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1000年目
01 新年 ※空
しおりを挟む※※※ 空 ※※※
年が変わり、チヒロはまたひとつ歳をとった。
新年を迎えた日の朝。
日が昇るのを見ることも三度目で、すっかり恒例となっていた。
今年は――エリサ、レオン、シン、セバス、テオだけではない。
他の人間とも一緒だった。
国王、王太子夫妻、セバスの妻エスファニア。
他に近衛騎士、侍女、医局の者、王宮衣装係の者、庭師…………。
《王宮の森》の、三年前にひとり降り立ったその場所で
たくさんの人に囲まれチヒロは笑っていた。
新年を迎える日は『空の子』が《日の出を見て『空』に願い事をする》日だ。
そんなふうに、チヒロが《ハツヒノデ》を見ることが《王宮》で働く者から外へも伝わっていたからだろうか。
《王宮》の外でもちらほらと日が昇るのを見ている者たちがいた。
こちらはチヒロに聞いたのだろう。
中にはアイシャ一家の顔に、リューク公夫妻の顔もあった。
《王宮》では驚いたことに王太子妃が《キモノ》を着ていた。
チヒロの着方とは少し違っていたが、《キモノ》の美しさに惹かれたらしい。
産後の身体にも楽だと言っていた。
チヒロもやはり《キモノ》を着ている。
鮮やかな青い《キモノ》だ。
髪を朝焼け色の《クミヒモ》という飾り紐でとめ、結び目に《ツマミザイク》という手法で作られた雲のように白い布の花飾りを付けていた。
そして肩にはいつもの淡い空色のストール。
昇ってきた朝日に顔を、髪を、全身を照らされると。
チヒロひとりではなく全員が両方の手を胸の前で合わせ、少し頭を下げてそれぞれ何か囁いた。
チヒロの囁きは皆の囁きの中にとけていった。
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