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夢から覚めた生活

囚われの身のアリス⑩

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2人で色んな話をした。街は今大きなクリスマスツリーが飾られていることや、最近流行っている子供の遊び、それからこの館のこと…。
「ここの館の主様はさ、人食いだって噂なんだよ」
レイシーは悪いことのようにこっそりと話し始めた。
「毎日毎日、メイドが1人ずつ殺されて、その血を浴びている…なんて噂があるんだぜ!怖いだろう!?」どうだ!という顔をされたが、特にピンとこなかった。
「そうね、怖いわね…」
「…ちぇ、全然怖がってないじゃないか。まぁ無理もないよな、ここでの生活が怖い話みたいだもんなー」言ってから、あ!とレイシーは口をふさいだ。
「ふふ、気にしなくて良いのよ。その通りだもの」大丈夫だから、と、私は手をふった。
「でもさ」レイシーは考えながら言った。
「その噂、ウソだと思うんだよな」
「なぜ??」
「だってさ、俺と母さん、ここの主様にあってるんだぜ?とってもニコニコしていて優しそうな女の人だったから、噂とは全然違うよ」
「そうなのね、ミッシェルさんみたいな女の人?」優しい女の人は他に例えが出てこなかったからミッシェルさんの名前を出すと、「まさか!」とレイシーは手を振る。
「母さんよりも美人だよ!赤い服を着ていて、旦那と娘が最近死んだんだって、喪に伏しているみたいで黒いベールを頭から被っているんだ」こんな感じだよ、とレイシーは身振り手振りで教えてくれた。
「そういえば、この館の主様のお名前って?」
「お前自分を閉じ込めたやつの名前も知らないのかよ!名前はー……」
…名前を聞いた私は愕然と自分の耳を疑った。
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