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06 執事の懇願
しおりを挟む「スカーレット様!待ってください!」
執務室を出て馬車止めに向かうスカーレットを、執事のネイトは追った。
執事として誰よりもマティアスの側に仕え、マティアスの行動を見ていた。
ネイトはどうしても、スカーレットに言わなければ気がすまなかったのだ。
早足で前を行くスカーレットに、同じように早足で追いながら話しかける。
「待ってください!
確かに。ステイシー様を貴女だと勘違いしていた旦那様は、結婚式で酷い暴言を吐きました。
大勢の人前で。貴女を、ご実家を貶める暴言だ。
もはや罪です。
貴女がお怒りになるのは当然です。
許せるものではないでしょう」
「―――――」
「けれど!
旦那様は、結婚式の参列者を一人一人訪ねて自分の愚行を詫び、
非は全て自分にあり、貴女や、貴女のご実家を決して悪く言わないで欲しいと頭を下げ歩かれました。
国王陛下にも自分の愚かな行動で貴女たち一家を貶めてしまったこと。
巷を騒がせたことを謝罪されました。
そして
貴女にも貴女のご家族にもこの3ヶ月、毎日、謝罪し続けておられる!」
「―――――」
スカーレットからの返事はない。
それでもネイトは続けた。
「ご自分と、ご家族が受けた傷は、その程度のことで癒えはしない。
許すには到底、値しないとお思いなのでしょう。
そうかもしれません。
ですが旦那様が暴言を悔い、必死に償おうとされていることはわかっていただきたい!」
スカーレットは歩みを止めなかった。
早足の速度を緩めもしなかった。
そうこうしているうちに、スカーレットとネイトは馬車止めに着いた。
スカーレットを迎えに来た彼女付きだといういつもの執事の青年と、
スカーレットが実家から連れてきた侍女が少し驚いた顔で二人を迎えた。
ネイトはスカーレットに向け深く頭を下げて懇願した。
「お願いします。ほんの少し。ほんの少しでいい。
旦那様の気持ちを……汲んでいただけないでしょうか」
だがスカーレットは
そんなネイトを見ることなく、構わず馬車のステップに足をかけた。
「―――スカーレット様!」
たまらずネイトは叫んだ。
そして
唇を噛み、ぐっと手を握り、低い声で言った。
「……それほど……。旦那様の暴言が許せませんか。
妹、ステイシー様を《花》。貴女を《お前ではない》と言ったことが」
ぴくり、と。
スカーレットの動きが止まった。
それを見たネイトは
一気に言った。
「美しい妹君と、ご自分の、言われようの格差。
―――それで許せないのですか?旦那様が」
スカーレットは初めて振り向き、ネイトを見た。
そして――くすりと笑った。
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