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第29章 熱を呑み込む冬
しおりを挟む杖の先のルビーは、かつては明るく温かく輝いていたのに、今は薄い氷の層に覆われていた。私の前で回転していた火の球は、不透明で役立たずの、死んだ氷の球に変わっていた。
「そんなバカな!」と私は叫んだ。
私の声は裏返った。恐怖からではない。信じられない思いからだ。
狼はまだ私に向かって走り続けていた。その目は新しい光で輝いていた。その光は言っていた。「知っていたぞ。お前が寒さにやられると知っていた。お前の火がここでは役に立たないと知っていたんだ。」
そしてその瞬間、私は理解した。
雪のせいだけではなかった。寒さのせいだけでもなかった。
彼らのせいだった。
白い狼たちは寒さの中に住んでいるだけではなかった。彼らは寒さを操っていた。彼らの存在、彼らのマナ、彼らの存在そのものが、周囲の空気を冷やしていた。炎を消していた。火が生まれる前に凍らせていたのだ。
そして私は、ルビーの杖を持ち、一番好きな元素を使う私は、間違った場所にいた。
間違った敵と共に。
狼が跳んだ。
そして私は、久しぶりに、どうすればいいのかわからなかった。
いや、初めてではなかった。業炎の猪の時にも似たようなことがあった。
一匹に風の呪文を放った時、ダメージを与えられると思ったのだ。吹き飛ばせるかもしれないと。奴らは重かったけれど。あるいは真っ二つに切れるかも――その選択肢は頭になかった、そこまでできるとは思わなかった――でも少なくとも正確な一撃を。もしかしたら、ほんの少しでも、奴らを出血させられるかも。出血させて、出血させて、もう走れなくなるまで。失血多量で死ぬまで。
その時、私はそれを知っていた。祖父が言っていたからだ。戦いで出血が多すぎると、血をたくさん失うと、それで死ぬことがあると。たとえ戦いで勝者になっても、ほんの数秒だけ勝者でいられるだけだと。対戦相手が行った同じ道をたどる前に、ほんの一瞬だけ勝利を歌えるだけだと。
少なくとも、彼はそう教えてくれた。戦いの中で自分で発見させはしなかった。でも今、よく考えると、彼は言いたくなくても言わなければならなかったのだろう。
なぜなら彼は私をとても愛しているから。
まあ、とにかく、それが魔法の元素間のこの種の問題に直面した二度目の経験だった。
---
酒場で。
「なるほど」エド・トナー氏はゆっくりとうなずきながら言った。「それで、もしお前の祖父さんが残りの一匹の狼をお前に向かって投げてきたら、もっとひどいことになるんだな?」
「そういうことになるんじゃないか?」と私は答えた。
「わかった。では、続けてくれ」と彼は微笑んで言った。
しかし私は、その笑みが本物ではないとわかっていた。彼は指で机をトントンと叩いていた。神経質な、無意識のリズムだった。
緊張しているのだろうか? と思った。それとも単に好奇心からか?
ふむ…まあいい、続けよう。
---
記憶の中へ戻る。十二年前。
「どうして俺の火の呪文が凍ったんだ?」と私は混乱して声に出した。
三歳だった私には、そんなことはほとんど信じられないことだった。火は火だ。熱だ。氷の対極だ。どうして氷が火に勝てるのか?どうして冷気が、触れてもいない炎を消せるのか?
