くまの復讐

ぴぴみ

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カワウソ

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彼女は、前から、くまのことを苦々しく思っ

ていました。

あのときもそうです。

神さまに感謝の祈りを捧げる、豊穣祭の時期

の記憶を思い出します。

動物たちは、祭のため、歌の練習をしていま

した。

(指揮の私の言うことをまるで理解しないで

…。それに、何より下手な伴奏。

あれでよく演奏を引き受けたものだわ。手

の形も全然だめ…!)

ゆっくりと話す口調にも、イライラしていた

カワウソはくまを追い出す作戦を聞いたとき

大喜びしました。

くまが言い返さないことをいいことに、傷つ

くようなことも、わざと言いました。

(私は、悪くない。だってくまは周りをイラ

つかせるんだもの)

自分が正しいと思い、疑わないカワウソは一

度も反省しませんでした。

結果、豊穣祭で、くまは伴奏を担当しません

でした。

別のものが代理で担ったのです。

動物たち皆で緩やかな方法でやめさせた、た

めに。

「君には向いていないんじゃないかな?」

「もっと練習したら?」

「…全然だめ。よく聞こえない」

くまは、自信を無くして自ら去っていったの

です。

私たちは何もしていません。

ですから、追い出したはずのくまを川で見つ

けたとき、我慢できませんでした。

「あなたも懲りないわね」

気づけば口に出していました。

長く話すのも御免だと、前足で蹴って去りま

したが、あの後すぐに異変が起こりまし

た。

「きゃあ!!」

前足がずきずきと痛み出したのです。

いえ、ずきずきどころではありません。

何かが彼女の体を蝕みます。

痛みはどんどん強くなっていきました。

くまが、こちらに気づいて、じっと見ていま

す。

その瞳は怯えていました。

彼女は、ちら、と思いました。

─呪われたのかもしれない、と。

*

くまは、驚きました。

自分と別れてからすぐ、カワウソの叫び声が

したからです。

声がした方に急ぐと、彼女がうずくまってい

ました。

くまは、声をどう掛ければいいのか分からず

怖々と見ていました。

前足を痛めているようです。

(彼女は指揮が上手だし、リズムを前足で

とっているようだった。使えなくなったら

悲しむだろうな…)

そんなことを思いました。

気絶したカワウソを同じ仲間のもとにこっそ

り送り届け、様子を見ます。

「おい!どうした?」

誰かが見つけたようです。

もう大丈夫なようでした。

(前足を怪我するなんて、何があったんだろ

う?)

そう思いながら、くまは、川で魚を取り、ほ

らあなへと帰っていきました。
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