Sports Hitman

糸魚川叉梨有

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DonMeg①

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「空也様。今回の"特捜部"襲撃の被害結果が出たようで。」
俺の椅子の肘掛に寄ってくるのは秘書のマツである。
「何だ?」
「では、申し上げます。三軍のリーダー、ガンナ様が特将相手に善戦し、二軍以上の被害はゼロに抑えられています。ちなみに、三軍はほとんど全滅であり、新たに何かしらの勧誘が必要となります。」
「ガンナはどうなった?」
「はい。ガンナ様は特将の片腕を機能停止させたは物の、"特捜部"に破れ、現在刑務所にて拘束されております。」
「じゃ、被害ゼロか。ありがとう。今日どうだ?夜。」
「いえ、結構です。本日は危険日ですので。」
「お前それここ半年ずっとじゃねえか。それじゃ、永遠処女だぞ。」
「冗談はおやめ下さい。処女ではございません。」
「じゃあ、見て確認してやろうか?」
少しニヤケながら冗談めかしく聞いてやるが、マツは思いっきり俺の頬を引っぱたいた。俺は床に倒れ込む。毎日このような下りをし、毎日引っぱたかれているが、未だあのビンタを避けることが出来ない。何しろ、飛んでくる手が見えないからだ。
俺はズキズキと痛む頬を抑えながら、彼女に言う。
「やっぱ"瞬速オンミドル"はすげーな。」
すると、彼女はまた俺に一歩近づき、今度はギロっと目付きを変え見下す形で言う。
「その名はお控えください。私は"殺し屋"としてでは無く一秘書として空也様にお仕えしております。先程のような下品なくだりは対処法を知っておる為、適当にあしらっておりますが、このケースは対処しようがないため、次に仰った際は何かしらの武力制裁を行いますゆえにお気をつけ願います。」
と放ち、スタスタと出口まで向かい素早く出て行った。
一秒もせず、もう一度扉を開け、
「空也様、おやすみなさいませ。」
とだけ言ってまた閉めた。
俺は一つ舌打ちをし、また、ため息を着く。
今まで彼女の"殺し屋"でのあの名は言ってこなかった。それはとある噂を親父から聞いたからだ。
あれはまだ秘書に着いてもらってひと月もしていないくらいの事だ。たまたまオフがあり、実家に帰った時。
『お前の秘書のマツ・メグは根っからの"殺し屋"だそうだ。今はこの名は捨てているらしいが、瞬速オンミドルというらしい。それを彼女に直接言ってしまうと、とんでもないことになるらしいぞ。』
そう言っていた。
「一発目からこれかよ………」
俺はそう呟く。結構仲良くなれたと思っていたのだが………
どうりでガードが硬いわけだ。
更に親父は、俺の職が"殺し屋"であることを知らない。職業を聞かれた時には、IT系の仕事だと伝えるようにしている。流石にどこで働いているのかも言わないのは怪しいのではと自分でも思うが、秘書も雇っているので、成功しているとは思われているようだ。
察しが悪くて助かる。
コンコン
ノックの音と同時にまたマツが入ってくる。
廊下を走ってきたようでそこそこ息を荒らげている。
「空也様……こちらをご覧下さい。」
そう言って一枚の新聞紙のようなものを差し出す。
『《WANTED》』
そういう見出しから始まっている。
これは"殺し屋"のA1からA20くらいまでを"特捜部"がリストアップし、懸賞金をかける事で市民からの協力を得るものだ。おかげで、生活の範囲が極限まで狭まっている。
いつもなら、ただ20人がリストアップされ、入っているかいないかをドキドキしながら見るだけだったが、今回は少し違った。

《WANTED》
A1 Sothi・Brainソティ・ブレイン
A2Health・Jasmilヘルス・ジャスミル


A6Don・ Kuyaドン・くうや



A11 Kamelot・Pascalキャメロット・パスカル



以上14名を"特別対象"とし、
捜査官が見つけ次第、直ちにする。

そう書いている。
「本気だな。"特捜部"も。」
殺戮命令はいつぶりだろうか。もう数年は経っているんじゃないか?前回はとんでもないことになったから、今回はもう少し対策をしたいが、"殺し屋"は年々弱くなってきている。そこから遂に本気で沈めにしていることを察した。
「空也様。今勝てないと思われましたか?」
心を読まれていたのか、ただ顔に出ていただけなのか、微笑みながら俺に問いかける。その微笑みに笑いの要素は感じられない。冷たい笑い。
俺は少し脅えながらこくん、と頷く。
彼女はふふふっとさらに笑って俺に寄ってくる。俺はまるで迫ってくる鬼に怯える子供のように動けない。何をするかと思えば、俺の手元の紙の"A11"の辺りを指さす。
それを見た途端、俺は恐怖等、微塵残らず消え去り、喜びが湧き上がる。それは飛び上がる喜びではない。噛み締める、そんな歓喜だ。
Kamelot・Pascalキャメロット・パスカル

彼女の方に振り向く。その笑みは、いまさっきと変わっていなかったが、笑いの要素しか感じられない。
お互い向き合ってハモる。

『遂に来たか』
『遂に来ましたね』 

新しい感触の、風が吹く。

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