95 / 95
6.ルヴェーナ魔法学園
⑲
しおりを挟む
魔術院の人たちへの報告は平和に終わったけれど、両親へ報告した際は大騒ぎだった。
「ラスウェル侯爵家のご令息と婚約!?」
「メイベル、あなた一体何をしたの!? どうしたらそんなことになるの!?」
レナード様と婚約したいと伝えると、お父様もお母様も目を剥いて驚いていた。何度も私の妄想なんじゃないか、行き違いはないのかと確認されてしまった。
それでも今度レナード様が挨拶に来たいと言っていると伝えると、ようやく半分くらいは信じてくれたようだ。
「そうか、よくやったな。メイベル。ラスウェル家と縁が結べるのならうちとしても大歓迎だ」
「ラスウェル家のご令息を迎える準備をしないとね。食器を新しいものに買い替えなくちゃ」
お父様もお母様も、ご機嫌でそんなことを話しながら、早速準備をしに出て行ってしまった。
「メイベル、今の話どういうこと……?」
「お姉様」
振り返ると、呆然とした顔でこちらを見るお姉様がいた。お姉様はつかつかこちらへ歩いてくる。
「ラスウェル家のご令息と婚約ってどういうこと!? 一体そんな方とどうやって知り合ったのよ! 私はエイデン様と婚約解消してから、ほかの人とも全然縁談がまとまらないっていうのに!」
「ラネル魔術院でです。お姉様も会ったことがあるじゃないですか。ほら、随分前にお姉様とブラッド様がパートナーとして参加したパーティーで……」
そう答えると、お姉様の顔がみるみるうちに引きつっていった。
「あの時の……? え、まさか、あれがきっかけで……?」
「きっかけ……。そうかもしれません。それだけではありませんが、あのパーティーでレナード様が一緒にパーティーに参加してくれたときから、距離が近づいた気がします」
そういえば、レナード様と距離が近づいたのはあのパーティーがきっかけだったように思う。あの時、傷心の中レナード様に手を差し伸べてもらえて、なんて優しい方なのだろうと感動したのだ。
そう考えると、私はお姉様に感謝するべきなのかもしれない。
「よく考えたら、レナード様と婚約できたのはお姉様のおかげなのかもしれません。お姉様、ありがとうございます!」
感謝の気持ちを込めてお礼を言った。しかし、お姉様の顔はさらに引きつってしまった。
「……あんたなんか知らないわ! 見てなさい、今にあんたよりずっといい男捕まえてやるんだから!! あまり調子に乗らないことね!!」
「えっ? なんで……」
私は怒って立ち去っていくお姉様を戸惑いながら見送る。
お礼を言ったのにどうしてだろう。
困惑したけれど、いつものお姉様の気まぐれだろうと思い直した。
「レナード様が来てくれる日が楽しみだな」
そう呟いて、私は軽い足取りで自室に戻った。
色んな人たちへの報告も終わり、私は今日も元気にラネル魔術院に通っている。
私とレナード様の婚約の件は、あっという間に学校中に知れ渡ってしまったけれど、概ね好意的に受け入れられている。
もっと「あんな平凡な女ではレナード様に釣り合わない」とか、「伯爵令嬢ごときがラスウェル侯爵家のご令息と婚約するなんて」だとか、物語に出てくるような陰口を叩かれるかと思ったけれど、今のところそんな話は聞かない。
ちなみに、ブラッド様には教室まで来て一体どういうことなのかと詰め寄られてしまった。婚約の件を一から説明すると、何度か考え直すよう言われたけれど、首を横に振り続けていたらふらふらした足取りで去っていった。
ブラッド様にはもっとぴったりな方がいると思うので、私のことは早くすっぱり忘れててくれたらいいのにと思う。
多少騒ぎはあったものの、私は今日も平穏に、レナード様と妖精の生態調査なんかをしながら過ごしている。これも学園長先生からの依頼だ。
「メイベルさん、あれはラムビーだと思う? 図鑑に出てきたラムビーとは少し違うように見えるんだけど……」
「確かに、羽根の色がラムビーにしては薄すぎる気がしますね」
「一旦捕獲してみようか」
「そうですね、じっくり観察してみましょう!」
学園長先生に依頼された通り、魔術院のそばにある森でそこに生息している妖精を調べていく。
婚約者という間柄にはなったものの、レナード様との会話の内容は今まで通り呪文やら魔獣やら妖精やら、魔法に関することばかりだ。
結局、私たちは変わらないままなのかもしれない。そう思ったら、つい笑い声が漏れた。
「メイベルさん、どうかした?」
「いえ。楽しいなと思って」
私は心からの思いで答える。
ちょっと色気には欠けるかもしれないけれど、私にはこういう時間が一番幸せに思えるのだ。
「レナード様、これからもどうぞよろしくお願いします!」
そう言ったらレナード様は、こちらこそ、といつも通りの笑みで返してくれた。
私は幸せな気持ちに浸りながら、学園長先生の依頼を達成するべく再び妖精探しに戻るのだった。
