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一度目
03 顔合わせ
私の夫となる小国の国王陛下にはロゼ・フローラ様という、お妃様がいるとデラに聞いていた。
三年前――国王陛下が王太子の時に結婚したお妃様だと。
けれど二人の間になかなか子が授からないので、臣下から新たな妃を迎えたらどうかと声が上がり――迎えることにされた。
それが私だと。
後から国王陛下と結婚することになる私だけれど、西の大国の第四王女である私の方が、この小国の侯爵の娘であるロゼ・フローラ様より身分が上で。
私が正妃。ロゼ・フローラ様は側妃になる。
「だから堂々としていなさい」と、デラに言われたけど、そんなのは無理だ。
―――ロゼ・フローラ様は、本物のお妃様だった。
美しく、気品があって。声も凛として。
偽物の王女の私なんかとは、纏う空気が違った。
顔合わせだと、豪華なドレスを着せられ連れて行かれた部屋だった。
国王陛下一人に会うのだと思っていた。
だけどそこには国王陛下だけじゃなく、ロゼ・フローラ様も。そして貴族だろう人も、何人もいて。
私は立っているのが精一杯だった。
居並ぶ人たちの視線が、本物のロゼ・フローラ様と偽物の私を比べているような気がして、身体がこわばっていた。
中身は空っぽなのに、外見だけごてごてと飾った自分を嗤われているように思えた。
何も言えないでいる私を
「カタリナ様はあまり人前に出られたことのない方ですので」と、お父様の使者が庇うように言ったのが、情けなくもありがたかった。
早く与えられた部屋に戻りたいと思っていたのに、話し合いがされていた。
私の今後についての話らしかったけど、立っているのが精一杯の私にはよく聞こえなかった。
でもひとつだけはっきりと聞こえた。
正妃となる私は、今までロゼ・フローラ様がされていた政務をする必要があると。
―――政務?
私の息は止まった。
お父様の使者が前に進み出て言った。
「恐れながら。
それは今まで通り、側妃様に担当していただいた方がよろしいかと思います。
カタリナ様は我が国の国王陛下がそれは大切にされていらした王女殿下です。
母国でも一切、政務などされたことはございません。
そのカタリナ様に、この国はさせる、と?
―――カタリナ様に望まれるのはただひとつ、重要な責務だけになさってください」
一瞬、その場が凍りついたような気がしたあと。
国王陛下が小さく「では今まで通りロゼに」とだけ言い、
ロゼ・フローラ様は綺麗なお辞儀をした。
その時の私は、使者が言ったことの意味を全く理解していなかった。
ただ、自分が政務をしなくて済むことを心の底から喜んでいた。
だって私は、なんの教育も受けてこなかったのだから。
結婚式は数えられないほど人がいて卒倒しそうだった。
もう二度とあんなのはごめんだ。
でも、もうこれからは人前に出なくてもいいはずだ。
ずっと部屋に閉じ込められていたことを嫌だと思っていたのに、今度は外に出なくてもいいことを私は喜んでいた。ほっとしていた。
《結婚》の意味を
まるでわかっていない、子ども、だった。
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