Sports Hitman

糸魚川叉梨有

文字の大きさ
5 / 9

DonMeg①

しおりを挟む
「空也様。今回の"特捜部"襲撃の被害結果が出たようで。」
俺の椅子の肘掛に寄ってくるのは秘書のマツである。
「何だ?」
「では、申し上げます。三軍のリーダー、ガンナ様が特将相手に善戦し、二軍以上の被害はゼロに抑えられています。ちなみに、三軍はほとんど全滅であり、新たに何かしらの勧誘が必要となります。」
「ガンナはどうなった?」
「はい。ガンナ様は特将の片腕を機能停止させたは物の、"特捜部"に破れ、現在刑務所にて拘束されております。」
「じゃ、被害ゼロか。ありがとう。今日どうだ?夜。」
「いえ、結構です。本日は危険日ですので。」
「お前それここ半年ずっとじゃねえか。それじゃ、永遠処女だぞ。」
「冗談はおやめ下さい。処女ではございません。」
「じゃあ、見て確認してやろうか?」
少しニヤケながら冗談めかしく聞いてやるが、マツは思いっきり俺の頬を引っぱたいた。俺は床に倒れ込む。毎日このような下りをし、毎日引っぱたかれているが、未だあのビンタを避けることが出来ない。何しろ、飛んでくる手が見えないからだ。
俺はズキズキと痛む頬を抑えながら、彼女に言う。
「やっぱ"瞬速オンミドル"はすげーな。」
すると、彼女はまた俺に一歩近づき、今度はギロっと目付きを変え見下す形で言う。
「その名はお控えください。私は"殺し屋"としてでは無く一秘書として空也様にお仕えしております。先程のような下品なくだりは対処法を知っておる為、適当にあしらっておりますが、このケースは対処しようがないため、次に仰った際は何かしらの武力制裁を行いますゆえにお気をつけ願います。」
と放ち、スタスタと出口まで向かい素早く出て行った。
一秒もせず、もう一度扉を開け、
「空也様、おやすみなさいませ。」
とだけ言ってまた閉めた。
俺は一つ舌打ちをし、また、ため息を着く。
今まで彼女の"殺し屋"でのあの名は言ってこなかった。それはとある噂を親父から聞いたからだ。
あれはまだ秘書に着いてもらってひと月もしていないくらいの事だ。たまたまオフがあり、実家に帰った時。
『お前の秘書のマツ・メグは根っからの"殺し屋"だそうだ。今はこの名は捨てているらしいが、瞬速オンミドルというらしい。それを彼女に直接言ってしまうと、とんでもないことになるらしいぞ。』
そう言っていた。
「一発目からこれかよ………」
俺はそう呟く。結構仲良くなれたと思っていたのだが………
どうりでガードが硬いわけだ。
更に親父は、俺の職が"殺し屋"であることを知らない。職業を聞かれた時には、IT系の仕事だと伝えるようにしている。流石にどこで働いているのかも言わないのは怪しいのではと自分でも思うが、秘書も雇っているので、成功しているとは思われているようだ。
察しが悪くて助かる。
コンコン
ノックの音と同時にまたマツが入ってくる。
廊下を走ってきたようでそこそこ息を荒らげている。
「空也様……こちらをご覧下さい。」
そう言って一枚の新聞紙のようなものを差し出す。
『《WANTED》』
そういう見出しから始まっている。
これは"殺し屋"のA1からA20くらいまでを"特捜部"がリストアップし、懸賞金をかける事で市民からの協力を得るものだ。おかげで、生活の範囲が極限まで狭まっている。
いつもなら、ただ20人がリストアップされ、入っているかいないかをドキドキしながら見るだけだったが、今回は少し違った。

《WANTED》
A1 Sothi・Brainソティ・ブレイン
A2Health・Jasmilヘルス・ジャスミル


A6Don・ Kuyaドン・くうや



A11 Kamelot・Pascalキャメロット・パスカル



以上14名を"特別対象"とし、
捜査官が見つけ次第、直ちにする。

そう書いている。
「本気だな。"特捜部"も。」
殺戮命令はいつぶりだろうか。もう数年は経っているんじゃないか?前回はとんでもないことになったから、今回はもう少し対策をしたいが、"殺し屋"は年々弱くなってきている。そこから遂に本気で沈めにしていることを察した。
「空也様。今勝てないと思われましたか?」
心を読まれていたのか、ただ顔に出ていただけなのか、微笑みながら俺に問いかける。その微笑みに笑いの要素は感じられない。冷たい笑い。
俺は少し脅えながらこくん、と頷く。
彼女はふふふっとさらに笑って俺に寄ってくる。俺はまるで迫ってくる鬼に怯える子供のように動けない。何をするかと思えば、俺の手元の紙の"A11"の辺りを指さす。
それを見た途端、俺は恐怖等、微塵残らず消え去り、喜びが湧き上がる。それは飛び上がる喜びではない。噛み締める、そんな歓喜だ。
Kamelot・Pascalキャメロット・パスカル

彼女の方に振り向く。その笑みは、いまさっきと変わっていなかったが、笑いの要素しか感じられない。
お互い向き合ってハモる。

『遂に来たか』
『遂に来ましたね』 

新しい感触の、風が吹く。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...