空っぽから生まれた王女

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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一度目

02 小国へ




私に選択権などなかった。
行きたくない、と言えばすぐに消されるだけだ。

だけど。
少し笑ってしまった。


お前が喜ぶ護衛?
お前が守れる唯一?


多分、彼のことだと思う。赤い髪と瞳の。
デラが部屋を出入りする時に、ドアの外にちらりと見える護衛の彼。

他の護衛は私を見ない。
偶然、私が視界に入っても無視だ。

でも彼だけは……いつも少し笑いかけてくれる。

それだけの人だ。
それでも、確かに部屋に篭り誰にも会わない私にとって、彼が特別な人であることは確か。


些細なことでしかないはずなのに。
国王様は――お父様は、どこからそんな情報を仕入れたのだろう。

デラではないはずだ。出入りする時のデラには、彼や私が見えてはいないはず。
なら、彼と一緒にいる同じ護衛の誰かだろうか。

―――つまり。脅しじゃない。

デラだけじゃない。
嫁ぐ私に付けられるという数人の護衛と侍女は、全員がお父様の手の者なのだ。

私が、この国の王女として恥ずかしくない振る舞いをしなければ。
私が、変な動きをすれば……彼は殺される。


◆◇◆◇◆◇◆


「お母様も、お元気で」


王妃様――お母様に挨拶を終えて、私は初めて部屋の外に出た。

ベールの下から初めて王宮を見たが、とにかく早く出たいとしか思わなかった。

国を出た時は、身体の力が抜けた。
もう、いつ殺されるんだろうと考えなくていいのだ。
そう思ったら涙が出た。

わかっていた。
周りは皆、国王様――お父様の護衛に侍女だ。

それでも私はこれから小国の王妃になりに行く身だ。
殺されたりしないだろう。

生まれて初めてちゃんと息ができた気がした。


でも旅は楽しめるものではなかった。
部屋から一歩も出たことのない私に、初めての馬車はきつかった。

揺れが酷くて何度も吐いた。酔ったというらしかった。
頭も痛くなった。
座ってばかりでお尻が痛かった。
それでも当然のように休憩も、移動の速度も、私のことなど考えてもらえなかった。


「大丈夫ですか?」


そう言ってくれたのは、いつも少し笑いかけてくれた護衛の彼だけだった。
彼の優しさに救われたと同時に、申し訳なく思った。


ごめんなさい……。


偽物の王女の私なんかに、ほんのちょっと笑いかけたばかりに。
人質にされるなんて、思いもしなかったでしょうね。

でも大丈夫。
守ってあげるわ。

私だって、死にたくない。


国王様に――お父様に命じられた通り、西の大国の王女として小国の王妃になる。


大丈夫。うまくやるわ。

私は心に決めた。


感想 2

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