不器用な恋愛

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前編~千夏~

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   あるファミレスで千夏はただひたすら綾帆を慰めていた。大親友の綾帆は二股をかけられていた。彼氏、蓮の浮気現場に遭遇した綾帆は笑顔で別れを切り出した。精一杯の強がりだ。しかし、そんな綾帆に蓮は、「 俺、もっと甘えるかわいい人が好き。」
と言ったらしい。千夏は怒っていた。大切な綾帆を傷つけた蓮に。そして同じファミレスにいた男が千夏を見ていることには気づかなかった。
「 大輝。誰見てんの?」男の友達が声をかける。
「 ん?いや、友達思いのいい子を見つけて…」
   これがのちに出会う千夏と大輝の中2の話。


   高校1年になった。私、千夏は綾帆と同じクラスになれてほっとしていた。綾帆がいないと私は何もできないもん。
「 あっ、君隣なの?俺は加山 大輝です。よろしくね。」
気軽に声をかけてきた男子がいた。
「 えっと…私は小田 千夏です。」
そういいながらちらっと綾帆を見る。
「 私は大山 綾帆です。千夏の友達です。よろしくね。」
綾帆も自己紹介をした。よかった~。正直、男子は苦手。だって、私には綾帆が友達でいてくれたら充分だし恋愛とかよくわからない。
加山大輝はかなりイケメンだ。そしてフレンドリー。とにかくしょっちゅう私に話しかけてくれる。だから私と加山大輝はすぐに仲良くなれた。
大輝は優しい。私が少し具合が悪いだけできづいてくれる。綾帆もそう感じたらしい。綾帆は大輝といると楽しそうだった。
「 大輝くん、その子はやめたほうがいいよー」あいつがいきなり言った。忘れてた…。あいつも同じクラスだったんだ。遠野蓮。綾帆の元カレだ。ほんとうに最低な男…。綾帆と別れてからもいろんな女子と付き合っていた。
「 綾帆は全く甘えないし、かわいくないから」綾帆にとって、甘えることは1番の苦手なことだった。綾帆の家は小さい頃からずっと両親共働きで親に迷惑をかけないことが重要だった。だから甘え方を知らない。
「 いいだろ、別に。甘えなくても、やばそうだったら助ければいいし、甘える必要もないだろ?」
綾帆が大輝のことを恋愛的に好きになっていくのがわかった。
「 綾帆ー、今日大輝と2人で日直でしょ?私先帰るねー。」
「 なんで?」
「 綾帆2人で喋っときなよ~。絶対大輝も綾帆が好きだからさ。」
そうやって私は綾帆を応援しながらからかっていた。綾帆をからかえるなんてめったにないことだから、楽しんでいた。
そんなある日、家に帰ると
「 お前、最近楽しそうだな。だがそのせいで家事仕事が遅い。勉強もあまりしていないじゃないか。」
バチーン、、私の頬を父が叩いた。やってしまった。父は怒らせるとこわい。全て私の将来のためだから仕方ないし、私が悪いんだけど…
「 ごめんなさい。」
あやまっても当分父の教育は続いた。次の日学校へ行くと、
「 千夏!どうした、その傷… 」
大輝がすぐに寄ってきた。えっ、いつもみたいに化粧で隠してたのに…。
「 えっ、千夏ちゃん、別に怪我とかしてないじゃん。」
周りの子には化粧の効果で見えてないみたい。よかったー。今までこの傷に気がついたのは綾帆だけだった。
「 大輝、千夏の傷、気がついたんだね。」
綾帆が言った。大輝が綾帆につめよる。
「 どうしたんだ、千夏は…。」
綾帆がちらっと私を見た。大輝には隠しておく必要もないしな…。無言で綾帆を見つめ返すと
「 千夏は虐待されているの。ずっと前から…」
「 だから、虐待じゃないって!厳しい家柄なだけ!」
綾帆に説明させるとこうなるんだった。忘れてた。虐待なんかじゃない。教育なのに…。私の幸せの為なのに…。
「 いや、それ、やばいだろ…。」
大輝が呟くのが聞こえた。
「 大丈夫だもん!」
私は大輝に笑顔をむけた。家に帰ると
「 帰ってくるのが遅い!」
そう言って殴られた後、
「 お前に紹介する人がいる。婚約者の祐樹くんだ。」
「 はじめまして。祐樹です。」
まあまあ、かっこいい。そんな男子が挨拶をしてきた。
「 しばらく2人で喋っていなさい。」

「 お父様のが教育方針はすごいよね!尊敬してるんだ。」
「 そう。でも友達はみんなけなすの…。」
「 は?意味わかんね。俺はいつでも君の味方だから相談とかしてね。」
祐樹は父の会社の後が継ぎたいらしいし、父をけなすことはないだろうな。確かに父は私を幸せにしようとしてやっていることだ。
時々父の教育は続き、祐樹は私の傷を見て父の素晴らしさを改めて実感するらしい。気がつけば私は学校で倒れていた。
「 大丈夫か?」
大輝の声がする。目をあけると大輝が横にいた。
「 うん…。」
体をおこすと大輝に手を掴まれた。
「 あのさ、俺、今まで婚約者とかお父さんとか千夏が幸せならいいやって思ってた。でも、千夏が幸せじゃないなら諦めるのやめる。」
えっ、なに言ってるの。大輝…
「 俺、千夏が好きだから!」


