確かに俺は文官だが

第５章

前途多難なことが多すぎるが、それでもやるつもりです18

　





「あぅ、うぐぐー、まてまって、でちゃ、う。から！　すぴ、か。とまって、やっ」



　暴れそうになる足を気合で止めてそう言うと、スピカが口に軽く含んだまま、いや？　気持ち悪い？　と聞くから、首をふるう。


「お、おいしくない、からっ！」
「そ、じゃあ、続きするね？」
「あっ！」



　舌でぬるぬる先をいじめられたと思ったら、くぽくぽと音がして、どうやってるのかわからないけれどたぶん全部食べられて我慢できない。
　あ、ダメだ、我慢できないと思ったらスピカの口に突き上げるように腰が浮いてしまった。


「あ゛ぅ―――っ、はぅ！」



　びくびくと出し切って、息が整っていないのにスピカがそのまま下の方を刺激し始めた。
　一つずつ含んでコロコロ転がすようにするから、またゆっくりと自分のペニスが頭を上げ始める。



　ツプリと指先が入って来た。



「さっき洗ったときも思ったけど、中、気持ち悪くなさそうだね」
「ん、ん！　すぴかのゆびぃ。だ、から。はっ！　まって、セイリオス、みみぃ、まって」
「じゃあこっちか？」
「ちくび、やあ」



