95 / 197
999年目
19 黒い虫 ※エリサ
しおりを挟む※※※ エリサ ※※※
「だめっ!飲まないで!」
チヒロ様が王子様からマグカップを取り上げた。
王子様が驚いて泣き出す。
王子様にマグカップを渡した若い乳母は何が起こったか分からず放心している。
王子様に付いているもう一人の、年嵩の乳母が慌てて泣いている王子様を抱きしめ誰に言うともなく呟いた。
「毒?」
その言葉にマグカップを渡した若い乳母が驚愕し、震えだす。
首を何度か振っていたところでマグカップを見つめていたチヒロ様が否定した。
「違います!……ごめんなさい。驚かせて。埃が入っていたの」
「エリサ」と呼ばれ近づくと、チヒロ様は私にマグカップを渡された。
幼い王子様用の、小さく軽い陶器のマグカップだ。
理由はわからなかったが、チヒロ様のその表情を見て、私も顔が強張る。
チヒロ様は王子様に謝罪し、涙目になって震えていた若い乳母に近づくと、そっと手を取り驚かせたことを詫びた。
そして先程その乳母がマグカップに注いだ水が入っている水差しを暫く見つめ。
別のマグカップに自ら水を注ぐと「こちらを王子様に」と、若い乳母に手渡した。
その様子をそれまで黙って見ていた王太子妃様がおっしゃった。
「……チヒロ。貴女、《何が》見えているの?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
108
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる