「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)

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第26章:小さな黄金の鳥

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宮殿で母さんはどうしてるだろう。

もう庭にいて、お茶を飲んでるかな?それとも今日はコーヒーを選んだのかな?考え事が多い時にたまにそうするみたいに。

きっとそうだ。それが彼女の日課だから。女王としての責務に追われる前の、彼女の平和な時間。

父さんは…玉座にいるか、書斎で書類をチェックしたり、法令に署名したり、統治したりしているはず。いつも忙しくて。いつも真面目で。でも僕にはいつも笑顔をくれるけど。

兄さんのエリエルは…あんまり心配しなくていい。彼は…まあ、彼はエリエルだから。いつも塔にいて、いつも本を読んで、いつも魔法を勉強してる。宮殿で順調な奴がいるとしたら、それは彼だ。

でも姉さんのカリシアは…

彼女が一番心配だ。

今頃何してるんだろう。まだ早い時間だから、きっともう訓練してる。通るもの全てを破壊しながら。目の前にあるもの全てを片付けながら。

いつもみたいに。

もし冒険に出ていなかったら、今頃彼女と一緒に訓練してたんだろうな。打撃を打撃で返して。笑い声を笑い声で返して。あの家族の温もりを。時には痛いけど、彼女だけがくれる温もりを。

でも今は彼女と一緒じゃない。

でも一人でもない。

とても大切な二人の人と旅をしている。

一人は老師。あの気取った自信過剰なじいさん——なぜかは分からないけど、かなり好きだ——そしてもう一人は…

リリアのことを考えようとした時、彼女の方を見た。彼女は僕の隣を歩いていた。あの落ち着いた足取りで、まるで森が彼女のリビングルームみたいに。彼女の杖が歩くたびに優しく地面を叩き、まるで音楽のようなリズムを刻んでいた。

老師は僕たちの前を歩いていた。時々振り返って、僕たちがまだついてきているか確認するだけで。まるで羊飼いが子羊たちを見守るみたいに。

そして、あることに気づいた。

彼の足音が聞こえない。

どんなに耳を澄ましても、老師ゼキンの足音は存在しなかった。枯れ葉の上を、枝の上を、柔らかい土の上を歩いているのに…微かな音すら立てない。

まるで空中を歩いているかのようだ。まるで地面が彼にとって存在しないかのように。

老師と僕の差は大きいな、と思った。いや、絶望的なくらいだ。

彼には何十年もの戦闘経験がある。僕はまだ…四年。でも実際には、本格的な訓練はたったの三年だけだ。三歳の頃はほとんど何もしてなかったから。ただ見て、学んで、真似してただけ。

木刀を少しうまく扱えるようになったのは四歳からだ。

もし負けたり、老師が自分には到底できないことをするのを見て落ち込んでいたら、それは何年も前に自分に課した信念に反することになる。

でも落ち込んでない。むしろ逆だ。

老師は凄い。あまりに凄すぎる。

だから老師みたいになりたい。老師みたいに強くなりたい。老師みたいにカッコよくなりたい。

ああいう雰囲気が欲しい、ああいう存在感が…説明のしようがないけど。敬意を強いる。言葉を交わさずとも、誰もが特別な人の前にいることを悟るような。

でも今は想像するだけだ。だって僕はまだまだ小さな生き物だから。

飛べない雛。まだ大切な翼が生えていない雛。

でもその翼がまだ生えていないからこそ、もっと訓練しなきゃ。ものすごく。ついに翼が生えた時、もっと強くなれるように。もっともっと輝けるように。

老師が僕を誇りに思えるように。

母さん。父さん。兄さんのエリエル。姉さんのカリシア。

みんな。

でも最初に誇りに思ってくれるのは、老師とリリアだろうな。だってこの長い旅、ずっと一緒にいるのは彼らだから。過ぎゆく日々、僕が上達していくのを最初に目にするのは彼らだ。

そして僕は上達したい。前のままの自分でいたくない。

---

「何をそんなに考えてるの、アイト?」リリアがもっと近づいて尋ねた。

歩きながら、彼女の肩がほとんど僕の肩に触れそうだった。

「いろいろなこと」彼女を見ずに答えた。空を見上げて、ゆっくりと通り過ぎていく雲を眺めていた。

「いろいろなこと?例えば?」彼女はしつこく尋ねた。あの好奇心で、いつも僕を心を開かせる。

「母さんのこと」今度は彼女を見て言った。「宮殿で僕を待っているみんなのこと」

「そうなんだ」彼女はゆっくりとうなずいた。「やっぱり家族が恋しいんだね?」

「すごく」正直に答えた。

しばらく黙って歩き続けた。老師はまだ前にいて、あの威厳のある存在感を放っていた。何も聞こえないふりをしていた。でももう騙されない。

彼はいつも聞いている。全部。いつも全部聞いている。

でも何も聞こえないふりをする。あの狡猾なじいさんめ。

「なんでそんな風に俺を見るんだ、小僧?」彼は突然、振り返りもせずに言った。

(まさか背中に目があるのか?)驚いて思った。

「まさか背中に目があるんですか、老師?」優雅に質問をかわした。いつも優雅に。

「さあな」彼は笑いながら答えた。「もしかしたらあるかもしれんぞ」

(待って…本当にあるのか?)

