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後編~綾帆~
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<綾帆>
何が起きたかわからない。突然目の前が真っ暗になった。
「 いたた…」
体を動かしたいけど痛くて動かない。ようやく目が見えるようになった。私の前に男が1人。顔に刃物がつきつけられた。
「 動くなよ。」
男はそう言って私の服を脱がし始めた。あー、これは逃げられそうにない。ついさっきまで千夏にメールしてたのに…。そうだ、さっき大輝にふられたんだった。今日は本当に散々だ。そのままなされるがままになり、ボロボロの服と顔のまま車からおろされた。
<蓮>
朝学校に行くと玲奈がやってきた。玲奈は今の彼女だ。顔が可愛くて超女の子らしい。
「 おはよ。蓮来るのおそいよぉ~。」
甘えた声でそう言ってくる。
「 わりぃ。寝坊した。」
返事しながら教室にむかった。
「 ちょっと、大輝!千夏が… 」
綾帆の声はなぜかすっと耳に入る。千夏?ああ、あの弱々しい綾帆に頼りっぱなしの女子ね~。正直、千夏だけは女子の中で唯一好きになれない。なんでだろうな。おっと、もっと好きになれないのは綾帆だった。綾帆は俺の元カノだ。顔はいいが性格に問題がありすぎる。玲奈みたいな甘えが全くない。まあ、過去の話か…。千夏はまた化粧を濃くしてる。また殴られたらしい。俺が綾帆と付き合ってたときからなぐられていたからな。そう思いながら何気に綾帆を見て、はっとした。綾帆も化粧を濃くしているが、その下に切り傷、しかもまあまあ大きな傷が見える。うわぁ、なんだろうなあ。まあ、俺には関係ないか。
「 …ねぇ、聞いてるー?蓮。」
「 えっ?なんて?」
「 もう、だからぁー、他校の友達から聞いたんだけどぉー、友達のクラスでレイプされた人いるらしいよぉー。怖い~。」
「 だいじょーぶだって。玲奈は俺がまもってやるよ。」
レイプかー。なんかひっかかるな。そう思いながら俺は席に着いた。
昼になった。いつもどおり俺は玲奈と保健室に行く。ベッドに玲奈を押し倒す。はやくやっちゃおう。そう思っていたからか保健室のドアが開いたのに気づかなかった。
「 失礼しまーす。あれ?先生いない?」
綾帆だ。タイミング悪っ。そのまま保健室に入ってきた。何かをさぐっていた。ドスッ。ベッドのカーテンの上に何かが降ってきた。ガラッ。綾帆がカーテンを開けた。
「「 うわっ。」」
俺と綾帆の声が重なる。玲奈がため息をついて、服を着始めた。
「 あーあ、また後でね~。蓮。」
玲奈が保健室を出て行った。
「 お邪魔したみたいですみませんでしたー。」
綾帆が超棒読みで言った。思ってねえな。
「 ほんとにな。代わりに相手してくれんの?」
もちろん冗談だ。綾帆が顔をしかめた。
「 誰があんたなんかと。」
イラっとしたからだと思う。あんなことをしてしまったのは。俺は思わず綾帆を押し倒してしまった。綾帆の肩の横に思いっきり手をついた。ビクっと綾帆が震えた。反応したのか?まさかな。綾帆が反応するわけないか。俺は自分の発想に苦笑した。そこではじめて綾帆の変化に気がついた。ガタガタガタ。綾帆の震えが止まらない。顔も平静を装っているがものすごく怯えていた。震えと怯え、そして顔の傷。まさか、、、
「 お前、レイプされたのか…?」
しばらく間があった。その後綾帆がため息をついた。
「 はあ。何を言い出すかと思ったら、」
「 じゃあ、顔の傷はどうした?」
綾帆が黙った。それからしばらくして
「 あんたに頼むとか超ムナクソ悪いけど、お願い。他の人には、とくに千夏と大輝には内緒にしてくれない?」
教室に戻ってからも俺の目は綾帆を追いかけた。綾帆は千夏と大輝と普通に喋っている。大輝ってやつは千夏の傷にはすぐに気がつくが綾帆の傷には全く気付かない。さすがは千夏バカ。そして千夏は自分が悲劇のヒロインだから綾帆の傷には気がつかない。1番大切にしている2人に気付いてもらえないなんて綾帆も虚しいやつだなあ。
「 ねぇ。蓮、蓮ってば!」
玲奈が叫んだ。
「 ん、あ、わりぃ。聞いてなかった。」
「 もう。誰見てたの??いみわかんなぁい。」
危ない危ない。あんな女、俺は全く興味ないんだ。気にする必要はねえな。
<綾帆>
蓮にだけばれた。よりによって、なぜあいつにばれてしまったんだろう。とりあえず今日はもっと丁寧に化粧をした。
「 おはよう。綾帆。」
千夏が声をかけてきた。何か言いたそうだった。
「 どうしたの?」
「 あのね、実は…、大輝と付き合うことになりました。」
よかった~。心の底からホッとした。
「 おめでとう!」
その声に千夏がホッとしたのがわかった。
昼休み、千夏が購買部に行っている間、大輝がいきなり声を潜めてきた。
「 相談があるんだけど…。」
大輝の内容は、千夏の婚約者みたいなやつに対することだった。そいつと別れたい。だけどそいつが別れてくれないと困る。そしてそいつと昨日話をしたら、お前は浮気をした、俺は絶対しないのに。ときれられ、権力はよこせ、つまり、結婚はしろ。ということだった。そいつも浮気しているらしいが、現場がおさえられない。
「 じゃあ、私に任せて。」
<蓮>
玲奈が別の男子に泣きついていた。それを見た俺は迷わずふってやった。その帰り門の前で綾帆とばったり会った。
「 おひとりですか~?」
俺が声をかけた。
「 そっちこそ。かわいい彼女はどうしたの?」
「 いや、あいつはたった今ふってきた。他の男子に泣きつくとかないわー。」
「 あんたもしょっちゅう浮気してるけど、、」
「 俺はいいの。向こうはダメ。それより、久しぶりに家まで送ってやるよ。」
断ろうとする綾帆に俺はまたレイプされたら嫌だろ?と言って歩き出した。別に綾帆じゃなくてもいいけど、1人で帰るのは嫌だからな。
綾帆の家に着いた。
「 じゃあ、お礼にキスをしてもらおうか。」
俺が言ったら綾帆はマジマジと俺の顔を見て、いきなりキスをしてきた。まさかすると思わなかった。少し震えたキスの後、俺に
「 練習台にさせてもらいました~。これで明日しっかりおとせるわ~。」
そう言って笑って立ち去った綾帆の顔は俺には泣いてるようにしか見えなかった。
<千夏>
はじめての自由を求めた行動。はじめて自分の意思を尊重したいと思った。そのために大輝と綾帆に助けてもらわなければならない。私1人じゃほんとうに何もできないから。今日は綾帆の作戦通りに動くだけ。
言われたタイミングでガラッとドアを開けた。
「 千夏…。なんでだ… 」
祐樹が慌てた。祐樹はちょうど今綾帆をおそっているところ、という格好をしてた。
「 祐樹も浮気してるじゃん。お父さんに報告するね。」
私がそう言った。じぶんでも驚いたほど乾いた冷たい声が出せた。
「 お前だって浮気を…」
「 だから! だから、もう別れよう?今はこの子との現場だったけど、他に浮気してる人もいるんでしょ?」
綾帆と祐樹をおいて部屋を出たあとお父さんに電話をした。
「 私、祐樹との婚約を解消したいの。祐樹からも許可をもらった。私、好きな人がいるの。お願い。お父さん。」
「 …そいつが会社をつげる器かどうか見る。今度連れてこい。」
そう言ってお父さんからの電話がきれた。よかったあ~~。