答えを考えている時間はなかった。
狼が跳んだ。
そして私は、考えることも、戦略もなく、ただ最も基本的な生存本能だけで、横っ飛びに跳んだ。
うつ伏せに雪の中に倒れた。
目を開けたまま飛び込んでしまった。ミスだ。大きなミスだった。雪が目に入り、小さな氷の粒が針のようにチクチクと痛んだ。以前はただの迷惑だった寒さが、今やあらゆる隙間から入り込む敵となっていた。
しかし最悪だったのは口だ。
叫びながら飛び込んでしまったのだ。驚きと、欲求不満と、「こんなことあるはずがない」という叫び。そして顔が雪にぶつかった時、雪は唇の間に入り込み、舌にくっつき、喉で溶けた。
冷たかった。とても冷たかった。でも時々飲む冷たい水とは違った。それは乾いた、ざらついた冷たさで、口の中を内側から凍らせた。
「あっ、熱い、熱い!」と私は叫びながら、仰向けになるように回転した。
わかっている。馬鹿げている。熱いと感じているのに「熱い」と叫ぶなんて。でもそうだったのだ。三歳の子供にとって、その極度の冷たさは火のように感じられた。まるで雪が肌を焼いているかのように。
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酒場で。
「カハハハハハ!」エド・トナー氏の笑い声が突然爆発した。
彼は体を折り曲げ、腹を抱えた。彼の体は震え、終わりの見えない笑いの発作に揺さぶられていた。
「も、もう無理…!」話そうとしたが、無駄だった。
笑い声が次々と爆発した。甲高く、制御不能に。彼は前かがみになり、腹を抱えながら、体が止められずに震えていた。
「や、やめて…!も、もう…!」しかし言葉を発しようとするたびに、また新たな笑いの発作になった。
涙が目に溜まり、あふれ出し、頬を伝った。彼はほとんど息ができていなかった。顔は真っ赤で、声は裏返り、笑いの発作の合間に空気を求めてあえいでいた。
体を起こそうとした…失敗した…そしてさらに大笑いした。
「ハハハハ!無理だ、無理だ!」
そして落ち着こうとすればするほど…ひどくなった。
「お、お前、雪の中にうつ伏せに飛び込んで叫んだのか!ハハハハ!」
「おい、エドさん」と私は腕を組んで言った。「何がそんなにおかしいんだ?子供が狼に食べられそうになっているのがわからないのか?」
彼は私を見て、落ち着こうとした。でも完全にはできなかった。
「それに」と私は付け加えた。「その子供はとても元気だしな」
それを聞いて、彼は止まった。彼は私を、「待てよ、お前は三歳の自分自身をもからかっているのか?」と言わんばかりの表情で見た。
そう、その通りだ。
この十二年の間に、私は人に合わせることを覚えた。人が私をからかっても、決して怒らなかった。むしろ、それに乗った。そしてしばらくすると、彼らはからかうのをやめた。
しかし、それが私に影響を与えていないと思ったら大間違いだ。確かに影響はあった。しかし我慢した。そして自己防衛策を編み出した。気にしていないふりをすること。
でも、エド・トナー氏が私をからかっているわけではないことはわかっていた。本当にそうではない。私が話していることがあまりにも面白くて、笑わずにはいられないのだ。人形でなければ。
彼は少し体を起こし、手の甲で涙をぬぐった。
「ちょっとした豆知識を教えてやる」と彼は言った。声はまだ抑えきれない笑いで震えていた。「お前の口に入ったあの雪は…冷たかったんだ。冷凍庫から出したばかりのデザートみたいにな」
「おお!」と私は答えた。純粋に興味を持って。「本当か?豆知識をありがとう、エド・トナー氏」
「どういたしまして」と彼は答えた。大げさな仕草で手を胸に当てて。「礼には及ばない。ただ助けているだけだ」
私は微笑んだ。小さな、しかし本物の微笑みだった。
よし と思った。そろそろ話に戻る時だ。
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記憶。
「あっ、熱い、熱い!」と私は叫び続けながら雪の中で転げ回り、服に入り込んだ冷たさを振り落とそうとしていた。
しかしそんなことをしている暇はなかった。
最初の狼――祖父の柔らかい一撃を受けた奴――がもう私の上にいた。
その目は飢えで輝いていた。その牙は、氷のように白く、私の喉に迫っていた。
考える間はなかった。行動した。
土。
呪文は、意識的に唱える前に杖から湧き出た。雪の層の下の地面が、私の呼びかけに応えた。
しかし遅かった。
数秒かかった。戦いの中では永遠とも言える数秒が。
雪が、あの忌々しい雪が、地面に染み込んでいた。冷やしていた。遅くしていた。いつもは速くて固い私の土の魔法が、まるで糖蜜の中を動くかのようにのろのろと這っていた。
土の壁がようやく現れた。狼と私の間に、厚くて保護する壁が立ち上がった。
しかし狼はそれに激突しなかった。最後の瞬間、ありえない敏捷さで、壁を越えた。避けたのだ。呪文がまだ形成されている間に、側面を通り抜けた。
壁は少しひび割れた。冷気が弱めていた。
私はもがきながら立ち上がった。小さくて痺れた私の足は、しぶしぶ従った。数歩後退し、距離を取ろうとした。
雪は障害物だけではなかった。それは宣告だった。
あの頃、冬は頭痛の種だった。本当に大きな頭痛の種だった。
私のお気に入りの元素――火――を奪っただけでなく、別の元素までも遅くした。まるで冬が言ったかのようだった。「お前をさんざん苦しめてやる。二度と冬を見たくなくなるほどにな。ここから生きて出られたらの話だが。」
---
ちょっと助けが必要か!
