自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

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13.見張りの皆さん

53.斉藤の場所

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小学校3年の時に葵と同じクラスになった。
2人の兄ちゃんと1人の姉ちゃん、2人の妹がいたウチに、弟が産まれたころ。
父ちゃんは昼間は大工として、夜は夜で足りない家計をなんとかするためにコンビニでバイト。
赤ん坊の弟と、まだ保育園に通う年だった妹達の面倒で、母ちゃんは大忙しだった。
中学生だった姉ちゃんが母ちゃんを助けて、慣れない家事をしてたんだよな。
上の兄ちゃんは中学を出て、父ちゃんの親方のところで大工見習い、下の兄ちゃんは6年生で、もうオレとは遊んでくれなかった。

葵の母ちゃんとウチの母ちゃんが同じスーパーでパート仲間だったことがあるとかで、赤ん坊を抱いて懇談会に来た母ちゃんに言ってくれたんだって。
「葵は内気だからあんまりお友達がいないの。しんちゃんみたいな元気な子が遊んでくれたらアタシも助かるわ」
仲良くしてやんなよ、と母ちゃんに言われたのを真に受けて、オレは葵に引っ付いた。

5年生のクラス替えで違うクラスになっても、学校が終われば葵と遊んでた。
姉ちゃんがオメガだとわかったのはそのころだ。
最初のヒートの時、オレは怖くて怖くて、夜だというのに泣きながら葵の家に逃げ込んだ。
どうやらそのことを母ちゃんから聞いていたらしい葵の母ちゃんは、姉ちゃんのヒートが終わるまでオレを家に泊めてくれたんだ。
中学校の先生だった葵の父ちゃんが、オレにオメガのヒートのことを教えてくれた。
「慎吾のお姉さんはいつだって優しいだろ?」
「…だからオレ、あんな姉ちゃん怖くなっちゃって」
「大丈夫。慎吾が家に帰ったら、いつもの優しいお姉さんが待ってるよ。心配いらない、大丈夫」
だからオレは、姉ちゃんにも葵にも“大丈夫”って言ってやるんだ。

しんちゃんにお土産買ってくるからね、と旅行に行った3人が、そのまま帰って来ないなんて思いもしなかった。
「中学入ったら同じ部活に入ろうぜ」
「僕も皆みたいに斉藤って呼ぼうかな。しんちゃん、なんて、中学生じゃ恥ずかしいでしょ?」
「じゃオレも伊原にすっかぁ?」
こんな話をしたはずなのに、葵は静岡の伯父さんのところに行ってしまった。

姉ちゃんが高校を卒業して就職し、チビ達も留守番ができるようになって、母ちゃんはまたスーパーで働き始めた。
下の兄ちゃんもやっぱり大工になって、結局オレも大工見習いになることを決めた2月の月命日。
伊原家のお墓で横山さんに会ったんだ。
ここで何度か会って顔見知りになったオレに横山さんが言ったんだ。
「葵が戻ってくるんだ。昼間はウチで働いて、斉藤君と同じ、夜間に通うことになった」

「!しんちゃ……斉藤!!」
「……お帰り……葵……」
オレは泣いた。
あんなに泣いたのは、あの夜、葵の家に逃げ込んで以来だった。

オレがもしアルファだったら。
奥山さんよりも先に、葵をオレのものに……してねえだろうな。
葵はオレの大事な大事な親友。
好き、とか、シたい、とか、そんなんじゃねえんだよな。
葵の心の中に、奥山さんとは違うところで、オレが1番に置いてもらえてる自信がある。
どんなに睨まれたって、その場所はオレのもの。
あんなすげえアルファの社長よりいい場所にいるなんて、もしかしてオレってヤバいのかも。

オレはずっと葵の味方。
だから大丈夫だよ、葵。
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