　中への刺激は緩く、少しずつじんわり、スピカの温かい熱が広がるように。


　その代わり外への刺激は多く、足なのか、胸なのか、お尻とペニスの間なのか、耳なのか。いろんなところでたくさんの刺激が一度にやってくる。



　肌がじんわり汗をかいて、それでも熱くて、口からも息をたくさん出すけど熱が上回って頭がゆだる。

　今までこんなに丁寧に体に熱を灯され、愛を溢れさせて、二人に愛されたことのないヒカリの体はいとも簡単に。










　堕ちた。








　もっと。



　ゆだる頭が理解するのは欲しいものだけ。








　知っているけれど知らない熱。



　二人が沢山触れてくれているのに、違うところに触れられたら、触れられなくなったところが寂しくなる。






　いくつ手があっても足りない。
　だから裸になるんだと思って、ほとんど意味のなしていない腕に引っ掛かっていたタオルを力の入らない手から滑り落とした。




　ゆだる体が拾うのは悦びの熱、それだけ。





　この耳が拾う音も、どの音なのかわからなくてセイリオスの胸に頭を擦り付ける。
　なのにそこが違うから泣きそうになった。




「やあ……」
「どうした？」


　セイリオスが耳を舐るのをやめて、顔を覗き込んだ。
　声に確かに悲しみを見つけたから。

　泣きそうなヒカリが顔をあげてセイリオスを見る。




　どうして。なんで。



「何でセイリオス、ふくぅ、きてるの？　これいや」



　セイリオスの肩に触れて布を思いっきり掴む。

　これが邪魔だから、セイリオスとぴったりできない。
　ぐいぐい引っ張るけれど、取れない。首元までぴっちりボタンなんかつけているからだ。



　ばか、セイリオス。

　せいりおす、ばか。とおい、よぅ。




　後ろ手でセイリオスの服を掴んで一生懸命服をはがそうと、掴んで縋りつくように鼻をそこにこすりつけて、思っている言葉がこぼれてしまっている。




「はよ、ぬげ」


　スピカが言うと同時に固まっていたセイリオスがシャツをガバリと勢いよく脱ぐ。ボタンが飛んでカツンカツンと床に散らばる音がした。



　直接触れる肌からセイリオスの匂いがして、嬉しくてそこに額を擦り付けて思いっきり首を伸ばして。



　鎖骨を噛んだ。




　がじがじ。


　服を着ていたセイリオスが悪いから、仕方がないとガジガジして歯でセイリオスを感じる。
　時々ペロペロと舐めてもおく。がじがじばっかりだと痛いかもしれないから。




　安心して噛んでいるとお腹の中でスピカの指がある所をコリコリする。

　それが気持ちよくて気持ちいい分だけセイリオスの鎖骨をかじった。
　ペニスが緩く持ち上がっているけどそれよりも、もっと欲しい所があることに気付く。



「ね、ねね、スピカ？　」
「んー？　三本くらい入ったけど苦しくない？」



　ヒカリは自分の中を怪我しないように広げるスピカを少し上から見下ろす。遠い。
　手を伸ばして自分の広げられた場所にそっと手を添えた。



　くに。




　お尻の片方を持ち上げるようにして、スピカに見せる。


「ね？　ここ、ぱくぱくしてる、でしょ？　おねがい、きて？　ほしい、よぅ」



　切なくてパクパクしているのが自分でもわかる。


　だから見えるように少し腰を持ち上げて見せた。
　体の中でくすぶった熱が導火線に火をつけて、欲しいとヒカリを操っているに違いない。




　もう、どうしても欲しい。


　入っているスピカの指が止まっているから、そこに自分の指を添えて抜かせようとした。
　入っていたら次が入れないからごめんねと言いながら抜こうとしたら、それはそれで気持ちがいい所に当たるから、自分の口から声が出て抜けなかった。



「ううー、ゆびぬけなぃー。きもちぃか、ら。でも、ほしいよう」




　スピカの蟀谷に青筋が浮かぶ。

　ヒカリから目を逸らさないようにずっと置いてあったままの小鉢から液体を片手につけて練ると、輪っかにした指に膜を張らせて、それを自分のペニスにシャボン玉を付けるかのようにつけた。



　ヒカリはくすぶった熱のせいで、ちょっと涙目になりながらスピカのぺニスの先を見た。
　スピカもいつの間にかヒカリと同じでタオルが落ちていた。


　ほとんどはスピカの手に隠れて見えなかったけれど、ちらりと見えたそれはだいぶ力強く脈打っているように見えた。
　スピカのお臍を隠すようにピタンとしている。



　わー、かっこいい。
　あんなにまっすぐ立つんだなあ。すごいなあ。


　つよそう。




　それを自分で掴んでヒカリの方へ屈みこむスピカに早く来てほしくて手を伸ばす。


「ごめん、なるべく優しくするから、あんまり煽らないでくれる？」
「あお？　なに？　うぅ？　いれて、くれない、の？　」



　ここまで来て何かよくわからないこと言われて、ヒカリの目を覆っていた膜が涙になってしまった。



「すぴかがきもちくしたのにっ！」



　何で謝るのかわからなくて、欲しいのにちょっとだけしか見せてくれないしでそう文句を言ってしまった。



　スピカが少し上を向いて、息を吐きながら何かを言っているがヒカリは熱くてそれどころではない。



　したいことしていいって言ってたもの。
　わがまましてもいいって言ってたもの。



　頭が入れて欲しくて、体が正直に動いた。そろりとスピカの太腿に自分のお尻を擦り付けてみた。
　ペニスはスピカが掴んだままだから上を向いて入れられそうになかった。
　だからムキッて膝からのびるかっこいい筋肉にパクパクする自分のお尻をくっつけた。



「へへっ」




「マジで、チンコが苛立つから煽んなって言ってんのに、くそっ」

　息を吐きながら呪詛を唱えるかの如く吐き出されたスピカの、ヒカリがめったに聞かない荒い低い声で出された言葉は本人の耳には届かない。



　それでも寸でのところで歯を少し食いしばりながら、スピカの手がヒカリの腰を掴んで、照準を合わせる。


　ヒカリの様子を一つ一つ見て進めるから、スピカが先にするという話し合いをしたのだ。
　二人で一人を愛するのだから、お互いの嫉妬でヒカリを疲れさせるわけにはいかない。