あとで綾帆にどうやって誘惑したのか、その後どうしたのかを聞いたが綾帆は笑って
「 なーいしょっ。」と言ってきた。
<蓮>
俺は1日中何にも集中できなかった。今日は綾帆と千夏が欠席していた。たいき、いやだいきだっけ?そいつもそわそわしていた。きっと千夏に関係している何かを綾帆が助けてるんだろう。ただし、綾帆が男を誘惑しなきゃいけないのは確実だ。まあ、俺は知らね。新しい彼女を探そう。
次の日、千夏と綾帆は学校に来た。千夏と大輝が前よりラブラブ感を出しているとこを見るとカップルになったのか…。綾帆が横で笑っている。それから毎日綾帆は千夏と大輝の横で笑っていた。100パーセント無理しているな。むしろ他のやつにわからないのが不思議なくらいだったが2人ですら気付かないらしい。かわいそうなやつー。あいつがおぼれているように見える。誰か助けてやれよ。お前ら2人は綾帆が好きなんだろ?友達として…。俺は…、俺は綾帆は全く好きじゃない。そういえば、どうして綾帆が好きになったんだっけ…。
俺と綾帆が付き合い始めたのは中学2年。その頃から俺はプレイボーイのあだ名がつくようないわゆるチャラ男だった。綾帆は見た目がかわいいからこいつにも甘えさせ、俺にベタ惚れにさせよう。そんな遊び心だった気がする。だけど徐々に綾帆のいろんなことを知った。綾帆は俺が苦しかったらすぐに助けてくれた。俺が元カノに殴られかけたとき元カノにマジギレしてくれた、おもてには見えない優しさ。それから親がずっと共働きだから小さい頃から甘えたことがないこと、だから全く甘えられないこと。でもあいつは俺に少しずつ少しずつだが気を許し甘えようとはしていて、それが無性にかわいかったこと。しかし、そんなときに別の女が俺に泣きついてきて、それが可愛く思えて綾帆が冷たく愛情がないように見えたんだった。
そうだ。思い出した。俺は綾帆に救われて綾帆のそんな強がるところも本気で甘えられないとこも全て受け入れそんな綾帆の1番の居場所になろうとしていたんだった。他の奴が動かないなら俺がやればいいんだ。俺は決意をもち綾帆に話しかけた。
「 よっ、綾帆。ちょっと今日時間ねえか~?」
「 あるけど…。なに?デートのお誘い?」
「 そんなもん。」
綾帆と喫茶店にきた。しゃべりかけるタイミングを狙いながら綾帆を観察した。少しだけ痩せたように見える。
「 あのさー、誘惑うまくいったんだな?」
<綾帆>
まさか、蓮にばれてるとは…。
誘惑うまくいったのかという質問はそれを意味していた。
「 おかげさまで。」
あのとき、無理やり誘惑しおそいかからせ終わりのつもりが思ったより逃げおくれ危うかった。
「 …大丈夫か?」
その質問に驚いた。心配されたのはものすごく久しぶりだ。
「 なーにが?」
誤魔化そうとしたけど失敗したな。声がうわずった。
「 なあ、お前がさ甘えられないのはわかってるから、わかってるけど、せめて無理しなくていい相手にくらいならせろよ。俺の前では笑わなくていいから。泣いてもいいししゃべんなくてもいい。もちろん関係ねー話してもいい。なんでもいいから楽できる相手にならせてよ。」
やばい…。最近そんな私を思った言葉を聞いてなかったせいか泣きそうだった。必死で止めようとしたけど、無駄だった。ボロボロと溢れ出る涙を止める手段はなく私は泣いた。そんな私を蓮はおそるおそる優しくだきしめてくれた。
<蓮>
あの日、なにも言わず泣き続けた綾帆を思わず抱きしめた。小さく震えていた綾帆をなだめるように抱きしめながら俺は決めた。綾帆を心から笑えるようにする。毎日俺は綾帆を迎えに行き、綾帆に話しかけ、綾帆と一緒に帰った。綾帆の誕生日がもうあと少しまで近づいた。誕生日は期待しとけよ。綾帆。
