君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭

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6.ルヴェーナ魔法学園

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「レナード様、何度もお呼びしてしまって申し訳ありません」

「気にしないで。用があったらいつでも呼んでくれていいよ」

「ありがとうございます。どうしても来月までに覚えたい魔法があって」

 にこやかなレナード様に、エリアナ様は少し頬を赤らめて恥ずかしそうに言葉を返している。

 私は思わず杖をしまって、岩場の横にあった木の方まで逃げてきてしまった。

(この前からなんでこんなにタイミングが重なるの……!)

 レナード様の婚約の件でもやもやしていたから、それを振り払うために演習場まで来たというのに。よりによって本人たちに会ってしまうなんて。

 私は自分の運のなさを呪いながら、木の陰に隠れて二人を見守る。

 二人は杖を取り出して話し始めた。

「エリアナさん、何の魔法を覚えたいんだっけ?」

「水の魔法に光魔法を組み合わせた魔法です! 今度のパーティーで花火のようにして水魔法と光魔法を打ち上げてみたら綺麗だと思いまして。でも、水魔法はなんとか使えたんですが、光魔法は全然使えないんですよね……。私は研究ばかりで実際に魔法を使うのが下手なので」

「光魔法は特に扱いが難しいもんね。でも、仕組みをよく理解しているエリアナさんなら練習すればきっとできるようになるよ」

「私にもできるでしょうか」

「きっとできるよ。パーティーで水と光の花火を打ち上げられたらすごく綺麗なんじゃないかな。一緒に頑張ろう」

「ええ、がんばります!」

 エリアナ様はレナード様に向かって顔を綻ばせる。

 私は強く唇を噛む。パーティーとはなんだろう。二人の婚約発表パーティーでも行うのだろうか。

 そこでエリアナ様が、レナード様に教わった魔法で会場に花火を打ち上げるのかしら。

 笑顔の二人とそれを祝福する人々を想像したら、なぜだか泣きそうになって、私はぎゅっとスカートを握りしめる。


 二人は岩場で魔法の練習を始めた。

 エリアナ様が杖を振ると、小さな水の粒が舞う。その後で彼女はもう一度杖を振ったけれど、今度は何も起こらなかった。

「やっぱりうまくいきませんわ……!」

「力を入れ過ぎてるんじゃない? 難しい光魔法だからと気負わずにやってみて。ほら、こんな風に」

「わぁ、綺麗に光っていますわね!」

 レナード様が杖を振ると、水の粒が途端にキラキラ光りだした。エリアナ様は目を輝かせて喜んでいる。

 その後も、二人は魔法の練習を続けていた。

 最初はぎこちなかったエリアナ様の魔法も、だんだんとうまくなってくる。やがて、彼女が杖を振ると、小さな光の粒が現れるようになった。

「すごい、うまくいきましたわ!」

「やったね、エリアナさん!」

「レナード様のおかげですわ。でも、もっと安定して使えるようにならないと!」

 エリアナ様の魔法の成功に、レナード様は手を叩いて喜んでいる。

 私の心には薄暗い気持ちが降り積もっていった。
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