くまの復讐

ぴぴみ

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カワウソの末路

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カワウソは思い通りにならない現実に苛つい

ていました。

(すぐに、許してくるだろうと思ったのに、

あの…くま!)

彼女は自分が少しでも、しおらしく謝りでも

すれば、くまは、簡単に許すだろうと疑いも

しませんでした。

ですが、結果は惨憺たる有り様。

馬鹿にしていたくまに、

「でも本心じゃないよね?」

と言われたときは、頭に血が上り、思わず手

が出そうになりました。

なんとか抑えましたが…。

前足の痛みはひきそうにありません。

我慢できないほどではありませんが、終始ず

きずきと痛むのです。

彼女は周りに当たるようになりました。

「このぐずっ!いつまでその仕事をやってる

の!?」

「何しに川まで行った!?」

「そこの指揮はそうじゃなくて…!」

彼女の顔は般若そのものでした。

自然、カワウソの周りからは人がいなくなり

ます。

彼女は怒り続けました。

ただひたすら狂ったように。

怒る相手がいなくなっても…ずっと。

*

カワウソの状況など知る由もない、くまは、

今日は何を食べようかと考えていました。

魚にも飽きたし、今日は森の木の実を見つけ

てこよう。

そう思い立つと、準備して森の中に入ってい

きました。

森にこっそりと入るのも慣れたものです。

今日も誰にも会いませんように…と願いなが

ら、くまはまだ朝日も昇らぬ内から出発しま

した。

白くたなびいた雲の隙間から、朝日が顔を出

し、森の木々を染め上げる。

その光景をくまは、こよなく愛していました

が、その前に帰らなければなりません。

くまは、まだ薄暗い中、必死で木の実を探し

ます。

狙うは、ブナの実にどんぐり、クルミです。

ヤマブドウやサルナシなどの果実類も背負っ

た籠にせっせと入れ、くまは帰り仕度を始め

ました。

そんな時です。

知った声がくまを呼びました。

「なんでここに?」

友であるネズミの声でした。

くまは、振り返り、ネズミを黙って見つめま

した。

ここで会いたくはなかったなと思いながら。









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