続く
何が起きたかわからない。突然目の前が真っ暗になった。
「 いたた…」
体を動かしたいけど痛くて動かない。ようやく目が見えるようになった。私の前に男が1人。顔に刃物がつきつけられた。
「 動くなよ。」
男はそう言って私の服を脱がし始めた。あー、これは逃げられそうにない。ついさっきまで千夏にメールしてたのに…。そうだ、さっき大輝にふられたんだった。今日は本当に散々だ。そのままなされるがままになり、ボロボロの服と顔のまま車からおろされた。
<蓮>
朝学校に行くと玲奈がやってきた。玲奈は今の彼女だ。顔が可愛くて超女の子らしい。
「 おはよ。蓮来るのおそいよぉ~。」
甘えた声でそう言ってくる。
「 わりぃ。寝坊した。」
返事しながら教室にむかった。
「 ちょっと、大輝!千夏が… 」
綾帆の声はなぜかすっと耳に入る。千夏?ああ、あの弱々しい綾帆に頼りっぱなしの女子ね~。正直、千夏だけは女子の中で唯一好きになれない。なんでだろうな。おっと、もっと好きになれないのは綾帆だった。綾帆は俺の元カノだ。顔はいいが性格に問題がありすぎる。玲奈みたいな甘えが全くない。まあ、過去の話か…。千夏はまた化粧を濃くしてる。また殴られたらしい。俺が綾帆と付き合ってたときからなぐられていたからな。そう思いながら何気に綾帆を見て、はっとした。綾帆も化粧を濃くしているが、その下に切り傷、しかもまあまあ大きな傷が見える。うわぁ、なんだろうなあ。まあ、俺には関係ないか。
「 …ねぇ、聞いてるー?蓮。」
「 えっ?なんて?」
「 もう、だからぁー、他校の友達から聞いたんだけどぉー、友達のクラスでレイプされた人いるらしいよぉー。怖い~。」
「 だいじょーぶだって。玲奈は俺がまもってやるよ。」
レイプかー。なんかひっかかるな。そう思いながら俺は席に着いた。
昼になった。いつもどおり俺は玲奈と保健室に行く。ベッドに玲奈を押し倒す。はやくやっちゃおう。そう思っていたからか保健室のドアが開いたのに気づかなかった。
「 失礼しまーす。あれ?先生いない?」
綾帆だ。タイミング悪っ。そのまま保健室に入ってきた。何かをさぐっていた。ドスッ。ベッドのカーテンの上に何かが降ってきた。ガラッ。綾帆がカーテンを開けた。
「「 うわっ。」」
俺と綾帆の声が重なる。玲奈がため息をついて、服を着始めた。
「 あーあ、また後でね~。蓮。」
玲奈が保健室を出て行った。
「 お邪魔したみたいですみませんでしたー。」
綾帆が超棒読みで言った。思ってねえな。
「 ほんとにな。代わりに相手してくれんの?」
もちろん冗談だ。綾帆が顔をしかめた。
「 誰があんたなんかと。」
イラっとしたからだと思う。あんなことをしてしまったのは。俺は思わず綾帆を押し倒してしまった。綾帆の肩の横に思いっきり手をついた。ビクっと綾帆が震えた。反応したのか?まさかな。綾帆が反応するわけないか。俺は自分の発想に苦笑した。そこではじめて綾帆の変化に気がついた。ガタガタガタ。綾帆の震えが止まらない。顔も平静を装っているがものすごく怯えていた。震えと怯え、そして顔の傷。まさか、、、
「 お前、レイプされたのか…?」
しばらく間があった。その後綾帆がため息をついた。
「 はあ。何を言い出すかと思ったら、」
「 じゃあ、顔の傷はどうした?」
綾帆が黙った。それからしばらくして
「 あんたに頼むとか超ムナクソ悪いけど、お願い。他の人には、とくに千夏と大輝には内緒にしてくれない?」
