調べさせても、不正も何も出なかった。
まとめられた記録を見ても。
どんなに不本意でも、こうして引き継ぎをする姿からもわかる。

執務だけ見れば生真面目で、臣下籍にするには惜しい人物かもしれない。

だが、かと言って僕が嫌悪していることに変わりはない。

幼い頃から蔑まれてきた。

ぶつけられた酷い言葉の数々。向けられ続けた憎悪の目。
様々な嫌がらせ。そして………毒虫。

証拠になるような見える跡を身体に残さないかわり
心を深く傷つけられ砕かれる日々は続いた。

10歳の時、シンが僕についてくれるまで。

それでも。

僕はもう報復はしない。

敵にはしない。

王家は数が少ない。
これ以上減れば王家が揺らぐ。
そうと知っていて、それでも僕は第2王子を落とした。

第2王子を落とせさえすれば良かった。
あとは僕が消えた後のことだ。

王家など続こうが滅びようがどちらでも良かった。
国すらも。どうなろうが僕の知ったことではなかった。


けれど今は

僕のしたことで、王家を、国を危険に晒すわけにはいかない。

第2王子には臣下に降りたとて、こちら側でいてもらわなければ困るのだ。

王家の敵になられるわけにはいかない。

王家が割れれば内乱が起こる。

王家が力を無くせば争乱が起こる。

チヒロが危うくなる。

―――彼女を守る為なら頭など、いくらでも下げてやる。


弱くとも
情けなくても

僕はチヒロを守り続ける。

それが『空』の罰を受けた僕の償い。

チヒロをこの地上に降ろした者の

もしかしたらその命を奪うかもしれないと知っていてもなお
チヒロを『空』にかえせず、共にいて欲しいと望む者の

負うべき責任だ。


第2王子は何も言わなかったが、罵ることもなかった。

目のはじに、彼女についてきたジルがこちらをじっと見ているのが見えた。


しおりを挟む

処理中です...