天下無双の鍵使いー引き継がれるものー【挿絵付】

サマヨエル

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ー第15話ー

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うっそうと生い茂るツタや木々を両断するように切り開かれた道。高く伸びた木々の葉が光を遮り、晴れた昼間のことの時間でも森は暗く冷たい雰囲気を醸し出している。


そこかしこから聞いたこともない鳥の声が聞こえ、獣たちは草木に身を沈め徘徊する。いつ魔物が現れても何ら不思議ではない場所だ。




ガシャン ガシャン



そんな静かな森には似つかわしくない金属を叩くような音を吐き散らしながら、道を歩く一行がいた。



いや、正確にはやかましい音を吐き出しているのはそのうちの一名だけだ。子供らしさの残る顔だが背は大人ほど高い。いっちょ前に立派な鎧を身に着ける男は一行の誰よりも息を荒げ疲労を露わにしていた。



「おい新入り!もたもたしてんじゃねぇぞ!!」




「へ、へい!」




はぁはぁ言いながらそう返事をするのは、カインを死の淵に追いやったあのマルスであった。


あの日の翌日、ギルドに冒険者として登録されたマルスは、依頼を受けるシステムや実際の任務の動きなどを教わるため、初日から先輩冒険者に付き添ってもらい任務にあたっていた。



(ふはっ!どいつもこいつもしょぼい顔してやがる!所詮一般冒険者どまりの集まりだな。このマルスがギルドのエースになる日はすぐそこだ!!)




ギルド内部を案内されながらそんなことを考え、自分が大物も魔物を倒しギルドに頼られちやほやされる妄想に浸れていたのも朝までの話。




「くそっなんなんだあの新人!一番簡単なクエストランクのあんな鎧着てくる奴がいるかよ!おっせぇしうるせぇし、実践舐めてんのか」






(うるっせぇ!聞こえてんだよボケっ!!!俺の真価を見定められない愚物共が!!!)





ソリッズから贈られた厳つい鎧を、周りの冒険者の制止も聞かずに身にまとったマルス。しかし一行の中でこれほどの重装備をしているものなど誰一人としていない。



地面は整備されているとはとても言えず、草やツタが装甲の隙間に挟まり足を引っ張る。そもそもぬかるんだ森の地面は少し滑る。踏ん張りさえきかないのだ。



何よりもその鎧は重く、まだ戦士としての熟練度も低いマルスにとって、これほど体力を奪うものはない。



「クソッ・・・クソがっ!・・クソォ!!」



思い描いていた理想に対し自らを襲う現実。通常であれば自分の甘さと愚かさを恥じるところだが、醜く歪んだマルスが、それらを受け入れ顧みるなどという行為に出る筈などなかった。



(ジョブランクAの戦士だぞ?ちょっと冒険者歴が長いからって調子に乗りやがって!先輩面して粋がってんじゃねぇ!鎧だってスキルランクさえ上がれば余裕なんだ・・・そうだ!)




あろうことか歪み切ったその性根は己の非を全て他人に擦り付けることで正当性を得ようとする。どこまで行ってもクズはクズでしかない。






「全部あいつのせいだ…カイン!毛ほどの経験値にもなりゃしないのがいけないんだ。奴のせいで・・・クソが!あの野郎、またボコボコにしてやるッッ!!」
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