WUSOH〜裏路地のリーダー

ラドリー

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14話、戦闘メイドと筋肉フェチ

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「え、今日はお出かけするの?」
「あぁ。ミクはゲームでもしてくつろいでてくれ」
「うん!寂しいけど、待ってる!」
二カーッと、屈託のない笑顔を向けるミク。
あぁ、なんだろう。アゲハみたいだな。癒される。
「何しに行くの?」
「人に言えないようなことをしにさ」
「ひどい!私に隠れて浮気するのね!」
「うっ……演技だとしても心が痛むぞ……姉貴に会うだけだよ」
「え?私も行きたい!」
「ダメだよ、マジでダメ」
「会いたい会いたい会いたいー!!」
「ダメだっての。ミクが全裸で土下座してもダメだ」
「脱げばいいの?」
いやそうじゃなくてだな……いやちょっとマジなんで脱いでんだよその下着にかける手を止めろ!
「むー、わかったよぅ。行ってらっしゃい!」



「………」
「おーそーいーねー?」
「……あの」
26日は日曜日。お昼前の11時。
とあるラブホテルの前で男を待つ女性が2人。
銀髪の短髪、ブルーの瞳。それらはつまり俺と同じ記号ではあるが、それはメイド服を着ていて、その青い瞳をサングラスで隠している。
「ねーすわこちゃーん、とりでおそいねー」
方や黒髪ぱっつん、メガネをかけて、スワコにしては珍しい超ミニスカート。上はパーカーを羽織っているが、スカートの下は生足だ。
「……あの、どちら様ですか?」
「とりでのおねえさまだよー」
「……ひぇ」
いや、俺姉貴に呼び出されただけで、スワコがいるとか聞いてないんだけど。
「すわこちゃーん、すわこちゃんて、きんにくふぇちなんでしょー?さんぴーしようぜさんぴー」
「ちょっとまじスワコにちょっかいかけんなよまじで!」
その珍しすぎるツーショットに腰が引けて隠れていた俺は、ようやく2人の元に顔を出す。
「……あ、ジョージ君」
てってけてー、と寄って着て、俺の袖を掴むスワコ。
「おー、わがおとうとよー。いつまでかくれてるのかとおもったぞー」
「まじお前なんて格好してんだよ。銀髪グラサンメイドってドイツの戦闘メイドかよ。葉巻加えてチェーンガンぶっ放すのかよおい」
「めいどふく、すきだろー?」
「お前もどうしているんだよスワコ、どうせ昨日、マリアに何かそそのかされたんだろ」
「……いや、あの、良質な筋肉に甘噛みできるって聞いて」
「お前急にやばい奴になったな」
「ほらー、2人ともはなしてないでいくよー?おねーちゃんはやくきがえたいー」
「突っ込みがおいつかねぇよ」


俺たち姉弟は誘拐されたのち、監禁されたことがある。
母方の祖母がドイツ系の起業家だったこともあり、身代金を要求されていたらしい。
その後、ニュースや新聞では姉の名前は開示されず、小学校を卒業するまでには転校して言った。
母は父親とその父に引き取られた俺に姉への接近禁止命令を裁判所経由で提出し、お金と手塩をかけて大事に育てている。
だから、本当は俺のアパートでグータラするのはいけないことだ。
ましてラブホテルに一緒に入るなんて。
「……ジョージ君、ごめんね?」
部屋につくなり突き飛ばされ、ベッドに押し倒される俺。
スワコははぁはぁと興奮しながら俺に跨る。
「おい?スワコ?とりあえず落ち着けよどうした」
「……吹っ切れたわ、おねーさんいても関係ない」
「そんなことで吹っ切れるな」
「……さぁはやく脱いで。ほら、ほらほら、脱げ、おら脱げ!」
「お前どんなキャラなんだよ!シャツのボタンを外すな、ちょ、なんでこんなに力が強いんだ」
「ちょっとー?わたしのめのくろいうちはー、ほんばんこういはえぬじーですわよー」
いやまじ助けろよ。
これもう事案だぞ事案。
「……おおー!」
「おーじゃねぇよ、大胸筋みて興奮すんな!」
スワコはメガネを投げ捨て(!)、パーカーのファスナーを下ろす。
下は裸だった。
「っ……だめだ、今日のスワコ全てがヤバイ」
「……スカートの下も、ノーパンだよ」
「どんだけ楽しみにしてたんだよ」
ちなみに、今回の件を仕組んだ姉は、メイド姿でそれをまじまじと眺めていた。
「あのー、そこで何みてるんだ?」
「いやねー、わたしもそこまでよめなかったというかー、しょうじきどんびきしてる」
姉貴は壁の方を向いて、安堵のため息を吐いた。
あぁそうか、と俺は納得する。
今日の件は、甘えたくなった姉を甘やかすのではなく、仕事を終えた俺に対してのご褒美だったんだな、と【眼】に繋ぎっぱなしの俺は悟った。
たった今、ゲンゴロウの死体が発見された。


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