確かに俺は文官だが

パチェル

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第1章

したいことをしようじゃないか7

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 今日のご飯はくたくたに煮込んだ麺だった。平たい麺でコンソメっぽいスープによく絡んでおいしかった。麺はよく噛めば簡単に飲み込めた。


 食後に片づけをしているセイリオスをまた眺めながらスピカに今日の話をする。
 その後スピカの話も聞いてみると。

「何々? 俺に興味津々じゃんね? しょうがない。話してあげよう」

 仕事の話をしてくれた。今日は厄介なお客さんが来たようで、半分愚痴だったけど。

「でなぁ、そのおっさん無茶ブリがひでぇのよ。医官がその場にいなくてもちょっとは治療できるものとかないのかって。それは俺の仕事じゃないわけでさぁ。だから、セイリオスにも会いに来るんじゃないかと思うんだよね。ヒカリくんもいつか会うことになるなぁ。顔、めっちゃ怖いよ。こんなんで、ひげがボーボーで」



 お疲れだなぁと思い、空いたコップに果実水を注ぐとさらに止まらなくなって、聞いていたらセイリオスがやってきた。


「じゃあ、そろそろ風呂に入るか?」
「お、もうそんな時間か」
「おー、おっふろ、おっふろ! 二人と一緒?」

 お風呂は結構大きくて余裕で大人三人は入れるぐらいなのだ。時間も時間だし、みんなで入るのだろうかと問う。



 スピカがパチパチして。

「え、俺も入っていいの?」

 セイリオスも。

「エ、こいつも入っていいの?」

 と聞く。



 逆にはてなだ。あれぐらい大きいから入ればいいじゃん? むしろ後を気にしなくていいから長風呂できて嬉しいんだけど。

「え、入らない? 時間、ない、なる?」

 そういうと二人はいやいや時間はあるから、入るよ、入る。と慌ててお風呂の準備をしに行った。
 上手く伝わらなかったようだ。





 準備が終わった二人と一緒にお風呂にやってきた。
「ここに脱いだ服を入れて、ここに新しい服を置く。わかった?」

 ヒカリは指で丸を作ってわかったと言い、早速服を脱ぎ始めた。看病のしやすい服なので紐を取ってしまえば簡単に脱げる。それをポイポイ脱いできちんと畳み、言われた場所に置いた。さぁ、準備で来たぞと置かれたいる椅子に座って振り返ればまだ服を着たままの二人が突っ立っている。



「エ、脱がない!? まちがた!?」



 いや、脱ぐ脱ぐ、合ってる合ってるとこれまた慌てて服を脱ぎ始める。あんまりお風呂に入る習慣ないのかもしれないなと思い、二人が服を脱ぐのを待っていた。

 やっぱりすごい筋肉だ。スピカは思いのほか胸筋があるし、セイリオスは脇腹のところがボコって筋肉が出てる。自分もこうなれるだろうか。後でどうやって筋肉を作っているか聞いてみようと興味津々で見てしまっていた。



「なんだろう、俺。めっちゃ恥ずかしくなってきた」
「言うな。あれは恐らく何でもない視線だ。大浴場の子どもと変わらん目だ」



 二人がズボンを脱いでパンツになったところでようやく、なんだか落ち着かない気持ちになってそっぽを向いた。心臓がどきどきする。これは悪いほうの奴だ。落ち着けー。大丈夫、あれは僕にもついてるものだし、二人はきっと大丈夫だから。

「ハイ準備終わったよ。ヒカリくんお待たせ」

 意を決して見た二人は腰にタオルを巻いて立って、ヒカリにもタオルを渡してきた。それを自分も腰に巻いて、いざお風呂へと向かった。



 ただしセイリオスと手をつないで。
 マジで子どもみたいだと思って恥ずかしいけど、念願のお風呂にそんな恥ずかしさも吹っ飛んだ。



 自分用に低めの椅子が用意されていてそれに座る。
 お湯は二人は浴槽から掬うがヒカリは危険だと言われ、セイリオスが桶にお湯を入れてヒカリにかけるらしい。ヒカリはお願いしますと言って目を瞑って下を向くと、何度か頭にお湯がかかった。もういいぞと言われ目を瞑ったまま、顔を上に向けて、顔にまとわりついた髪の毛を払う。
 十分に濡れたところでスピカがシャンプーを手に出してくれた。

「これで頭洗うんだけど、できる?」


 なにおう!できますとも。うんうん頷き、頭をごしごしする。あぁ、毛穴の奥の皮脂が……。この感じ久しぶりだから、気持ちいい。ごしごししているとセイリオスが後頭部をごしごししてきた。

「全部しっかり洗わないとだめだろう」

 よく言われる言葉に少し照れてありがとうと言うと、ん、自分でできるかと任された。
 できる自分の頭だからね。ただしこんなに髪の毛を長くしたことはないので正直洗うのが大変だった。
 手に絡まる髪の毛、抜けていく毛が体にまとわりつく。
 髪の長い人って大変だな。僕もスピカぐらい短くしたいなとスピカを見たら、スピカがお湯を桶に入れて流してくれた。

 スピカが次の液体を手に付けてヒカリの髪の毛をもみこんだ。どうやらリンス的なコンディショナー的などっちがどっちかヒカリにはわからないけれど、それをつけているようだ。

 正直、これいる? 的な気持ちだったけど任せておいた。
 後は体を洗う。自分の腰に巻いていた布でごしごししたらまたセイリオスにごしごしはだめだと言われた。なんか、本当に兄ちゃんみたいだな。

「これな、よく泡立てて掌で洗おうか? え、俺たちはごしごしいてるのにって? 俺たちはいいんだよ。ヒカリくんはほら肌が赤くなってる。掌で洗ってください」

 なんていう。でも手で洗うとどうしても背中が洗い辛いんだよなと、一生懸命手を伸ばしていたらセイリオスが背中を洗ってくれた。
 スピカが横でセイリオスをつつく。

「わぁ、セクハラだ―。うまいこと言いくるめてセクハラしてるー。だまされてるよヒカリくん」

 と楽しそうに言って、セイリオスがアワアワの手を顔面に食らわせていた。
 こいつ! と言ってスピカもやり返して、僕の顔にも吹っ飛んできて、わぁごめんっていうセイリオスに僕もアワアワを投げた。

「おー、やるねぇ。ヒカリくん。怖いもの知らずだ……」

 やったなと言ったセイリオスがアワアワの最上級を作って、それをスピカにぶつけて、なんで俺なんだよと文句を言って、セイリオスの頭を泡だらけにして毛を逆立たせて。この人たち大人なのにおっかしいと思ったら、思いっきり笑ってしまった。

「あははは、二人、変、はははは」


 二人は驚いたような顔をした後、同じように笑った。体が冷えるから早く湯船につかろうとスピカが言って、急いで残りを洗って、三人で湯船につかって体の芯までぽかぽかになった。
 最初はセイリオスの膝の上だったんだけど、ちょっと恥ずかしくて、浴槽のふちを持つから歩かせてほしいってお願いしたら、下ろしてくれた。


 気付けばタオルが腰についていなくても何にも気にならなくなっていた。


 むしろ観察してしまうぐらいの余裕も出てきて、二人のお腰についてるものは身長に見合ってると言うべきなのか、だから自分のと比べても意味はないと言うべきか、自分も身長が伸びたらそうなるだろうか。
 兄ちゃんやお父さんや友達や先輩や色々考えて、個人差があるからこればっかりはしょうがないかもという結論に至った。

 とりあえずモリリンがよくやっていたご利益がありますようにの意を込めて手を合わせておいた。

 モリリン曰く神様級のものに出会ったときは手を合わせておかないと、無礼に当たるかもしれないだろうという意味不明な、しかし刷り込まれた変な信仰をヒカリはついついやってしまうのだった。
 兄ちゃんにはやめなさい、おバカって怒られたけど、ついついやってしまう。

 案の定セイリオスにもやめようねと言われスピカにもそれにはどういう意味があるのかな? 誰に教えられたのかな? とちょっと怖い顔で聞かれたので難しい、友達と言っておいた。




 お風呂から出て、着替えを見ると、さっき置いておいたものとちょっと変わっていた。あれ、あれれ。この下着は!!

 おむつじゃない。セイリオス達が履くようなやつじゃん。ちょっと感動しながら着替えて、居間のソファのところに行くと瓶に入った牛乳が置いてあった。

『牛乳!! え、飲んでもいいの? これ誰の?』

 と聞くと二人がきょとんとしていたので慌てて

「これ、飲む? よい?」

 と言い直した。

「あぁ、牛乳? 飲んでもいいぞ。好きなのか?」

 うんうん頷いて、瓶を手に取った。

「イタダキマス」

 と言いながら開いた瓶片手に、片手は腰に手を当てる。ゴクッ。
 喉に冷たい牛乳が流れ込んでアツアツだった体がちょと冷える。
 すごいキンキンに冷えてる!

「ぷはぁ―――――。おいしぃ」

 一気飲みしてしまった。この牛乳めっちゃおいしい。

「アリガトー」

 この世界にもお風呂上りに牛乳を飲む習慣があってよかった。なんだか仲良くなれそうだな!この世界!等とはしゃぐヒカリであった。



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