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10 嘘ってどこから?
しおりを挟むなんやかんやであの「ハロウィーンで羽目外しちゃいました、てへ。で、すまないよね。君たち。路上でお酒飲んでたでしょう。禁止されているのも知っていたよね。どうしてかわかる? 君たちみたいに羽目とか、やんちゃで済ます大人が大勢いるからだよ。自分たちの行いで君たちが恥ずかしい思いをして、やだ、恥ずかしくって外歩けないよ、だけなら別にいいけど、迷惑している人がいるんだよね。さらに言うと、捕まるようなことしたんだよ。人に対して暴行を加えて、傷をつけて、その人たちが外歩けないくらいの傷つけてさ。どうするつもり? 人の将来を奪うようなことしていいの? ハロウィーンってさ?」とお巡りさんが説教していたハロウィーン事件から早一か月後。
俺は図太いからか、それとも佐々玄が助けに来てくれたからか、特に何にもなくへらへら過ごしていた。
テレビをつけると、ニュースが流れていた。
どうやらどこぞの大手企業の誰それが捕まったとか。
政治家も絡んでいるとか。
俺はそれをソファの上でゴロリと転がって眺めている。
今日も今日とて、俺の知らないところで悪人が捕まったようだ。
社会的弱者を食い物にするなんて、重い刑にしてほしいとか、あんな誠実そうな顔してあんなことをしていたなんてとか、知らない人に色々言われている。
俺はそれを見ながら昨夜の佐々玄を思い出す。
昨日も佐々玄は俺の家に来て、やっぱ落ち着くなー、慎ちゃんの家ってとごろごろした。
ちょうどよく汚くって混雑してて、よく見たらへんなものでいっぱいで面白いのが。
とか褒めているのかどうかよく分からないことを言う。
テレビの上に置いていた人形たちをつまんで配置換えをしていた。
食後に今日も呑むかと買っておいたお酒を出そうとしたら、佐々玄がまじめな顔で座り直した。
イカそうめんを口にくわえたまま、俺はビールの缶を開ける手を止めた。
これはあれだ!
久々の嘘の予感?
俺もしっかり座り直す。
佐々玄は何度も息を吸っては吐いてを繰り返して、震える手をぎゅっと握りしめた。
「慎ちゃん。俺、今日どうしても伝えたくて、聞いて欲しいことがある」
「おう、何?」
こっちを見た佐々玄の唇の色の悪さに目を奪われながらも、耳はしっかり声を拾う。
「今まで、嘘ついたこと、あれ、全部嘘なんだ」
「え? うそ? どれ?」
「全部。うそはうそだから」
「全部?」
「ごめん、慎ちゃんの純粋な気持ちを、俺、からかってた。俺の嫌いないたずらで。ごめん」
俺は今まで一度騙されて嘘だと言われたものたちを思い出す。
あれも?
それでパニックになって、今の今まで呆けるようにソファに横になって考えていた。
いつの間にか佐々玄はいなくなってるし、俺の手元の大容量イカそうめんパックは空になっていたので、顎がかなり痛い。
俺が慎ちゃんに嘘だと言った本当のこと。ちょっとぼかして伝えた本当のこと。
「俺の家、昔は結構金持ちだったんだ。でも、親は俺のこと子どもとなんて思ってないんだ。毎日帰れば、母親みたいなことさせられてて、帰りたくない」
「俺さ、悪い組織に脅されててさ。俺が命令に従わないと弟が危ないんだって。だから、中学生の時から手伝わされてて」
「俺、実は知らないおじさんにいたずらされた事あって。それからネクタイ締めてる人間が苦手で。だから高校も学ランのところにしたんだ」
全部本当のこと。
そう伝えたら、慎ちゃんは呆けたように動かなくなった。
頭の中で、全部くっ付けたんだろうか。
嘘だと言った話を。
俺の親父は気が狂っていたのだろうか。
俺は精通を迎える前に父親にいわゆるいたずらをされていた。
どういえばいいのかわからなくて、父親が変なことをしてくるんだと伝えたら母親が俺を病院へ連れて行った。
「虚言癖があるみたいなんです」
父親が泣きながら母親にこいつは俺たちでちゃんと治してやろうなと伝えて、母親も泣いてそうだねと抱き合っていた。
その日、父親に母親と同じ役割を最後までさせられたことで俺は諦めた。
俺の虚言癖はすぐに治った。
母親は父親の言うことを絶対だと思っていたから、仕方がなかったのだと思う。
20歳も年上の男とお見合いで結婚だから、まぁ、何かしら複雑な事情もあったんだろう。
お家の柵と言う奴なのかもしれない。
だから、諦めた。
母親と父親を。
でも弟は可愛くって、それだけは諦められなかった。
だから、俺の虚言癖はすぐに治った。
明るくっていい子。
笑い声の絶えないお家。
ちょっと大人しいけど模範的な長男。
少し元気が過ぎるけど、明るい弟。
それを見守る家庭的な父親。
御淑やかで大人しめの母親。
家は裕福で、ピアノなんか置いてある。
俺はいつもきれいな服で、生活に困ったことなんてない。
それが正しい。
それ以外は嘘だから。
俺が中学生になって少し体ができてきたころ。
父親はもっとおかしくなった。
母親にはできないことを俺にするようになった。何か嫌なことがあって俺に八つ当たりをしているのか、俺は大きな声を出さないように耐えた。
父親も完全に理性をなくしているようではないから、傷跡はいつも見えないところにつけられた。服を着れば隠せる。でも、それも怖かった。だって、こんな傷、つくなんておかしい。
傷をつけられないところには、吸い付かれて痕が残された。
それが見えるたびに気持ち悪くて。
俺は普通になろうとしているのに、父親がそうさせない。
狂ってるのか、狂ってないのか。
よくわからない存在が一つ屋根の下にいる状況は俺の思考を奪っていった。
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