「でも、お前は俺の質問に答えていないぞ」彼は付け加えた。

「だって老師の背中で道が見えないんですもん」答えた。目を閉じ、右手の人差し指を立てて、まるで大事な教訓を説いているかのように。

「冗談が好きなんだな、小僧?」

「いいえ、いいえ、冗談なんて全然好きじゃないですよ、老師」ゆっくりと首を振りながら、まだ思考を整理しようとしていた。

その時、それは起こった。

小さな小鳥が僕の顔の周りを飛び始めた。

それは本当に小さかった。まさに生きた羽の塊。その胸は鮮やかな黄色で、太陽の光の下でほとんど金色に輝き、黒い翼は優雅な速さで開閉していた。その動きは軽やかで正確で、まるで空気が彼の本当の家であるかのようだった。

僕は魅了されて、じっと見つめた。

金色と風、と思った。この鳥は僕と共通点が多すぎる。まさか親戚だったりして?ははは。

それは一瞬、空中で停止し、優しく羽ばたいた。その丸くて黒い目は、無邪気な好奇心で僕を見つめているようだった。それから空中で小さく旋回し、近くの枝に止まった。

少し首をかしげ、まだ驚いていた。彼の鮮やかな色と、森のぼんやりとした緑のコントラストが、静けさの中の生命の輝きのように彼を際立たせていた。

小鳥は首をかしげ、短く澄んださえずりを一つ…そして一瞬、世界が軽くなったように感じた。

「一瞬、君の友達になりたかったみたいだね」リリアが言った。

「そうかな?」答えた。「それにしても、とても綺麗だった。でも、オスかメスかは分からないけど」

歩き続けた。

しばらくして、同じ小鳥がまた近づいてきた。今度は直接僕の頭の上に止まった。

そして、ついばみ始めた。

その小さなくちばしで、何度も何度も。

でも、そうあるべきように迷惑に感じる代わりに、僕は…幸せを感じていた。

友達ができたんだ。あるいは友達のメスか。分からない。本当に、こういうことは何も知らない。

そして最も驚くべきことに:この生き物は僕みたいに話せない。僕の言葉さえ理解できない。それなのに近づいてきた。僕の頭の上に、まるでそこが巣であるかのように止まり、許可さえ求めなかった。

「おい、アイト、ちょっと頭の上に止まってもいい?」と聞いてくれれば礼儀正しかったのに。でも彼は僕の名前を知らなかった。

(僕の頭について誰もが知っていることを、あいつがやらなければいいけど)思った。(もしやったら、図に乗ったって怒るからな)

---

「見た、アイト?」リリアが微笑みながら言った。「あの小鳥が君の友達になりたがってるって言った私の言う通りだったでしょ」

彼女は人差し指を、僕の頭の上にいる羽の塊に近づけたが、触れる前に止めた。

「なんで指を引っ込めるんだ?」彼女の方に向き直って尋ねた。

「驚かせて飛び立たせたくなかったから」彼女は答えた。

「そうか」

「で、なんて名前をつけるの?」

彼女の顔には、あの好奇心の輝きがあった。それは僕がとても好きなものだった。

(名前?)思った。(リリアは何を言ってるんだ?まさか、この羽の塊の大きな母鳥とトラブルになりたいのか?)

「トラブルはごめんだ」答えた。

「誰とトラブルになるっていうの?」彼女は困惑して尋ねた。

「誰って、母鳥に決まってるだろ!」叫んだ。まるで当然のことのように。

リリアは優しく笑った。

「そうだね。まだ飛ぶ練習中みたいだね。それにしても、とても才能がある」

間を置き、小鳥を優しい目で見つめた。

「彼のお母さんは、きっと必死に探してるだろうね。でもこの小さな子は、とても遠くまで飛んできちゃってる」

「そうだな」うなずいた。「この羽の塊は、このままだと将来、母さんにたくさん迷惑をかけそうだ」

彼女の言葉の何かが心に響いた。その言葉は、この世の全ての道理を備えていた。

小鳥がまた僕の頭をついばんだ。そのくちばしは他の鳥と比べるととても小さく、それに僕は髪の毛が多かった。だからほとんど痛みは感じなかった。感じた動きで、彼がやってるって分かっただけだ。