   <綾帆>
   大輝が千夏を好きなのは千夏が高校に入ってからはじめて虐待をうけた日からなんとなく気づいていた。さらに、千夏が傷をつけてくる度に大輝は即座に気づいて
「 千夏、大丈夫かな。」
と言ってきた。やっぱり千夏が好きなのか。私じゃ千夏には勝てないし、大輝は千夏を幸せにしてくれる気がする。だから身をひこう。そう決めた。正直、千夏の婚約者は最低なやつだと思う。あんなのと結婚したら千夏は幸せになれないもんね。
千夏が倒れた。相当体にストレスがあったんだろうな。大輝がすぐに助けて保健室にむかった。
少しだけ心が痛い。でも、千夏に幸せになってほしいから。千夏にメールをうち、私は1人で帰ろうとした。
「 彼氏にふられたのー?」
後ろからあいつの声がした。横にいる女子がクスクス笑う声もする。
「 残念ながら、彼氏はいません。」
蓮を睨みつけ私は今度こそ学校を後にした。
しばらく歩いていたら変な車が横にとまった。


<千夏>
   大輝に告られた日綾帆からメールがきた。
「 私、大輝のことやっぱりやめとくわー。なんかそんなに好きでもない気がする。それより、千夏、大輝おすすめだよ!婚約者なんかふって大輝にしときなよー!」
綾帆らしい、私への気づかい方。クスッと笑いを漏らした。それが父の勘に触ったらしい。父の教育がはじまった。婚約者がきてからそんなに激しくはなかったのに、いつもよりこわい父に私は何度もあやまった。いつもよりきつい教育についてこれなかったのは体ではなく心だった。つい、祐樹に電話をかけてしまった。祐樹はすぐに来てくれた。そして、私に
「 お父さんの教育が間違ってるわけないだろ!お前はほんとうにクズなんだな。」
そう言って私を突き放した。床に唾を吐き祐樹は帰って行った。


<大輝>
   いきなり告ってしまった。でも千夏が幸せそうじゃないから。俺ならもっとあいつを幸せにできるし、笑顔にできる。
次の日いつもより化粧を濃くした綾帆が俺を呼んだ。
「 千夏が…」
今までよりひどい傷あと。くそっ…なんで千夏はこんなことをされても父親を嫌にならないんだ。
「 千夏に声かけてきてもらっていい?」
綾帆に言われた。綾帆がおれに気があるのは知っていた。だから俺は千夏に告る前に綾帆に告ると言っておいた。綾帆は千夏のことを優先した。笑顔でいってらっしゃいと言った。綾帆は応援してくれるみたいだ。なぜいつもより化粧が濃いのかはわからないが、綾帆は化粧以外はいつもどおりだった。
「 千夏。今日遊びにいこうぜ!」
俺が誘うと千夏はさんせいしてくれた。

   俺が千夏を連れて行ったのは遊園地だ。
「 わあ!!」
楽しそうな千夏を見てると連れてきてよかったと思う。俺たちはジェットコースターからメリーゴーランドまでいろいろ乗った。
「 今日はほんとに楽しかった~。」
観覧車に乗りながら千夏がいった。千夏の笑顔がたくさん見れただけでも連れてきてよかったと思う。俺は少しでも千夏を幸せにできたのだろうか。
「 俺がはじめて千夏に会ったのは中学のときなんだ。お前が綾帆のことをなぐさめながら綾帆以上に怒ってるのを見てすごくいい子だなって思った。同じ高校の同じクラスになれたときは奇跡だと思った。で、話してみたらやっぱりいい子で笑顔のかわいいすごく優しい子で…。俺は千夏がもっともっと好きになったんだ。千夏が笑ってくれたら俺は嬉しいし、千夏が幸せならいい。でも今の千夏は本気で笑えてるように見えないし、幸せそうに見えない。もし千夏が幸せじゃないなら俺が幸せにしたいんだ。」
千夏の目に涙が溢れ出した。
「 私、お父さんの教育が正しいしお父さんは私を幸せにしようとしてやってくれてるって信じてた、し、今も信じてるの。でもやっぱりつらいし、痛いし、しんどいときもあるの。今まで、私を好きだって思ってくれる人はいなかったし、誰にも頼っちゃいけないと思ってた。祐樹は私のこと好きだって言ってくれたのにお父さんにとりいるためだって…、」
「 じゃあ、俺に頼れよ。」
「 …う、ん… 」
泣きながら頷く千夏はすごく可愛かった。


<千夏>
   大輝にもう一度告られた。今日は本当に楽しかった。楽しいだけじゃなくて幸せだった。私にとって大輝はとても大きな存在で、たぶん、大輝なしには生きていけない。これからお父さんに言わなきゃいけないし、祐樹にも言わないと…。でもそんな苦労とか心配事もがんばろって思えるくらい今、幸せだった。綾帆のメールを見返した。綾帆も喜んでくれるかな?

続く
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