教室に戻ってからも俺の目は綾帆を追いかけた。綾帆は千夏と大輝と普通に喋っている。大輝ってやつは千夏の傷にはすぐに気がつくが綾帆の傷には全く気付かない。さすがは千夏バカ。そして千夏は自分が悲劇のヒロインだから綾帆の傷には気がつかない。1番大切にしている2人に気付いてもらえないなんて綾帆も虚しいやつだなあ。
「 ねぇ。蓮、蓮ってば!」
玲奈が叫んだ。
「 ん、あ、わりぃ。聞いてなかった。」
「 もう。誰見てたの??いみわかんなぁい。」
危ない危ない。あんな女、俺は全く興味ないんだ。気にする必要はねえな。
<綾帆>
蓮にだけばれた。よりによって、なぜあいつにばれてしまったんだろう。とりあえず今日はもっと丁寧に化粧をした。
「 おはよう。綾帆。」
千夏が声をかけてきた。何か言いたそうだった。
「 どうしたの?」
「 あのね、実は…、大輝と付き合うことになりました。」
よかった~。心の底からホッとした。
「 おめでとう!」
その声に千夏がホッとしたのがわかった。
昼休み、千夏が購買部に行っている間、大輝がいきなり声を潜めてきた。
「 相談があるんだけど…。」
大輝の内容は、千夏の婚約者みたいなやつに対することだった。そいつと別れたい。だけどそいつが別れてくれないと困る。そしてそいつと昨日話をしたら、お前は浮気をした、俺は絶対しないのに。ときれられ、権力はよこせ、つまり、結婚はしろ。ということだった。そいつも浮気しているらしいが、現場がおさえられない。
「 じゃあ、私に任せて。」
<蓮>
玲奈が別の男子に泣きついていた。それを見た俺は迷わずふってやった。その帰り門の前で綾帆とばったり会った。
「 おひとりですか~?」
俺が声をかけた。
「 そっちこそ。かわいい彼女はどうしたの?」
「 いや、あいつはたった今ふってきた。他の男子に泣きつくとかないわー。」
「 あんたもしょっちゅう浮気してるけど、、」
「 俺はいいの。向こうはダメ。それより、久しぶりに家まで送ってやるよ。」
断ろうとする綾帆に俺はまたレイプされたら嫌だろ?と言って歩き出した。別に綾帆じゃなくてもいいけど、1人で帰るのは嫌だからな。
綾帆の家に着いた。
「 じゃあ、お礼にキスをしてもらおうか。」
俺が言ったら綾帆はマジマジと俺の顔を見て、いきなりキスをしてきた。まさかすると思わなかった。少し震えたキスの後、俺に
「 練習台にさせてもらいました~。これで明日しっかりおとせるわ~。」
そう言って笑って立ち去った綾帆の顔は俺には泣いてるようにしか見えなかった。
<千夏>
はじめての自由を求めた行動。はじめて自分の意思を尊重したいと思った。そのために大輝と綾帆に助けてもらわなければならない。私1人じゃほんとうに何もできないから。今日は綾帆の作戦通りに動くだけ。
言われたタイミングでガラッとドアを開けた。
「 千夏…。なんでだ… 」
祐樹が慌てた。祐樹はちょうど今綾帆をおそっているところ、という格好をしてた。
「 祐樹も浮気してるじゃん。お父さんに報告するね。」
私がそう言った。じぶんでも驚いたほど乾いた冷たい声が出せた。
「 お前だって浮気を…」
「 だから! だから、もう別れよう?今はこの子との現場だったけど、他に浮気してる人もいるんでしょ?」
綾帆と祐樹をおいて部屋を出たあとお父さんに電話をした。
「 私、祐樹との婚約を解消したいの。祐樹からも許可をもらった。私、好きな人がいるの。お願い。お父さん。」
「 …そいつが会社をつげる器かどうか見る。今度連れてこい。」
そう言ってお父さんからの電話がきれた。よかったあ~~。
あとで綾帆にどうやって誘惑したのか、その後どうしたのかを聞いたが綾帆は笑って
「 なーいしょっ。」と言ってきた。
<蓮>
