運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

8. 初めての朝

8-1 言ってしまえ

side シキ

「トレンドに入ってる」会社の昼休み、同僚が言う。「なんや？」「ほら、hikariだよ、知ってる？」あたりまえや、俺のモンやぞ。心の中で呟いて「あぁ、あのＣＭの子やろ」と無難な返答。「今朝の生放送がさ、話題になってんだよ」見せられたスマホには「マジ天使」の文字が。高橋…あいつ、わかっとるやないか。ヒカリは天使や。「ほんと、綺麗な顔してるよなぁ。そこらの女よりイケてる」「せやな」…あぁ、これでまたヒカリが遠くなる。不安が募る。早よシてしまいたい。心だけでなく、あの体に俺のモノだと刻み込みたい。ヒカリとお休みのキスをして、ヒカリをこの腕に抱いて眠って…朝まで一緒にいられたら。

［俺、がんばったんだよ］［そうみたいやな。録画してきたから帰ったら見るわ］隣でメシを掻き込む同僚は俺のメッセージがhikariに宛てたもんやなんて思いもせんやろ。［でね、俺、カッコよかった、って言いそうになっちゃった］［え？］［あのね、マニキュア、塗ってる方が俺だよ、って言ったの。そしたら相手も男の人ですか、って聞かれて］［ほう］［カッコよくてドキドキした、って言いそうになった］…言うてくれ。俺のものやと。この顔も体も、声も心も広瀬志貴のものや、と言うてしまえ。叫んでしまいそうな焦燥を抑えて［言うたらびっくりされるで］と返事を返して…その日から俺はヒカリに連絡をとれなくなった。