祖父の叫びが冷たい空気を雷のように貫いた。
一瞬、狼のことを忘れた。彼の方を向いた。
彼が見えた。彼の剣が空中に完璧な弧を描いた。無駄な力の一切ない、清潔で、外科的な動き。
一匹の狼の頭が体から離れた。
赤く熱い血が、滝のように雪の上に落ちた。血が発する湯気は、消える前に小さな雲となって立ち上った。そして、体が倒れた。雪の中に沈み、周りに小さな白い山を上げた。
苦痛の叫びはなかった。ただ静かな死だけがあった。
それは狼にとっては良かったかもしれない。苦しむのはそいつだからな。私の祖父はただ自分の仕事をしただけだ。
「いや、いらない!」と叫んだ。
しかしそう言っている間、胸の奥に何かを感じた。何かわからないものを。
圧迫感。結び目。内側から締め付ける何か。
これは何だ? と思った。恐怖か?欲求不満か?それとも別の何か?
それを確かめている暇はなかった。
冬狼――これからはそう呼ぶことにしよう――は待ってはくれなかった。彼らは私の混乱や恐怖など気にしなかった。
二匹目の狼――腹に一撃を受けた奴――がもう私に向かって走ってきていた。
一歩ごとに、その足が地面に触れる場所から小さな雪の渦が巻き起こった。私に固定されたその目は、血も凍るような決意で輝いていた。
「よし、サマエル、お前ならできる」と自分に言い聞かせた。
それは防御機構だった。戦いの前に落ち着くのに役立つものだった。熱くなるべき時にでさえ、常に冷静な頭で決断を下していた。
しかし今は、文字通り頭が冷え切っていて、うまく考えられなかった。
杖を握り直した。痺れた指は、かろうじて木の感触を感じていた。
火は無意味だ と思った。考えることさえ無駄だ。
土の元素もうまくいかない。雪で遅くなっている。時間がかかりすぎる。
残されたのは風だけだ。これだけは今、うまく使えるはずだ。
狼が近づいてきていた。速く。速すぎる。
杖を向けた。まだ薄い氷の層に覆われたルビーの宝石が、弱く輝いた。
先端から、小さな渦が形成され始めた。回転する空気は、どんどん速くなり、狼の頭ほどの大きさにまで成長した。
「[猛風よ]」と叫んだ。
ああああああ!
風が放たれた。
しかし狼に向かって飛んでいかなかった。
いや。
攻撃は…いや、むしろ、冷気がそれを私に向かって跳ね返した。
私のマナを帯びた風の突風は、狼たちの凍てつくオーラにぶつかり、反転した。まるで冬そのものが、私の魔法はここでは受け入れられないと決めたかのように。
風がまともに私を打った。
そしてそれと共に、冷気が。
それは手から始まった。すぐに痺れに変わるチクチク感。そして次に、もっと悪いものが。
氷。
手袋に覆われた私の指は、硬くなり始めた。冷気は手を上昇し、手首に達し、前腕に達した。数秒のうちに、私は肘まで凍っていた。
まだ三歳の子供が。
私の小さな手は、手袋に覆われていても、もう同じようには動かなかった。冷気は布地を貫き、指から前腕へとゆっくりと這い上がり、まるで冬が私をセンチメートル単位で主張しているかのようだった。
厚手の防寒着を着ていても、私の体は震えた。何が起こっているのか理解できなかった。ただ、雪遊びの時とは違う極度の冷たさを感じていた。それは重く、深い冷たさで、冷やすというよりは麻痺させるものだった。
私の指は杖をしっかりと握れなくなった。口から出る息は、弱々しく震える湯気だけだった。
森は静まり返ったままだった。
冬は…急いではいなかった。
冬は…私を苦しめたがっていた。
「いや、そ、そんなことあるはずない!」と叫んだ。
しかし、どうなったと思う?
それもまた、ミスだった。
助けはいらないと祖父に叫んだ時、あの胸の圧迫感――あのわからない何か――がより強くなって戻ってきた。
今はわかる。
あれは恐怖ではなかった。
あれは絶望だった。
私は膝をついた。杖が手から滑り落ち、雪の上に落ちた。柔らかく、ほとんど繊細な音を立てて。まるで杖さえも、何かが終わろうとしていることを知っているかのように。
両手を胸に当てた。息を荒くしていた。
呼吸すること、いつも自然だったことが、今は重く…難しく感じられた。口から漏れる湯気は、震える小さな雲となった。
冷気はもう肌だけになかった。
内側にあった。
私の体は力が抜け、ついに横向きに雪の上に倒れた。地面の白は明るすぎるように、静かすぎるように思えた。
私の小さな肺は必死に動いたが、冬は私よりも大きかった。
世界が遠ざかり始めた。
視界の端が灰色に、そして黒になった。冷たさはもう痛くなくなった。何も感じなくなった。
ただ、重い眠りが私を下へと引っ張っていた。
白の中へ。
静けさの中へ。
暗闇の中へ。
そしてその時、遠くから、とても遠くから来る反響のように、聞こえた。
「さ、サマエル!」
祖父の叫びが、すべてが暗闇になる前に私が最後に聞いたものだった。
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