くまの復讐

ぴぴみ

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くまは、無気力に日々を過ごしていました。

世界は何も変わらないのに、ネズミだけがい

ません。

花々が咲き乱れる場所。

一緒に遊んだ川。

美しい木漏れ日を感じとれる切り株の上。

ありとあらゆる場所に彼との思い出がつまっ

ています。

今にもひょっこり顔を出しそうだというの

に、ネズミだけがいません。

悲しみは癒えることなく、降り積もっていき

ます。

ねずみの家で、ただぼうっとしていました。

時は緩やかに流れていきます。

何も変わらず。

あるとき、木の切れ端を見つけました。

何か書いてあります。

くまは、何と無しに、手に取りました。

それは、ネズミの日記でした。

*

『くまを傷つけた。僕はどうしようもなく弱いネズミだ。話せなくなったのも罰だと思えば、どうということもない。ただ、くまと話せなくなったのだけが悲しい。』

『くまが、自棄になっている。森の動物たちに力を誇示するようなことを言って回っている。このままではいけない。くまは、とても優しいのに…』

『山猫がくまを殺そうとしているのだと知った。僕は今度こそくまを助ける。逃げたりなどしない…。そう決意しても体が震える。僕はくまを助けることができるんだろうか?…大切な友であるくまを』



*

くまは、神に心から祈りました。

(─ネズミを生き返らせてください。…っこんな力など、いらないから!)

くまの願いが届いたのか、光が差し、神の声

が聞こえてきました。

「───────」

*

くまは、旅に出ました。

不器用なのは変わらず、誤解されることもこ

の先、無くなることはないでしょう。

ですが、一歩ずつでも確かに、くまは成長し

ているのです。

くまは、もう『大丈夫?』と気遣うこともで

きます。

他の動物を真っ直ぐに見ることができます。

くまは、今まで、他の動物たちに興味を持て

ずにいる自分をどこかで肯定していました。

皆、同じだろうと。

だけど、違うのです。

興味があってもなくても、話しかけなければ

何も変わりません。

話すことで変わることもあるのですから。

そうと知ったくまの傍らには、ネズミがいた

そうです。

真実は分かりません。

ですが、彼らはとても幸せそうで…。


─後に、彼らは獣人の祖となったのだと伝え

られています。



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