自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

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12.週末のふたり

52.愛しい

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毎週末の約束を取り付けて…なし崩しに同棲、なんて、そう上手くはいかんやろなぁ…、とにかく今夜も葵はここに“お泊まり”や。
お泊まり、かぁ……まだそんなふうにしか俺と夜を過ごすことを表現できない15の葵。
俺にはそんな葵の“ちゃんと大人になりたい”という願望を叶える責任がある。
……いろんな人から見張られとるしな。
無邪気に笑いながらウサミミを引っ張っとる葵に「買い物行こか」と声をかけた。

「葵が学校帰りに気軽に来られるように、俺ン家にいろんなもの置いとこ。着替えの服とか歯ブラシだとか…食器もお揃いで欲しいなぁ。せや、シーツも忘れたらあかんな」
「…あの…常識の範囲ですからね?」
「わかっとるて。俺の常識の範囲やろ」
わかってんのかなぁ、なんてブツブツ言っとるけど、聞こえないふりで車を走らせる。
「どっか近場にドライブ旅っちゅうのもええなあ。行きたいとこあるか?」
「ん…どこでも。智秋さんと一緒なら、きっとどこでも楽しいです」
まったくホンマに…俺は葵の掌の上や。

「こんなに買ってもらったりしたら困ります」
「困らんやろ。俺が葵に着せたいんやし。葵に金を使って何が悪いねん。わかっとるか?結婚したら家計はひとつになんねんぞ?」
「けっ!け、結婚したら…」
「せやで?俺と結婚すんねやろ?ちゃうんか?」
「……したいです、結婚…大人になったら。待っててくれますか?」
「聞かんでもわかるやろ。待ってる。俺が我慢のできる男や、て知っとるやろ」
嬉しそうに細めた瞳の甘さに、俺はまた葵に惚れ直した。

「もうこんな時間か。どっかでメシにするか?」
「えっと…智秋さんと一緒にご飯作りたいです。だから帰りましょう?」
「帰る……。せやな、ウチに帰ろ。“お泊まり”じゃなくて、“帰る”やで?俺のウチやなくて、俺達のウチに」
「!!そっか…はい!帰ります!僕達の家に」
俺達の家はまだ週末だけ。
なんぼ見張りが居ったとしても毎日にしてしまいたくなりそうで、俺はなけなしの自制心を総動員した。

「2人っきりやねんから、もっと砕けてええんよ?いつまでたっても丁寧語やんか」
「だって…ううん、うん。ちょっとずつ頑張る」
「そろそろチアキて呼んでくれんかなぁ」
「それも…えっと、えっと…智秋、が大好き。これでいいですか?」
初めての呼び捨てにわざわざ“大好き”を足してくれる葵。
その緊張のまま、結局口調が戻っとる葵。

雰囲気のええ場所だとか、特別なシチュエーションだとか、そんなもん要らんねん。
愛しい、っちゅうのは、こんなふうに2人でテーブルを囲んでメシを食うとるだけの、こんな夜に似合う言葉やと俺は初めて知った。

「やっぱりシーツ買うといてよかったなぁ」
寝起きの顔を赤く染めて、また布団に隠れようとする葵。
“愛しい”は、こんな朝にも似合うねん。

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