ガルシア戦記

千山一

文字の大きさ
141 / 198
第6巻 巨大、メビオス王国

第2章 メリオス決戦No.4

しおりを挟む
メリオス城、中庭、展望台。
メリオ城から1番見渡しが良く、ダビド王がよく見える。反対を返せば緊張した顔がよく見えて誤魔化しが効かないのだ。

“ウォーーーー!!!”
“ピューピュー!!!”

今から戦ってくる兵士達はおよそ3千。普通一般的には“3千”というのは少ないのだが、ここは歴戦を戦ってきた兵士達。
3千という兵士達は十分すぎる戦力なのだ。だが、未知数のスペニア国となると話は別。
“やってやるぞ!”と興奮する部分と“この戦い、全滅するかもしれない…”と不安な部分が入り混じっていた。
そして俺はというと、ダビドが展望台の前で“ガチガチ”固まってしまっていた……。
“なんでだよ……”
さっきから“一緒に行こうぜ【キラン★】”と言って余裕シャクシャクの雰囲気だったけど、
いさ、目の前の兵士達になれば“ガチガチ”になってしまう……。

「……あのさ、さっきの勢いはどこに行ったんだよ?」

俺はダビドに対し白い目で“ジーーーーッ”と見つめていた。
“こんなトップがみんなを束ねているなんて……”呆れてしまうしかないと思うのだが、今は目の前が最優先!!
ダビドがトップとして担ぎ出さないといけない!

「さぁ!ダビド王!すぐに対戦だ!一丁かましたれ」
「……ちょっと、待って!あと10分だけ……」

“ダメだこりゃ……”
もうすぐ対戦が始まるのに……ここで士気を下げると全てがパァになってしまう。
俺は思いっきり背中を叩いた……というよりは、無意識に思いっきり叩いてしまったのだ。

“バシーーーーッ!!!”

城内に響き渡る……そしてダビドは勢いに任せて大きく吹っ飛び展望台から落ちそうになっていた。

「あ、ゴメン……」

俺は悪意はなかったが、ダビドの背中を思いっきり叩いたことについて反省して謝ってしまう…だが、聡明なダビド王である(…と信じたい)
“許してやろう…”と笑顔で発言することを予想して願望しつつダビド王を見る。
……まだ、無言である。しかも、片手に剣を構えようとしている。

「ま、まて!説明してくれ!」

俺は慌てて両手を上げて降伏のポーズをする。ダビドはあいわらずの殺意のオーラであるポーズだ❤︎

「……ほぅ、面白い言い訳をしてくれるんだよなぁ、聞かせてもらおうか」

ダビドは完全に剣を構える。俺も口任せで言ったものの、何を言えば良いのかが分からない。

「…そ、それは」
「それは?」

“ゴクリッ”
と俺の唾を飲み込む音が聞こえた。そして俺はお決まりのポーズの構えをする。

「ゴメンね」

“ブンッ”
俺は咄嗟に避ける…よく見たら、あと数センチ避けたら…あと数秒避けらたらこの世とはオサラバだったに違いない。

「あぶねー……」
「あぁ?◯すよ?」

“あぁ……コレはキレてらっしゃる”
俺はダビドの剣さばきを避けつつも、上手い言い訳を考えていた…と、その時“プッ”という音が響き渡った。そして次々とクスクスし始め、やがて大爆笑と大喝采になっていた。

「な、なんだ……?」
「さぁ……?」

ダビドは俺に対してキレていることを忘れ、聞いている。

「ダビド王、アンタは最高だよ!」

1人だけでは無い……次々と口々に言いながら大喝采をしている。やがて展望台の中心に立ち、静まり返るのを待った。

「みんながいるのに、キレてしまってゴメン!」

ダビドは謝りつつも一礼をした。展望台に率いる兵達は拍手喝采でどんな大きな声でも掻き消されるぐらい歓声になった。

「今からスペニア国と戦争する……正直、どうなるか分からないのが現状だ」

“シーーーン”
と展望台、その周辺は静まる。なんだか重くるしい空気の雰囲気だ。

「ただ、俺に預けて欲しい!俺が先導になって戦って欲しい!未来の子供に笑顔が見せれるよ、誇り高き戦士でいられるよう誓わせて欲しい!行くぞ!!!」

ダビドの剣を高く高く突き上げた。展望台の周囲に集まる兵士達は一斉に大歓声の声で叫び出し、いつまで鳴り響くことはなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき
恋愛
蘭珠(ランジュ)が名門である凌家の嫡男、涼珩(リャンハン)に嫁いで一年ほど経ったころ。 一向に後継ぎが出来ないことに業を煮やした夫の母親は、どこからか第二夫人として一人の女性を屋敷へ連れてくる。 やがてその女が「子が出来た」と告げると、姑も夫も大喜び。 蘭珠の実家が商いで傾いたことを口実に、彼女には離縁が言い渡される。 ……けれど、蘭珠は知っていた。 夫の涼珩が、「男女が同じ寝台で眠るだけで子ができる」と本気で信じているほど無知だということを。 どんなトラブルが待っているか分からないし、離縁は望むところ。 嫁ぐ時に用意した大量の持参金は、もちろん引き上げさせていただきます。 ※ゆるゆる設定です ※以前上げていた作の設定、展開を改稿しています

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった

夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。

処刑から始まる私の新しい人生~乙女ゲームのアフターストーリー~

キョウキョウ
恋愛
 前世の記憶を保持したまま新たな世界に生まれ変わった私は、とあるゲームのシナリオについて思い出していた。  そのゲームの内容と、今の自分が置かれている状況が驚くほどに一致している。そして私は思った。そのままゲームのシナリオと同じような人生を送れば、16年ほどで生涯を終えることになるかもしれない。  そう思った私は、シナリオ通りに進む人生を回避することを目的に必死で生きた。けれど、運命からは逃れられずに身に覚えのない罪を被せられて拘束されてしまう。下された判決は、死刑。  最後の手段として用意していた方法を使って、処刑される日に死を偽装した。それから、私は生まれ育った国に別れを告げて逃げた。新しい人生を送るために。 ※カクヨムにも投稿しています。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...