終わり
「ラスウェル侯爵家のご令息と婚約!?」
「メイベル、あなた一体何をしたの!? どうしたらそんなことになるの!?」
レナード様と婚約したいと伝えると、お父様もお母様も目を剥いて驚いていた。何度も私の妄想なんじゃないか、行き違いはないのかと確認されてしまった。
それでも今度レナード様が挨拶に来たいと言っていると伝えると、ようやく半分くらいは信じてくれたようだ。
「そうか、よくやったな。メイベル。ラスウェル家と縁が結べるのならうちとしても大歓迎だ」
「ラスウェル家のご令息を迎える準備をしないとね。食器を新しいものに買い替えなくちゃ」
お父様もお母様も、ご機嫌でそんなことを話しながら、早速準備をしに出て行ってしまった。
「メイベル、今の話どういうこと……?」
「お姉様」
振り返ると、呆然とした顔でこちらを見るお姉様がいた。お姉様はつかつかこちらへ歩いてくる。
「ラスウェル家のご令息と婚約ってどういうこと!? 一体そんな方とどうやって知り合ったのよ! 私はエイデン様と婚約解消してから、ほかの人とも全然縁談がまとまらないっていうのに!」
「ラネル魔術院でです。お姉様も会ったことがあるじゃないですか。ほら、随分前にお姉様とブラッド様がパートナーとして参加したパーティーで……」
そう答えると、お姉様の顔がみるみるうちに引きつっていった。
「あの時の……? え、まさか、あれがきっかけで……?」
「きっかけ……。そうかもしれません。それだけではありませんが、あのパーティーでレナード様が一緒にパーティーに参加してくれたときから、距離が近づいた気がします」
そういえば、レナード様と距離が近づいたのはあのパーティーがきっかけだったように思う。あの時、傷心の中レナード様に手を差し伸べてもらえて、なんて優しい方なのだろうと感動したのだ。
そう考えると、私はお姉様に感謝するべきなのかもしれない。
「よく考えたら、レナード様と婚約できたのはお姉様のおかげなのかもしれません。お姉様、ありがとうございます!」
感謝の気持ちを込めてお礼を言った。しかし、お姉様の顔はさらに引きつってしまった。
「……あんたなんか知らないわ! 見てなさい、今にあんたよりずっといい男捕まえてやるんだから!! あまり調子に乗らないことね!!」
「えっ? なんで……」
私は怒って立ち去っていくお姉様を戸惑いながら見送る。
お礼を言ったのにどうしてだろう。
困惑したけれど、いつものお姉様の気まぐれだろうと思い直した。
「レナード様が来てくれる日が楽しみだな」
そう呟いて、私は軽い足取りで自室に戻った。
色んな人たちへの報告も終わり、私は今日も元気にラネル魔術院に通っている。
私とレナード様の婚約の件は、あっという間に学校中に知れ渡ってしまったけれど、概ね好意的に受け入れられている。
もっと「あんな平凡な女ではレナード様に釣り合わない」とか、「伯爵令嬢ごときがラスウェル侯爵家のご令息と婚約するなんて」だとか、物語に出てくるような陰口を叩かれるかと思ったけれど、今のところそんな話は聞かない。
ちなみに、ブラッド様には教室まで来て一体どういうことなのかと詰め寄られてしまった。婚約の件を一から説明すると、何度か考え直すよう言われたけれど、首を横に振り続けていたらふらふらした足取りで去っていった。
ブラッド様にはもっとぴったりな方がいると思うので、私のことは早くすっぱり忘れててくれたらいいのにと思う。
多少騒ぎはあったものの、私は今日も平穏に、レナード様と妖精の生態調査なんかをしながら過ごしている。これも学園長先生からの依頼だ。
「メイベルさん、あれはラムビーだと思う? 図鑑に出てきたラムビーとは少し違うように見えるんだけど……」
「確かに、羽根の色がラムビーにしては薄すぎる気がしますね」
「一旦捕獲してみようか」
「そうですね、じっくり観察してみましょう!」
学園長先生に依頼された通り、魔術院のそばにある森でそこに生息している妖精を調べていく。
婚約者という間柄にはなったものの、レナード様との会話の内容は今まで通り呪文やら魔獣やら妖精やら、魔法に関することばかりだ。
結局、私たちは変わらないままなのかもしれない。そう思ったら、つい笑い声が漏れた。
「メイベルさん、どうかした?」
「いえ。楽しいなと思って」
私は心からの思いで答える。
ちょっと色気には欠けるかもしれないけれど、私にはこういう時間が一番幸せに思えるのだ。
「レナード様、これからもどうぞよろしくお願いします!」
そう言ったらレナード様は、こちらこそ、といつも通りの笑みで返してくれた。
私は幸せな気持ちに浸りながら、学園長先生の依頼を達成するべく再び妖精探しに戻るのだった。
終わり
1,395
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる