彼と彼女の日常

さくまみほ

文字の大きさ
上 下
27 / 31

すれちがい1-4 side親友

しおりを挟む
ワタシの親友は、戦友であり、姉妹であり、幼馴染でもある。
彼女の生活環境も、ワタシの生活環境も劣悪で、互いに互いを認めてなかったら、きっとこの世にいない。
それくらい、同じ時間を共に過ごしてきた。

大人になり、雁字搦めだったしがらみからようやく解き放たれた時、大きく背中を押して狭い場所から押し出してくれたのは、他でもない彼女。

一時期、彼女のために何もできないことが、もどかしく悔しい時もあった。
でも、「遠く離れた場所でもあんたがいてくれたから」って泣き笑いの可愛い顔でビデオ通話したのを思い出す。

「そっちに半年行くことになったんだけどさ、今どこ住んでる?」

月一の定例みたいになっているビデオ通話を繋ぐと、疲れてやつれた顔をした彼女から、「家借りるにもなんか手続きどめんどうだから、半年お世話になってもいいですか」とお願いされた。

「えー!やだ嬉しい!いつ?いつから?」
「……うるさい」
「んっもぅ!どんどんオトコっぷり上がってきてない?」
「失礼だよねー。再来月から半年なんだけど、大丈夫そ?」
「いいわよいいわよ!って言っても、ワタシもシェアしてるから、他の子達にも聞いてからでいいかしら?」
「あぁそれはもちろん」
「まぁみんなJapaneseGirl 大好きだから大丈夫だと思うけど♡」


「いや、もうGirlは無理じゃね?」なんて苦笑いしつつ飲み物に口をつける彼女を見て、ビデオ通話のありがたさを感じる。
ここ数ヶ月、なんかあったな、少しずつだけど、自分を大切にしていないなと感じることが増えていった。
多分ワタシじゃないと気付かないくらいの、小さな変化。
この子、隠すのが上手いからね。

確実に痩せてきているし、疲れが顔だけじゃなく雰囲気にも出ている。
言葉の端々に、ワタシがまだ会ったことがない、彼氏の口癖だろう言葉が出てきたり、それに彼女自身が気づいて、誤魔化すように飲み物を口にしたり。

昔から「凪」を意識してる子だったけど、ここ最近は過剰なくらい意識してる。
でも「凪」になれないところが、彼女に戸惑いとイライラを与えているんだと思う。


空港で出迎えた時も、胸に何かを抱えて渡米してきたんだなってすぐわかった。
物理的には涙の跡なんてなかったけど、心は泣いてるって。
抱きしめた体が小さくて、繋いだ手が細くて。
でも、ワタシを見る強い眼差しで、ああまだ大丈夫って思えたの。


会ったことがない彼氏さん、とんでもない爆弾仕込んでくれたわね!
でも、感謝するわ。

だってこの子、人間らしくなったもの。
感情が操作できるものじゃないって、今戦ってるもの。
だからありがとう。
もし会えたら、BIG HUGしちゃう!
しおりを挟む

処理中です...