俺は1日中何にも集中できなかった。今日は綾帆と千夏が欠席していた。たいき、いやだいきだっけ?そいつもそわそわしていた。きっと千夏に関係している何かを綾帆が助けてるんだろう。ただし、綾帆が男を誘惑しなきゃいけないのは確実だ。まあ、俺は知らね。新しい彼女を探そう。
次の日、千夏と綾帆は学校に来た。千夏と大輝が前よりラブラブ感を出しているとこを見るとカップルになったのか…。綾帆が横で笑っている。それから毎日綾帆は千夏と大輝の横で笑っていた。100パーセント無理しているな。むしろ他のやつにわからないのが不思議なくらいだったが2人ですら気付かないらしい。かわいそうなやつー。あいつがおぼれているように見える。誰か助けてやれよ。お前ら2人は綾帆が好きなんだろ?友達として…。俺は…、俺は綾帆は全く好きじゃない。そういえば、どうして綾帆が好きになったんだっけ…。
俺と綾帆が付き合い始めたのは中学2年。その頃から俺はプレイボーイのあだ名がつくようないわゆるチャラ男だった。綾帆は見た目がかわいいからこいつにも甘えさせ、俺にベタ惚れにさせよう。そんな遊び心だった気がする。だけど徐々に綾帆のいろんなことを知った。綾帆は俺が苦しかったらすぐに助けてくれた。俺が元カノに殴られかけたとき元カノにマジギレしてくれた、おもてには見えない優しさ。それから親がずっと共働きだから小さい頃から甘えたことがないこと、だから全く甘えられないこと。でもあいつは俺に少しずつ少しずつだが気を許し甘えようとはしていて、それが無性にかわいかったこと。しかし、そんなときに別の女が俺に泣きついてきて、それが可愛く思えて綾帆が冷たく愛情がないように見えたんだった。
そうだ。思い出した。俺は綾帆に救われて綾帆のそんな強がるところも本気で甘えられないとこも全て受け入れそんな綾帆の1番の居場所になろうとしていたんだった。他の奴が動かないなら俺がやればいいんだ。俺は決意をもち綾帆に話しかけた。
「 よっ、綾帆。ちょっと今日時間ねえか~?」
「 あるけど…。なに?デートのお誘い?」
「 そんなもん。」
綾帆と喫茶店にきた。しゃべりかけるタイミングを狙いながら綾帆を観察した。少しだけ痩せたように見える。
「 あのさー、誘惑うまくいったんだな?」
<綾帆>
まさか、蓮にばれてるとは…。
誘惑うまくいったのかという質問はそれを意味していた。
「 おかげさまで。」
あのとき、無理やり誘惑しおそいかからせ終わりのつもりが思ったより逃げおくれ危うかった。
「 …大丈夫か?」
その質問に驚いた。心配されたのはものすごく久しぶりだ。
「 なーにが?」
誤魔化そうとしたけど失敗したな。声がうわずった。
「 なあ、お前がさ甘えられないのはわかってるから、わかってるけど、せめて無理しなくていい相手にくらいならせろよ。俺の前では笑わなくていいから。泣いてもいいししゃべんなくてもいい。もちろん関係ねー話してもいい。なんでもいいから楽できる相手にならせてよ。」
やばい…。最近そんな私を思った言葉を聞いてなかったせいか泣きそうだった。必死で止めようとしたけど、無駄だった。ボロボロと溢れ出る涙を止める手段はなく私は泣いた。そんな私を蓮はおそるおそる優しくだきしめてくれた。
<蓮>
あの日、なにも言わず泣き続けた綾帆を思わず抱きしめた。小さく震えていた綾帆をなだめるように抱きしめながら俺は決めた。綾帆を心から笑えるようにする。毎日俺は綾帆を迎えに行き、綾帆に話しかけ、綾帆と一緒に帰った。綾帆の誕生日がもうあと少しまで近づいた。誕生日は期待しとけよ。綾帆。
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