　見逃すわけにはいかない。

　落ち着け、俺。唱えながらヒカリをもう一度目を開いて前を見る。




　ふにゃっと笑っている。





「わ、きたぁ。あっ」
「そこで素直に喜ぶか？」
「あ、おき、あ、あ」


　つい、セイリオスも突っ込んでしまうくらい喜んだヒカリは、一転して唇をかみしめた。
　それをすぐにセイリオスが止める。


「やっぱ、ちょっと、きついんじゃん」
「すぴかのさきっぽ、おおきぃ」
「知ってるから、気を付けてたんでしょう」



　スピカがフーフーと息を荒く吐いて止まってくれた。辛そうなその様子にヒカリの眉がへにょんと下がってしまう。


「すぴか？　だいじょうぶ？」
「えー？　おれ？　大丈夫、大丈夫。あ、こら。無理に動かさない」



　ヒカリが自分で腰をぐっとスピカの方に進めるから、腰を掴んでいた手に力を入れて止める。


「急いでやっても痛いだけだから、ちょっとずつ」
「やぁ、だっ。だってすぴか、つらそう、だよ？　なんで？　はいらない、のっ？」



　今までの人はヒカリの中に入ったら、皆、お構いなしに腰を振って、気持ちいいって言って、果てて。すぐにまた入れて。
　こんなにつらそうな顔している人はいなかったのに。


　それが浄化棒に含まれている媚薬のせいだとしても、ヒカリにとってこんなに苦しそうにセックスする人はいなかった。



　気持ちよくないのかもしれないと思うと悲しくなる。
　ヒカリ一人だけが気持ちいいのは。
　さみしい。



　スピカがニッと笑って、握りしめていたヒカリの手を取ってチュウをする。


「ヒカリに教えといてあげるけど、今のこの状況も俺的にはかなり、いいから」
「いい？」
「ちょっとずつ入るのも楽しいってこと、かな？」
「そうなの？」
「そうそう、我慢したほうが後で楽しいってこともあるでしょ」
「そう、かな？……そう、かも？　ふふ、ほんとだ、ね」



　ヒカリが笑うとグッとスピカがもう一歩入って来た。

　ぬちぬちと音がして、スピカがほんとに少しづつ入り込んでくるのがわかってくると、先が中を擦ると気持ちよいのがわかって、もっと中に入ってほしくなった。

　スピカが時々ぐっと息を詰める様子が見えて、それが心臓に来る。



「セイリオス、さわって？」


　目に入った自分の胸の乳首が、まだ赤くてピンと立っていて気になった。そこを自分で撫でてみて、物足りなくて、後ろを見上げてセイリオスにそう言うとヒカリの上に影ができた。


「んぁ、あ」

　乳首に触れられると同時にセイリオスが頭をヒカリの方へ傾けて、肩の傷を舐めた。
　ちろちろと舐められると、さっきまでじんじんしてピリピリしていた先っぽが指の感覚を容易に拾った。


「あ、あ、セイリオス。ちゅっちゅしな、や、は、あてないで。きもちっ、いぃ！　ん、あ、またぁ」


　セイリオスが要望通りに胸をコリコリとつまんで刺激を与える。
　思わず舐めているセイリオスの頭を腕で囲うように掴んだ。セイリオスの耳元に顔を寄せて、波をこらえる。



　セイリオスはそのまま首筋を食べるように愛撫し始めた。


　そうこうしている間にもスピカは進んでくるから、そちらも気持ちよくて腰を掴んでいた腕に手を伸ばした。
　それをガシッと捕まえられて指と指が隣り合う握り方でぎゅっと握られる。


「ヒカリ、ここちょっと強くいくね？」
「つよく？」



　聞き返したらセイリオスの指がぐりぐりと乳首を刺激して、思わず腰を逸らしたのと合わさってスピカが力強く腰を押し進めた。


　ぐぽっと音がしたかと思ったら、ぐぐぐと勢いよくペニスが中に入ってくる。
　奥まで入って息が一瞬止まった。



　スピカも息を止めて何かに耐えて、大きく息を吐いた。


　そこでそのまま腰をゆるゆると動かされるから、ヒカリの中のしこりがこしこしと刺激されてとんとんと奥も刺激されると、手で隠せない口から声が漏れる。



「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「あー、ごめん。ヒカリの中気持ちよくて、我慢できそうにないかも」



　スピカが珍しく自信のなさそうな顔で、そんなことを言うから心臓がキュンキュンして死にそうになった。



　かわいい。



　握った手をぎゅっと強く結んだ。



「すき。すき、だから、いっぱいして？　がまん、しない、で」



　スピカがまたキスをした。