---

「ぷははは…!」リリアは笑いをこらえきれなかった。

「あ、あの小鳥を…アイトは…すごく怒らせたみたい…」笑いながら言った。

でも彼女の言葉はうまく出てこなかった。笑いをこらえきれなかった。両手で口を覆って笑いを抑えようとしていたけど、肩が震えていた。

「マジで、それで怒ったのか?」言いながら、見ようと上を向いた。

(マジで、この羽の塊はとてもやんちゃだな)思った。(もし人間だったら、男の子じゃなくて女の子だろうな)

だってこの振る舞い、この性格、この行動の仕方、反応の仕方は…見たことがある。長い間、経験してきた。実際、長すぎるくらいに。

それは…彼女は…

この小さな鳥は、姉さんのカリシアみたいなんだ。

固まった。

(まさか彼女が送り込んだのか?見張らせて、全てを把握させるために?)

(それとも単なる僕の想像か?姉さんが僕に残したトラウマは、そんなに大きくて、深くて、幻覚を見るほどなのか?)

良くない。想像していることは、全く良くない。

---

「子供たち、もっと急いで歩け」老師がこちらを向いて言った。

彼の言う通りだった。気づかなかったけど、老師と僕たちの間には大きな距離ができていた。僕と、リリアと、僕の新しい羽の友達が後ろに残っていた。

森が私たちの前に開けた。まるで扉のように。大きな扉が、宮殿の扉みたいに。

前方には、幅の広い石があった。その瞬間、それはまるで高級な椅子のようだった。長く歩いた後は、座らなければならなかった。そしてこの岩は、見た目は質素でも、その意味は…なんと言えばいいか。森の中の、紛れもない贅沢品だと言えるだろう。

バックパックを置いた。幅の広い石の上に座った。

リリアは仰向けに寝転び、空を見上げた。彼女の腕は両側に広げられ、まるで空気を抱きしめようとしているかのようだった。

老師は優雅にバックパックを下ろした。こんな時でも、あの自信過剰なじいさんは格好をつけるんだ。

僕はバックパックを石の上に落とし、考える間もなく、同じように仰向けに寝転んだ。リリアみたいに。僕の体は勝手に動き、僕が決める間もなく彼女を真似ていた。

小鳥のメスは——もうメスだと確信していた——一瞬も僕から離れていなかった。全く離れなかった。

僕が仰向けに寝転んだ時、彼女が初めて動いた。この怠け者め。

彼女は僕の胸の上に止まった。僕のチュニック‐コートの上に。

そして、その小さな丸くて黒い目で僕を見た。

僕も彼女を見た。

それから、彼女は足の上に崩れ落ちた。文字通り、彼女の小さな足が支えられなくなった。僕の上に伏せた。

そして目を閉じた。

休み始めた。僕たちみたいに。

(この羽の塊は、そこまで僕を信頼してるのか?)彼女の小さな体に胸が温かくなりながら思った。(僕の胸の上で眠ってしまうなんて?)

まあいいさ。

休め、小さな奴。

---

「準備しろ、小僧」老師が微笑みながら言った。「狩りに行くぞ」

「狩りに行くんですか?」繰り返した。文字通り、聞き間違えたと思ったからだ。

「そして今回は本物だ」彼は付け加えた。「昨日の夕方みたいなのとは違うぞ」

「了解です、老師」答え、笑顔が顔に浮かび始めた。

(じゃあ、これが本当に初めての狩りってわけか、え?)

待ちきれない。

マジで、待ちきれない。

ゆっくりと体を起こし、胸の上で眠る小さな眠り姫を起こさないように注意した。でも彼女は少し体勢を変えただけで、眠り続けた。絶対的な信頼だ。

よし、モンスターども…

覚悟しろ。

アイト・グレイモントが狩りに行くからな。

そして今回は、助っ人なしだ。魔法の石を投げる老師もいない。火の玉のリリアもいない。

俺だけだ。俺の剣と。風だけだ。

---

リリアを見た。彼女も体を起こしていて、その顔には決意の表情があった。

「君も来るのか?」尋ねた。

「もちろん」彼女は当然のように答えた。「一人にしないよ」

微笑んだ。

そしてその時、何かが内側で燃え上がった。

炎だ。姉さんみたいな火の炎じゃない。風の炎だ。空気の。自由の。

「行こう」言った。

そして一緒に、老師とリリアと僕は——金色の小さな小鳥が僕の頭の上で眠り、全てに気づかぬまま——森へと足を踏み入れた。

本当に初めての狩りを求めて。
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