確かに俺は文官だが

パチェル

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第4章

忙しいのは変わらない13

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 ふぅむ……。こうやってみるとガムってどこで売っているんだろう。
 ヒカリは馬車から流れる景色を見ながらガムがどこで売っているのか考えていた。


「ヒカリ、仕事の方はどうだ? 一人で回れているか?」
「うーん、予定が少し、おくれてるけど。まにあわせる!」



 飴屋さんにはなかったし、行ったことのあるお店にはおいていなかった。

「そうか。間に合いそうになかったら早めに声かけてくれ」
「りょーかいですっ。課長さんにもいわれたよ、それ」


 そもそもどういった用途のガムなのだろう。
 日本では記憶力が向上するとか、歯茎を健康にするなどの目的のガムも出ていた。


「ヒカリ、他に何か相談事とかないか? 予定が遅れてるのはどうしてか聞いてもいいか?」
「あー、……きく? これは、とっぷしーくれっとけど」
「トップシークレット、または重大機密事項、マル秘とかってことか?」



 ということは医療品を売っているお店だろうか。


 そこで考え事をやめてセイリオスの方へ振り向く。



 冬用のローブコートに身を包んだヒカリはボタンを弄っている。
 クルミボタンが一押しの一品であり、スピカからの贈り物だ。


 相談事は相談しても仕方ないようなことなので言わないでおこうかと思ったのだが、指導係としては進捗が気になるのだろう。


 エリオット先輩にも毎日聞かれちゃってるしね。


 本当は予定より早く終わらして、修羅場っぽい皆さんのほかの仕事が任せてもらえたらなとか思っていたのだが、そう簡単には事は運びやしない。



 予定は未定。あくまで推測。

 だから遅れるのは仕方がないと思うのだが、聞いてくれるというのなら話してみてもいいだろうか。





 思えば最近のヒカリはローブに身を包んでばかりだ。

 王城で働く人には一律ローブが支給される。


 これは正式な場などではローブかマントを着用することが決められているからだ。
 誰に配布されたか記録もばっちりされているので、一着一着にシリアルナンバーも入れられている。


 このローブを勝手に売ったり、買ったり、資格がないのに着用すれば身分偽造になるそうだ。


 ただし、正式な場ではないときは比較的自由なので職業によってまちまちなので王城や研究では様々な服装を見かける。


 現にスピカは見るたびに白衣で。医務課はほとんど白衣を着用している。
 戦闘職は追加で戦闘服とマントを支給される。


 魔道具関連課は特に自由な方で、ローブなんかは便利に使われている。
 受付業務をするときに、この格好はさすがまずいかなという場合に上から羽織っておいたらばれないっしょ! というときによく着るらしい。



 課長さんはそれすら着ていないことも多い。


 勝手にお付きの人とか、魔道具関連課の職員とかがさりげなく身だしなみを整えている。
 一回、泊まり込みで起きたてのケーティに会ったが、あの細い髪の毛がこれでもかと絡まってシャツを着ていなかったので、下に着るタンクトップの上から白衣を羽織って「あれ、もう朝かぁ。おはようヒノくん!」と朝らしからぬテンションで声をかけられた。



 扉から出てきたお付きの人がもう一回課長を部屋に戻して、しばらくしたらいつものサラサラヘアーの課長が出てきた。

 深夜手当とか出るのだろうかとヒカリは思った。



 それから周囲を見てみると、ヒカリが思う会社員とかの様にスーツを着用するということはまれなようだった。


 偉そうな人とかは着ている率が高そうだけど。
 現にケーティが整えられた服装はいつもスーツだし、難民部部長もスーツだ。


 動きやすさ重視なのか、セイリオスは汚れる作業の時はよくつなぎを着ている。
 そうでないときは大抵が動きやすい私服。
 ほかの人もそうだ。動きやすい私服の上に白衣を着用している。


 そしてそういったつなぎや白衣、ローブをヒカリももらったのだ。


 そりゃ、うれしい。すぐ全部着てみた。

 で、エリオットが言うには、ヒカリは常にローブを着ておきなさいという事だった。



「別に下に何着ていてもいいけど、ローブは魔道具関連課以外に行くときは常につけておくこと」

 このローブだけは王城からの支給なので、これが身分証明代わりになるのだろうとヒカリは頷いた。
 たぶん、これを着ていないと子どもが迷子になっていると思われるのだろう。


 そう思われる理由の一つが身長なのだろうなとヒカリは思っている。

 ヒカリの身長は伸びる気配が全くと言っていいほどないのだ。
 だから依然、ちびのまんま。



 敢えて言う。
 ちびのまんま。
 背の順に並べとか言われたときは一番前になる。



 少しだけ気にしている。



 燈兄ちゃんもお父さんも高校生頃からぐんと伸びたと言っていたからそんなに気にしていなかったのだが、ここにきて一ミリも伸びていないのはやはり気になるわけで。
 しかも平均身長が日本よりおそらく高いであろうこちらの国の人々の中ではより一層目立つのだ。





 ちっこいのがうろうろしているぞ。


 迷子と思われるのは、さすがに気まずい。




 
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