7 / 28
第6章 藍斗の決意
しおりを挟む王宮での日々は、太陽と季節によって定められたリズムで流れていた。しかし、小さなアイト・グレイモントにとって、毎朝の日の出は成長し、学び、自分を超える新たな機会をもたらすものだった。
物心ついた頃から、彼の人生は年齢の割に珍しい強い決意を持って自ら受け入れたルーティンに沿って進んでいた。朝は剣術の時間だった。陽光が黄金色に差し込む訓練室で、彼は師匠のゼキンと姉のカリシアと顔を合わせた。木剣が何度もぶつかり合い、すでに耳に馴染んだ金属的な調べを奏でる。
カン、カン……カン、カン……
どの戦いも同じように終わった。どの突き、どの打ち合い、どの必死の試みも、木剣でゼキンに触れようとした瞬間、二人とも地面に倒れ、息を切らしながら、ベテランの騎士は動じることなく立っていた。
「死んだな」
ゼキンは低く落ち着いた声で言った。その声は敗北をまるで優しい撫でるようなものに変えてしまう。「二人とも。まただ」
カリシアは時々苛立った。歯を食いしばり、拳で地面を叩き、次こそは違うと呟いた。しかしアイトは違った。
アイトは苛立ちを感じなかった。
彼にとって、毎回の敗北は教訓だった。そう捉えていた。その明晰さはゼキンでさえ驚かせるほどだった。同年代の他の子が泣き、自身を小さく感じ、決して十分ではないと思い込むところを、アイト・グレイモントはただ立ち上がり、服の埃を払い、学んだことを吸収するだけだった。
「師匠」
彼の年齢にしてはあまりに真剣な小さな声で尋ねた。「僕の攻撃を避けるために回転した時、どうして左から来ると分かったんですか?」
ゼキンは彼を見つめ、一瞬、誇らしげな光が目に宿った。
「分からなかったよ、小さな王子。ただ感じただけだ。お前の肩が教えてくれた。剣が動く前に、肩がもう方向を言っていた」
アイトはその情報を心の片隅にしまい込み、次の日の訓練では肩をよりリラックスさせ、よりコントロールしていた。
だがゼキンの教えだけでは終わらない。太陽が沈み始め、城の庭に影が長く伸びる頃、アイトは兄を探しに行った。
エリエルは八歳にしてすでに有望な魔術師だった。マナへの親和性が際立ち、西の塔で何時間も呪文を練習し、古い魔導書を読み、元素の制御を磨いていた。
「エリエル兄さん」
アイトは塔の入り口に現れ、金色の瞳を期待に輝かせて言った。「もっとマナについて教えてくれますか?」
エリエルは本から目を上げ、微笑んだ。弟に教えるのが好きだった。自分が重要で役立つと感じられたし、それにアイトは素晴らしい生徒だった。注意深く聞き、邪魔せず、分からないことは謙虚に尋ねるのだ。
「こちらへおいで、座って」
エリエルは本を閉じた。「今日はマナの流れを制御しようとせずに、ただ感じることを教えるよ。目を閉じて、肌に吹くそよ風を感じるみたいに」
アイトは頷き、目を閉じて集中した。そして塔の静寂の中で、夕暮れが空を橙と紫に染める中、小さなアイトは自分の自然な元素とより深く繋がることを学んだ。
風。
エリエルは時々不思議に思った。アイトの元素が風だなんて。自由で、馴染みにくく、捕まえられない。まさにアイトそのものだ。何もないところからやって来て、今では家族に欠かせない存在となった子。
「何か感じる?」
エリエルが尋ねた。
「うん」
アイトはまだ目を閉じたまま答えた。「……優しい撫でるようなもの。とても柔らかくて。手の周りを」
「それが風だよ、アイト。君を認識してくれている。君も撫でてあげて」
アイトは微笑み、風も一緒に微笑んでいるようだった。
---
しかし、アイトが何よりも楽しみにしていたのは夜だった。
城が静寂に包まれ、衛兵が交代し、廊下の松明が揺らめく頃、母であるセシリア女王が彼の部屋にやって来る。
「準備できたかい、私の小さな子?」
彼女は本を抱え、温かい笑みを浮かべて尋ねた。
「うん、お母さん!」
アイトはシーツにくるまり、目を大きく見開き、心臓を高鳴らせて答えた。
そして魔法が始まる。
母は冒険の物語を読んでくれた。果てしない砂漠を渡り、息もできないほど薄い空気の山を登った強力な魔術師たちの話。伝説の魔獣と戦い、勇気と知恵で王国全体を救った古の英雄たちの話。
だがアイトが一番好きなのは、魔術師の物語だった。
指で空に印を描き、古代の言葉を唇で囁くと、現実がその意志に従う様子を聞くのが大好きだった。呪文の閃光、元素がマナのリズムに合わせて踊るのを想像するのが好きだった。
「それからどうなったの、お母さん?」
彼女が一息入れると尋ねた。
「それから」
セシリアはページをめくりながら言った。「魔術師は空から火の嵐を呼び起こし、昼のように空を照らし、怪物たちはその力に怯えて逃げ出したの」
アイトの目は大きく見開かれた。火の嵐。空から火を呼ぶなんて。なんてすごいんだろう。
彼は母に言わなかったが、心の奥底でその物語は小さな切なさも呼び起こしていた。なぜなら彼はマナを持っていても、風を感じ、多少は操れても、伝統的な意味での魔術師ではなかった。火球を放つことも、氷の壁を作ることも、瞬間移動もできない。
彼の才能はもっと微妙だった。まだよく理解できていない。
だが母が物語を読んでくれると、その切なさはすぐに消え、興奮と好奇心に取って代わられた。物語の魔術師のようにはなれなくても、少なくとも夢見ることはできる。遠くからでも、あの冒険を生きている自分を想像できる。
物語が終わり、本が閉じ、最後の言葉が石鹸の泡のように空中に浮かぶと、母は身をかがめて額にキスをした。
「おやすみ、アイト。魔術師と英雄の夢を見てね」
「おやすみなさい、お母さん。物語をありがとう」
彼女は微笑み、ろうそくを消し、静かに去った。そしてアイトは暗闇の中で目を開けたまま天井を見つめ、大きくなったら待っている冒険を想像した。
---
だがその夜は違った。
物語が特別だったからではない(どれも特別だったが)、アイトが決意をしたからだ。
何週間も考えていた。最後に宮廷の魔術師たちが庭で練習しているのを見た時から、使用人たちが街の賑わう通り、多様な人々、色と匂いに満ちた市場について話すのを聞いてから。
自分の目で見てみたかった。
だから母が読み終え、おやすみのキスをしてくれた時、アイトは翌日何をするか、もう決めていた。
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる