1 / 1
悶え
しおりを挟む
「──いい加減にしてくれ」
絞り出すような声で、エラルドが言う。
私はきょとんとして小首を傾げた。
「どうしたの?」
「─どうしたもこうしたもない…!」
「…」
「嬢ちゃん、何度言ったら分かる?」
そう言って話し始めたのは、距離が近すぎるだの、危機感がないだの、私─マリアナへの苦言に他ならない。
しかし、分かっていないのは彼の方だと強く思う。あれだけ露骨にアピールしているというのに、ずっと子供扱い。一体いつになったら気づいてくれるのか…。
想いを告げてから大分時が経ってしまっている。今生では、教会所属の聖女としてではなく、ただの癒し手として独り立ちした。教会で暮らすことになる間、彼と少しでも離れるのが嫌だったのだ。
無理を言い、家に置いてもらいもした。生活費は払うと言ったのだが、聞き入れてくれなかった。取っておけ、独り立ちした時に役に立つと。
どう見ても訳ありな私に、何も言わず、
あれこれ世話を焼いてくれるのは嬉しいが…もっと私を…一人の女として意識してほしい…。
前は、あれだけ簡単に告げられた好意の言葉が、今は喉に何かが詰まったように、出てこない。
共に生活し、想いは膨らんだ。今、彼に拒絶されたら…。そう考えると何も言えなくなってしまう。その分、行動で示した。全く相手にされなかったが…。
本気なのだと、どうやったら伝わるだろう…。
考えても、いいアイディアは浮かばない。誰かから助言を得ようか。彼の同僚のマティアスはどうだろう。口説き文句をすらすらと言えるような、女たらしだが、悪い男でないことは、短い付き合いながらもよく分かっている。
次、会ったとき、聞いてみようか…。
そう決めると、睡魔が襲ってきた。
今日はもう寝よう。きっと、なんとかなる─...。
*****
幸せそうな寝顔を見て思う。
信頼してくれているのは分かるが、いくらなんでも気を許しすぎじゃないか…。
他の奴には、シャーッと毛を逆立てた猫のように警戒を露にする彼女が、俺にだけ甘えてきたりするのを見ると、勘違いしそうになる。
俺に好きだと言った少女はもう年頃の美しい女で、狙ってる奴なんか周りにごまんといる。
そういった輩を認識する度、腸が煮えくり返りそうになる。どす黒い気持ちが沸き上がる。
これは…自分にだけ、なついている猫を盗られたくないという独占欲だろうか?
─そうであってほしい。
俺のことを信じてくれている彼女を、傷つけるような真似はしたくない。
だから、胸を押し付けてきたり、上目遣いで見上げたりしないでほしい。彼女は自分の魅力をもっと知るべきだ。
そもそも、俺も男だって分かってるか?
すやすやと気持ち良さそうに、寝入っている彼女を見て思う。
「くそっ…俺の気持ちも知らねぇで…」
絞り出すような声で、エラルドが言う。
私はきょとんとして小首を傾げた。
「どうしたの?」
「─どうしたもこうしたもない…!」
「…」
「嬢ちゃん、何度言ったら分かる?」
そう言って話し始めたのは、距離が近すぎるだの、危機感がないだの、私─マリアナへの苦言に他ならない。
しかし、分かっていないのは彼の方だと強く思う。あれだけ露骨にアピールしているというのに、ずっと子供扱い。一体いつになったら気づいてくれるのか…。
想いを告げてから大分時が経ってしまっている。今生では、教会所属の聖女としてではなく、ただの癒し手として独り立ちした。教会で暮らすことになる間、彼と少しでも離れるのが嫌だったのだ。
無理を言い、家に置いてもらいもした。生活費は払うと言ったのだが、聞き入れてくれなかった。取っておけ、独り立ちした時に役に立つと。
どう見ても訳ありな私に、何も言わず、
あれこれ世話を焼いてくれるのは嬉しいが…もっと私を…一人の女として意識してほしい…。
前は、あれだけ簡単に告げられた好意の言葉が、今は喉に何かが詰まったように、出てこない。
共に生活し、想いは膨らんだ。今、彼に拒絶されたら…。そう考えると何も言えなくなってしまう。その分、行動で示した。全く相手にされなかったが…。
本気なのだと、どうやったら伝わるだろう…。
考えても、いいアイディアは浮かばない。誰かから助言を得ようか。彼の同僚のマティアスはどうだろう。口説き文句をすらすらと言えるような、女たらしだが、悪い男でないことは、短い付き合いながらもよく分かっている。
次、会ったとき、聞いてみようか…。
そう決めると、睡魔が襲ってきた。
今日はもう寝よう。きっと、なんとかなる─...。
*****
幸せそうな寝顔を見て思う。
信頼してくれているのは分かるが、いくらなんでも気を許しすぎじゃないか…。
他の奴には、シャーッと毛を逆立てた猫のように警戒を露にする彼女が、俺にだけ甘えてきたりするのを見ると、勘違いしそうになる。
俺に好きだと言った少女はもう年頃の美しい女で、狙ってる奴なんか周りにごまんといる。
そういった輩を認識する度、腸が煮えくり返りそうになる。どす黒い気持ちが沸き上がる。
これは…自分にだけ、なついている猫を盗られたくないという独占欲だろうか?
─そうであってほしい。
俺のことを信じてくれている彼女を、傷つけるような真似はしたくない。
だから、胸を押し付けてきたり、上目遣いで見上げたりしないでほしい。彼女は自分の魅力をもっと知るべきだ。
そもそも、俺も男だって分かってるか?
すやすやと気持ち良さそうに、寝入っている彼女を見て思う。
「くそっ…俺の気持ちも知らねぇで…」
4
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
番が1人なんて…誰が決めたの?
月樹《つき》
恋愛
私達、鳥族では大抵一夫一妻で生涯を通して同じ伴侶と協力し、子育てをしてその生涯を終える。
雌はより優秀な遺伝子を持つ雄を伴侶とし、優秀な子を育てる。社交的で美しい夫と、家庭的で慎ましい妻。
夫はその美しい羽を見せびらかし、うっとりするような美声で社交界を飛び回る。
夫は『心配しないで…僕達は唯一無二の番だよ?』と言うけれど…
このお話は小説家になろう様でも掲載しております。
姉の引き立て役の私は
ぴぴみ
恋愛
アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。
「どうしたら、お姉様のようになれるの?」
「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」
姉は優しい。でもあるとき気づいて─
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる